トップランナーが語る金融の今とこれから #1 ― 2012年08月03日
慎泰俊さんの新刊『ソーシャルファイナンス革命』の出版を記念した「トップランナーが語る金融の今とこれから」というセミナーに参加してきました。
NPO Living in Peace 代表理事 慎 泰俊氏
ライフネット生命 代表取締役副社長 岩瀬 大輔氏
ARUN 代表 功能 聡子氏
maneo 代表取締役社長 妹尾 賢俊氏
これだけの豪華メンバーが話されるという事でとても 刺激を受けたセミナーでした。
簡単ですがセミナーのメモをブログに残します。
岩瀬:
二年前に同じメンバーでセミナーをやって楽しかった。
今、欧米の金融機関が元気がなく、日本のメガバンクが海外で存在感を出してきている。ライフネット生命は新しい生命保険会社を模索している。
功能:
社会的投資について今日はお話する。
慎さんとは2009年に大和証券さんに呼ばれて話した仲間(→こちら)
ARUNのビジョンは「地球上のどこに生まれた人も、ひとりひとりの才能を発揮できる社会」
社会的投資のプラットフォーム構築を目指している。
途上国の起業家に投資し、エンパワーメントと機会を提供する。
カンボジアに95年から10年間生活した。
当時は暗い表情をしていたが、だんだんと明るくなっていく変化の場に立ち会った。農業技術や医療など 寄付による支援活動を行なっていたが、普通のカンボジア人から長期的な活動に投資して欲しいという声があがった。
それが起業家とタッグを組み社会変革への気づき。
商業銀行とマイクロファイナンスの間に位置する中小規模の事業者に対する資金提供者がいない。
例えば地域の協同組合など。そこには大きな発展の芽がある。
事例として有機農業を行なっている komaさん
小規模の家族経営の農家に近代的な有機農法
考える農民
農民の誇りを取り戻す
市場への流通はNGOではできないが、企業化してARUNが投資を行う
生産者と市場をつなぐことができた
komaさんはアジアのノーベル賞とも呼ばれている2012年度のマグサイサイ賞を受賞した。
起業家のコミットメントに賭ける。
事業の健全性も判断しているが。
最初は10名の出資からスタートしたが現在は80名まで拡大した。
社会的成果モニタリングが重要なポイント。
社会的インパクトをどう評価するか?
ソーシャルビジネスコンピテションや社会的投資の勉強会も開催している。
10/6~7にかけてソーシャル・インベストメント国際シンポジウムを開催するのでぜひ参加して欲しい。
妹尾:
お金の集め方が革命的なのがソーシャルファイナンス
お金が必要な人と投資したい人を銀行を通さずに主にネット上でマッチング
銀行を通さないのが革命的なのではない
金融業界のロングテール革命
事例1:
車いすユーザ向けのパーソナルモビリティのコンセプトモデルを開発するのに50万円必要だとする。VCでは小さすぎるがCAMPFIREでは156名から1,038,500円集まった。投資家への対価が寄付した額で変わる仕組みを導入。
事例2:
日本酒の酒蔵の醸造設備が被災 再建には2000万円が必要
銀行だと復旧する可能性について審査されたり、復興後の売上も審査される
ミュージックセキュリティーズでは個人から少額を集めることで2000万円を調達した。
事例3:
居酒屋を四店舗営業していて日本橋に新店舗を開業したい。資金は2800万円。
銀行は3年の成果がないと相手にしないし、飲食店はぶれが大きい。
maneoでは金利8.0%で個人から資金を集めた。
一般の人から少しずつ集める
いわば元気玉
特徴
お金が特定の大口投資家からではなく一般の人から少しずつ集められること。
クラウドファンディングとソーシャルレンディングはインセンティブが違う
寄付金により体験などを購入(日本ではCAMPFIRE)
→クラウドファンディング
金銭的対価を得る
株式投資 →アメリカで成立したクラウドファンディング法案はこれ
出資 →ミュージックセキュリティーズ
確定利回り →maneo これがソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングはみんな同じか?
