地域の中小企業を応援する「ふるさと投資」の検討も進んでいます2012年08月18日

 7月末に政府がまとめた日本再生戦略に書かれていた「ふるさと投資プラットフォーム」、予想通りミュージックセキュリティーズなどのマイクロ投資を推進する事だったようです。(前回の記事はこちら


 そんなふるさと投資について、8月14日にはワールドビジネスサテライトでも取り上げられました。


 ワールドビジネスサテライトではふるさと投資の事例として滋賀県長浜の黒壁地区でガラス作家さんを応援するファンドを取り上げて紹介していました。


ふるさと投資の事例と投資家像

 滋賀県長浜にある黒壁地区にある吹きガラス工房では炉の火を24時間落とす事がないため、ガス代がかなりかかりますが、それを1口5万円のファンドで一般の方から広く集めました。滋賀銀行さんの話だと、融資することもできたものの、ファンを増やすという意味も持たせてファンドでの募集を提案したという事でした。

 ファンドを設定したミュージックセキュリティーズではマイクロ投資と呼ばれるミュージシャンや酒蔵、地場産業や林業、農業などを応援する投資を数多く取り扱っていますが、そこに集まる投資家は一般にイメージされる姿とは異なります。

【投資の動機(複数選択可)】
 仕組みに共感したから    21.8%
 事業者を応援したいから   18.4%
 事業者の考えに共感したから 11.3%
 利益が出そうだから     0.8% 

 利益が出そうだからと回答した投資家はわずかに0.8%にすぎず、マイクロ投資というみんなの小さなお金を集めて応援しようという仕組みに共感する人が最も多く、ついで事業者を応援したいから、事業者の考えに共感したからと続きます。

 投資家の求めるリターン = 金銭的なリターン

  ではなく

 投資家の求めるリターン = 共感した事業者を応援することによる満足 + 金銭的なリターン

 投資家の求めるリターンの定義が変わっているだけでなく、金銭的なリターンよりも応援する気持ちの方が優先度が高いという不思議な現象が起きています。また、投資家もお金を持っている人が中心ではなく、30代〜40代の現役世代が中心です。決してお金持ちが道楽で応援しているわけではなく、普通の人達が投資を行なっています。

 黒壁のガラス工房でも全国からお金が集まって、ファンドを通じて興味を持った人に観光に来てもらえたら単に銀行が必要な資金を融資したというよりも地元にとって良い効果が生まれます。


寄付ではなく、投資だからできること

 「投資するお金があるなら寄付をした方がいい」よく聞く言葉です。

 確かに、生きるか死ぬかの瀬戸際にあるような状態の人に対しては寄付こそが求められることでしょう。
 また、NPOのように非営利な活動を支えるのにも寄付金というのはマッチしています。でも、世の中にはそこまでいかなくてもお金を必要としている人たちはたくさんいます。

 例えば、中小企業が銀行の融資をお願いしても、なかなか思ったように借りられないという現実もあります。

 ある日本酒の酒蔵では美味しい日本酒を作るために3年間熟成させたいと考えていました。
 でも、銀行は1年以上の貸付は厳しいと言ってきます。目の前に熟成こそされていないものの、出来上がった日本酒があれば、それを売って資金を回収すればいいと考えるからです。それは資本主義としては正しい回答なのかもしれません。でも、作り手の思いは実現されません。
 事業に必要な時間軸と金融機関の時間軸のズレによるミスマッチです。

 そこである純米酒を作る蔵では、ファンドを使って日本中のお酒好きから3年間待ってもらえるお金を集めました。3年間待ってもらう代わりに熟成中のお酒(非売品!)をプレゼントすることで熟成の過程を楽しんでもらう事にしたのです。

 お酒がもらえる上に3年待つと熟成されたお酒の売上に応じたお金が返ってくるのです。

 ここで、日本酒好きと酒蔵の利害は見事に一致しました。
 今では募集すると数日で売り切れてしまう程すっかりファンが集まるファンドになっています。
 また、熟成の過程を楽しんだことで日本酒を熟成させると美味しくなるという事を知る人も増えます。

