第二回草快塾 よい投資信託の条件とは?(2012.08.28)2012年08月30日

 8月28日(火)にレオス・キャピタルワークスで開催された草快塾に参加してきました。

 草快塾とはコモンズ投信の渋澤会長、セゾン投信の中野社長、レオス・キャピタルワークスの藤野CIOの三名が草食投資隊を結成して行なっているセミナーの一つで参加者を交えてディスカッション を行うのが特徴です。昨年6回開催されて、今年は2周目になります。

 今回のテーマは「よい投資信託の条件とは?」。

 講師が一方的に話すのではなく、参加者のグループディスカッションの結果を踏まえて講師がコメントをしていきます。

 今回は最後のまとめの話がお三方それぞれ少しずつ考えが違っていてディスカッションのようになって盛り上がりました。最後に中野さんが熱く語ったことも重要 なポイントです。

 最初にレオスの藤野さんから。

藤野:今日はネクタイを忘れたが司会とカメラマンを兼任。
   草食投資隊も最初に日経マネーの鼎談から始まってもうすぐ3年。草快塾も二周目に入った。
   最近では東証と一緒に全国キャラバンで回っている。

渋澤:最初にテーマとは違うが、この間複利について問いかけを受けた。債券だと複利というのは理解しや
   すいが、株式や投資信託には馴染まないのではないか?と。
   もともと複利利回り(compound yield)というのは債券からきた言葉。
   受け取る利子がクーポン。イールドは利回り。

   例えば100万円が年利5%で増えるのと同時に2%の配当があるとする。これだと1年で7%増える。
   10年間投資した場合
   2%の配当を毎年受け取ると
    100万円の投資元本は163万円になり、配当は25万円。合計188万円
   2%配当を再投資すると
    100万円の投資元本は197万円になる。

   債券のクーポンのように株式の配当金や投資信託の分配金も考えて再投資すると考えると株式や
   投資信託にも複利効果があると考えることができるのでは?

   ここから先は中野さんに

中野:分配金と聞くと孫におもちゃを買ってあげたり、受け取って使うイメージがあるが複利にするため
   には淡々と分配金も再投資する。すると、お金が働きに出ることでどんどん増えていく。
   簡単に説明するとこうなる。

   株式の場合、株価が上がって売却することで値上がり益を受け取ることもできる。
   値上がり益を使わないで、再び投資することで複利にすることができる。
   他にも成長する企業の株に投資し続けることも企業の内部留保の成長という意味で複利。
   ただし、内部留保を預金しているような会社ではなくしっかり働かせている会社の場合。
   会社の経営は複利と考えることもできる。

   ここで本題に戻ってよい投資信託について。
   財産作りとして投資信託を使う人にとってのよい投資信託とは、資金が安定していること、コスト
   が安いことなどがあげられる。ただ、世の中にはそうでない価値観の人もいる。
   今のニーズはお金を育てるのではなく、入れたお金はすぐに出せというもの。配当が大切。

   日本の資産額の多い投資信託10本を見ると全て毎月分配型。グローバルソブリンはまだ一位だが、
   利回りは最も低いものになってしまった。

   今日のディスカッションではお金を育てるという前提で話したい。
   途中で配当をもらって孫におもちゃを買ってあげるような投信は除外する。

   グループディスカッションのテーマを3つ
    1.これまでの投資信託体験
    2 .体験をもとに不満、疑問
    3.よい投資信託とはなにか?

==== グループディスカッション ====
グループ1
 大手から購入して塩漬けになっているものがある
 タイミングがわからず薦められるままに買ってしまった
 運用者の顔が見えない
 「長い目で」がよい投信の条件では?

グループ2
 ITバブル直後にインターネット投信を購入して半値以下に
 退職金で投資したがポートフォリオ作りを急いで結果的に高値掴み
 毎月分配型がよくないというが、債券やリートなど成績はよい
 投資信託はわかりにく。勉強しないといけない。
 内容がわかりやすく運用者の顔が見えるのがよい投信
 運用会社の規模ではなくポリシーなどがしっかりしているところ。

グループ3
 利益が出たら売ったほうがいいのか?
 積立をした方がいいのか?自分でタイミングを判断した方が・・・
 セゾンGBFはいいと思うが設定来マイナスが続いていて踏み切れない
 情報が公開されていること
 少額から投資できること

グループ4
 大手が分配型で購入時手数料を稼ごうとしている
 時間を味方につけて長期投資を
 中身や仕掛けのわからない新商品は納得がいかない

グループ5
 選択基準や中身がよくわからずフォローが不足している
 中身がわかると納得、 共感できる
 コストが安いものがよい
 個人では投資できないようなものに投資できる
 長期保有に値するものを