投資先による違いがある
個人、法人、特定使途特価型
maneoの案件
1.担保付き案件
2.入金パイプ確保案件(医療保険や売上金の入金口座など)
2012年7月の実績で3億2000万円を単月で調達している。
2012年8月は1億7000万円の分配を予定。
慎:
キーワードが4つ
ソーシャル
金融
途上国
インターネット
金融は実業の裏側だがバカにできない存在
ソーシャルファイナンスの背景
・ソーシャルネットワーク
・情報技術の進化
・知識集約型産業へのシフト
コピーコストが0になった
契約本数が増えてもコストが下がるので小口で数を多くできる事が大きい
金融とコミュニティーは仲がよい
信用に根付いたもの
昔は二宮金治郎もグループで貸付をしていた。
お互いに審査する。お金を貸す側の手間が省ける。
21世紀型でぐるっと昔に戻った
満足感は大事。
人間関係に根付いた満足感があると金銭的リターンが少し低くても満足する。
→友人への貸付で金利とらないなど
起業にあたってのスタートアップの敷居が低いのも後押し
LIPの活動
1.途上国のMFIへ投資する
2.児童養護施設への資金提供をレバレッジをかける
来年12月に一つ目の施設が出来る
後半のパネルディスカッションに続きます。
by m@ [講演録・セミナーレポート] [社会的投資] [コメント(0)|トラックバック(0)]
トップランナーが語る金融の今とこれから#2 ― 2012年08月03日
パネルディスカッション『金融の先にあるもの』
妹尾:
maneoは2008年10月に開始
ようやく4000万円の黒字になった
慎:
アメリカやイギリスと比較して伸びないのはなぜ?
妹尾 :
日本はやっと事業者が揃ってきた段階
岩瀬:
アメリカも決して規模が大きい訳ではない
まだまだ事業として儲けられていない
妹尾:
残高ではアメリカでもまだ伸びる余地がある
アメリカでは借り換え需要が多い
慎:
既存の金融機関の代わりに使う人と違う人
妹尾:
銀行が手を出さない分野がkickstarter
岩瀬:
昔はもっと夢のあるものだったように感じる
妹尾:
maneoのブラックヒストリーを語ることになるが・・・
個人向けはディストレスに近い、デフォルトや延滞もある
貸し倒れコストで抜けるマージンが限りなく0に近い
審査5%くらい 事業の成長性が遅かった 時間との戦いでボリュームをどう作るか?
一旦パーソナルをやめて事業性へ移行
世界的に見て明るい未来から暗くなったのは世界的不況の影響
慎:
5%だと手作業の審査だとコスト割れ 自動化は?
妹尾:
スコアリングモデルで審査はほぼ自動化していた。
金利と金額はすぐでる
あとは書類審査
大量にさばけるが通る案件が少なかった
知名度がなくて1日数十件程度
体力的に耐えられなかった
慎:
一部の資金は寄付と投資のハイブリッドなどもあるが
功能:
ARUNは今6000万円ちょっと
全て個人のお金を出資 一つだけ法人
これで儲かると思うなと口を酸っぱくして言う
カンボジアは援助の対象でしかなかった
最近は土地を売るファンドなどがあるので勘違いされては困る
寄付してもいいと思って投資してほしい
仕組みについて応援の気持ちで
ただ、それだけでは回らない。事業とバランスを取りながらファンドのリターンだけでは回らない
規模をどう大きくするか?あとはスピード
慎:
投資に使えるお金と運営に使うお金があるが
功能:
ARUNは金融庁の免許はとっていない
そのため、二つのお金を一緒に管理している
社会的投資の仕組みを作り、会社の応援も兼ねている
実践を通してやっている仕組み作り
慎:
これから伸ばすための一番のボトルネックは何か?
出資者が足りない?投資先を探すこと?