 酒蔵にとっても、これまで売上が横ばいだったのが3年熟成させたお酒を販売した2011年は前年比108%の売上、2012年も前年比120%と売上が伸びるようになりました。
 これは美味しいお酒を出荷することになったのと、ファンドを通じたファンの新規開拓の影響だと思います。

 売上に余裕が出てきたことにより、地元の若手農家から高くお米を買い取ることで専業で農家ができるようにする取り組みを始めることにもつながりました。酒蔵に長期目線のお金を融通することでどんどんいいサイクルが生まれています。

 でも、酒蔵や農家は寄付金が欲しいわけではありません。自分の事業に理解をしてくれるお金が必要なだけなんです。

 黒壁のように銀行が融資することができるケースでも、日本中からお金が集まるという特性を生かして新しいファンを作って売上を伸ばす後押しにという場合もあります。

 東日本大震災では復興を目指す地元の中小企業を半分寄付、半分投資という形で応援するファンドも作られました。

 様々な形はありますが、共通するのは頑張っている人達を応援したい気持ちをのせて少しずつお金を出し合うという形です。そして、ミュージックセキュリティーズでは気持ちのこもったお金を出してくれた投資家と、応援の気持ちのこもったお金を受け止める事業者を積極的につなげるようにしています。

 そうしないと事業者にとって銀行から融資を受けたような顔の見えないお金になってしまうからです。顔の見えるお金を手にした事業者は応援の気持ちを時にはプレッシャーに感じながらも、決して無駄には使いません。

 顔の見えるお金という形で事業者にお金を渡すというのは大切なことです。
 商品を投資家特典としてプレゼントしたり、投資家による見学会を開催したり目に見える形でのつながりが持てるのもマイクロ投資の魅力です。(金銭リターンが低い分、こちらがより重要です)


投資家のメリット、事業者のメリット

 マイクロ投資にはどんなメリットがあるのでしょうか?

 事業者にとって、お金を調達するのに方法はいくつかあります。

  ・融資

  ・出資

  ・株式の発行

 中小企業にとって、株式を引き受けてもらって自主性が失われるという形は避けたいものです。
 一般的にファンドに対して持たれているイメージはハゲタカファンドのように株式を引き受けて、色々と口を出してくるというものだと思いますが、ミュージックセキュリティーズのマイクロ投資では、融資に近い形で資金を事業者に渡します。

 融資と違うのは事前に利回りが決まっていないことです。

 多くの場合、売上の何パーセントというように事前に決められた額を投資家に配当することになります。
 事業がうまくいかなかった場合は出資を受けた額よりも少なく投資家に配当することになるため、融資を受けるよりも事業者の負担が少ないというのがあります。

 また、大きく儲けるのが目的のファンドではないため、たくさん売れた場合でも投資家にはそんなに多く配当をする必要がありません。

 投資家にとっては、応援したいと考えた企業を支えることができたり、投資家特典の商品を受け取ったり、見学ツアーに参加したりといった事業者と顔を付き合わせた付き合いができるのが魅力です。


ふるさと投資という新しい姿

 日本中から応援の気持ちのこもったお金を集めるマイクロ投資にも問題があります。

 せっかく、地元の企業を応援するファンドを作っても地元の金融機関では販売できないのです。
 現在検討中のふるさと投資プラットフォーム推進協議会では地元の金融機関でも販売がしやすくなるように検討をしています。

 また、投資商品と見た場合に損益の通算ができずファンド毎に課税されたり、被災地応援ファンドで応援金として寄付されたお金が会計上は寄付金として計上されないため、収益として課税されてしまうといった問題も抱えています。

 9月には市民風車ファンドの事業者を読んでヒアリングも予定されているようですので、上場企業へ株式を通じた投資を行うのとは違う身近な会社を応援する投資制度が整備されそうです。

 地域の活性化に善意のつまった投資という新しい形で取り組む「ふるさと投資」が日本の地域を元気にする取り組みになることを願っています