功能:
世界的には投資先がないと言われている
ARUNは両方
妹尾:
ライフネットは広告についてどうしてる?
僕らはネット での口コミと雑誌の取材くらい
岩瀬:
メディアミックスはすべてのメディアをやってる
妹尾:
テレビで取り上げられると一気にくるが
そのうちどれくらい本物の投資家になるか?
岩瀬:
今はテレビでもどれくらい効果があるか計算が出来るようになった
妹尾:
ネットで金融ベンチャーがみんなぶち当たる壁ネットだけ対象に広告すればいいと思っていた
岩瀬さんも同じように考えていたのか?
ライフネット生命はブレークスルーを起こす最先端の姿ではないかと注目している
岩瀬:
ライフネット生命にソーシャルという要素が入っているか?
ソーシャルファイナンスみたいな繋がりではない
今はただの通販になってしまっている。アクションはSNSに流れていない
保険に入ってるや、保険金受け取ったなどはなかなか人に話しづらい
慎:
ある程度ソーシャルな要素がある
応援したいという動機があるのでは?
岩瀬:
アーリーアダプターはそうだったが、テレビCMをした頃から変わっている
マーケティング的に応援団がいると強いが、ある程度からはノットソーシャルが強い
心臓部ではソーシャルが必要だが、ソーシャルメディアの限界はどこか?
安いのは前提条件で信頼できる会社か?の判断材料としてソーシャルの後押しがあるかも
慎:
他のものならできるのか?
USだと家計簿の共有などがある
岩瀬:
ネット金融はどこまでいくのか?
ソーシャル系では
妹尾:
金融機関の機能の一部をネット化するのは進むだろう
預金もローコストオペレーション化などは可能かも
総合金融機関の一部機能をローコストでというのは長いスパンではトレンド
ただし、時間がかかるのは現実的な問題で、更に既存金融機関への安心感がある。
岩瀬:
知ってもらえば解決できるということでもなさそう
kickstarterの方が多いのはなぜ?寄付でお金は返ってこないのに。
慎:
コミュニティーの力を使うには寄付とかの方が相性がいい?
盛り上がりやすい
妹尾:
保険も投資もあんまり人にいいやすい商品ではない
岩瀬:
ピュアな金融はITとは親和性が高いがソーシャル性はあまりない?
妹尾:
共感をうむのは事業
ライフネットは保険料が安いから入る、maneoはリターンが高いからやるって人が多い
ソーシャルで伝播して爆発させるのは模索中
慎:
お金のやりとりはハッピーではない
他人に対して「貸そうぜ」はなかなか言えない。返ってこなかったらというのも考える。
妹尾:
田舎を活性化してほしいという案件がある
経済合理性はともかく面白かった。共感を得られやすいのかもしれない。
功能:
普通の人にとってお金の流れは見えないもの
消費するものは身近だが、他は遠い
それが社会とつながったり、未来につながったり
共感をインプットできるというのがインターネットによってソーシャルなお金の流れを後押ししている
慎:
世界の中に数%存在している
ニッチなところにお金が届くようになった
岩瀬:
100億円で新しい金融機関を作ってと言われたら何をする?
慎:
人がいないリテールバンキング
セブン銀行に近い
ただATMしかない銀行
儲かると思うが、やりたいとは思わない
やりたいのは下剋上ファンド
児童養護施設の子に投資してバイト代も買い取って、社会にでたら収入の一部をリターンとして配当
PE的奨学金
リーダーシップのある子供たちを支援
妹尾:
うちの競合はSNSのやりとりを審査するような仕組み
逃げ場のない世界は怖い
コミュニティファイナンス
バーチャルなソーシャルではリアルでも逃げ場が無くなる
松本大さんもfacebookがネット証券をやったらお終いと言っていた
質疑応答
質問:
インパクトを与えるサイズまで持って行くのとソーシャルな関心は両立するのか?
金額が少し大きくなるとリターンも求められるようになる
小さいとリターンが優先度は小さくなるが
功能:
ARUN 一口50万円
目指しているのは持続的に回すこと
取り組みを実験中
世界的にも資金の集め方が違う
寄付で集めて投資と再投資するパターン、年間2%くらいの配当、それ以上のリターンなど
日本でソーシャルなお金の集め方を太くしたい
仮説では寄付ではなく、ある程度返ってくるのが良いのではないか?
岩瀬:
一口50万円では厳しいのでは?
妹尾:
入口は小さくても比較的大口の資金が集まりやすい
一口50万円だとそれなりのリターンがないと集まりにくいのでは?
岩瀬:
小口投資家はどんな感じ?
妹尾:
一件数万円を何件かやって、徐々に増やしていくイメージ
慎:
どう課題を解決したいか?
LIPのChance Makerでは認知を広げる必要があると考えている
そのため、小口寄付を集めると寄付する段階で考えてもらえる
地元の名士が一億円寄付という旧来のやり方だと世間には問題は知られないまま
本来税金で対応するべきだろうと考えている
岩瀬:
認知と寄付は別でも良いのでは?
慎:
最近は大きなお金への取り組みについても考えている
功能:
人は飽きっぽい
そんなに簡単ではない
大きなインパクトを与える太いもの
政府系の仕事からというのは必要だが、移り気な私たちが何かできるとしたら個人が動き出すこと
コミットする個人をどう掘り出してくるか?試している段階
妹尾:
最初は小口でも返ってくると膨らましてくる
最初は小さく大きくできるやり方もあるのでは?
近況報告をまめに行ったりメールマガジンを送ったり
功能:
ライフネットとはプロダクトとステージの違いではないか?
慎:
最初はコアになる人が必要
質問:
日本で資金を集めてペルーで貸し出す案があるがどう考えるか?
慎:
日本で資金調達する必要がない
やるなら人口密度の高い国がよい?
質問:
SBIなどは1%のリテール債などで資金調達を行い、投資を行なっていると見られている
maneoがソーシャルファイナンスを行う原資をリテール向け債券で調達していない理由は?
1%の金利では目線が合わない
参入するマーケットを知らないといけない
例えば香港のメイドさん向けに日本で資金調達している事業者がいるが、新参者が入れるほど甘くない
消費者金融はむしろ海外から撤退している
自分たちでもやりたいと考えていない
質問
政府系金融にどんな期待をしているか?
???:
政府系のお金はソーシャルインベストに流れている
これまでとは違った形でお金を出せる?
寄付は出しやすいが、投資や融資は出しにくい
もう少し長い目(10年?)で考えた世界銀行などのように
規模がもてるだけのメリットは政府系金融にあるのでは?
慎:
お金にプラスアルファとして技術提供など
日本からお金だけでなく技術者が来るなんてどう?と言われている
面白い例として、中国で村を株式会社にしたところがあり、成功事例となっている
この案は東北でも一回検討はされた
岩瀬:
JICAはひたむきだが美味しいところを中国などに持って行かれている
戦略を考えてもう少し上手にしては?
慎:
これからのアイデアについて一言
岩瀬:
黎明期で政府や調達側がまだ考えられる?
功能:
目指しているのは日本が世界の人たちと一緒に生きていて交換できる
みんながハッピーに
日本から発信する形でソーシャルファイナンスを
これからも固めていく
妹尾:
金融は黒子であるべき
実業の中でファイナンスがつく
実業を作るとことから始めてみたい
慎:
投資とコミュニティをつなげる
好きな会社や店をコミュニティでつなげる
会社を応援するコミュニティからお金を集める
岩瀬:
サマリーにお金をのせるようなイメージ
慎:
好きなスピーチにこんなのがある
「ひとりのバカな男が裸で踊ると周りにいるみんなも踊る」というもの。
フォロワーが生まれると最初の一人はリーダーになり、徐々にみんなが少しずつ影響をもつようになる
by m@ [講演録・セミナーレポート] [社会的投資] [コメント(0)|トラックバック(0)]
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