グループ6
 設定後しばらくすると解約が相次いで繰上償還された
 購入後のフォローが足りない
 資産残高が増えるかどうかに注目している
 運用方針が見えて顔が見えるものがよい
 投資家の質をあげる勉強する機会を与えてくれる投信がよい
 運用者が好かれる、信頼に値する人物である

   各グループからの発表を終えて

中野:投資家を育ててくれるファンドがいいファンドという言葉にぐっときた。
   ここが自分たちが目指しているところ。釣った魚には餌をあげないファンドとは違う。
   一緒に学ぶことで投資の楽しさや意味合いを投資家とも共感する。
   共感できた人が新しく共感したい人を集めてくれる。
   いいお金を社会に流しこむことを使命と感じてやっている。

渋澤:自分が最初に株式を買ったのが30代。投資信託は息子が生まれたのを機に40代になってから。
   それまでは投資信託についてあまり考えていなかった。
   今自分が考えているのは個人でも少額でしっかりと分散投資ができること。
   株や債券を直接購入したのでは少額でしっかりとした分散投資は行えない。

   自分が最初に買った投資信託は日経225に連動するインデックスファンドだった。
   購入時手数料が2%くらいかかって毎月積立することにした。
   そこで、翌月以降なぜ自分は購入時手数料を払い続けているのか疑問に感じた。
   初回は販売行為をされたので納得できるが、2回目以降はただお金を口座から投信口座に移動した
   だけなのに同じく手数料を取られるのはなぜか?

   また、自分が買ってほしくないと思う会社は入っていて欲しくないとも思った。
   分散をすればいいというものではなく、自分のお金は自分の考える側にいて欲しいと考えた。

   自分が納得している投資を代行してもらうのが投資信託。
   納得感が大切。
   このような勉強する場を設けられる投資信託がいいと思う。

   自分一人で上がった、下がっただけではない人とのつながりを生み出せること。
   参加者同士で話せる場を作れること。

   投資家同士の横のつながりを全国に広めたい。
   我々がいかなくても投資家同士で集まれるように。
   英語で投資信託はミューチュアル(共に)・ファンド。お互いに築いていくという想いがある。

藤野:本当は全国いろいろな地域で草快塾のような会をやりたいと考えている。
   各地域でサロンのような場ができるのが理想。
   この会にはさりげなくすごい人も来ている。
   今日はFPの馬養雅子さんかえるさんも。

   ちゃんと運用してお客様を増やしてこういったみんなが集える場を増やしたい。
   これこそが資本主義のもともとの姿ではないか?

   資本主義と民主主義は対立するように言われているがそんな事はない。
   一人ひとりの細かいお金が集まって僕らがいいと思う企業に流れ込むことで世の中を動かしていく。

   2002年7月から2012年7月末までの10年間でTOPIXは-24%だった。
   ショックなことにTOPIXの時価総額の大きなコア30指数は-44%。
   年金基金の運用先は大型株が中心なので、僕らは本当はもっと大企業の経営に対して怒らないと
   いけない。

   東証二部指数は+23%だった。インデックスがダメなのではなく、選択をしないといけない。
   選択をしないという選択では老後のお金は年金運用で失われてしまう。
   401kに我々は参入することができないのが現状。個人が声を出してくれるとこの壁を壊すことが
   できるかもしれない。
   選択、行動をして欲しい。

渋澤:コモンズは大型株が多いがそれがダメという訳ではないというのは先程藤野さんも話したがその
   通り。コモンズもしっかり選択をしている。

   経営者がダメだとファンドマネージャーは話すがそれは違うと思う。
   大きな会社でももっと自由に経営すればいいのにと思うが、周りががっちり固めていて自由な経営
   ができない場合がある。
   自分の言葉で海外にも伝えられる経営者は20年前と比較して随分と減ったように感じる。

   コンプライアンスやガバナンスはしっかりとした反面、経営者の自由を縛ってしまった。
   投資家として経営者と進む方向を語り合う必要があると思う。

中野:この話は業種によっても違ってくると思う。例えば参入障壁の有無。
   参入障壁の高い業種は中央官庁にがっちり守られている。
   そうすると顧客を見ずに官庁を見て経営するようになってしまう。
   経営者の個人攻撃ではなく、構造やしがらみといった問題もある。

   話は変わっていい投資信託について。
   我々の投資信託は運用者の顔が見えることを評価していただいていると思う。
   いい、悪いはなかなか判断できないと思うがポートフォリオと資産配分に注目して欲しい。
   そこが自己主張であり、理念、考え方、哲学。これを感じて欲しい。

   これらは目論見書で文章になっているので、運用と整合性を比較してみて欲しい。
   毎月分配型 のほとんどは「中長期的に資産を成長させる運用をします」と書いてあるが、毎月
   分配を吐き出す運用をしていて矛盾している。
   目論見書もたくさんファンドがあるので同じようなところをコピペして作っている。
   ハートが入っていない。あれだけファンドがあれば気合も入らない。
   こういう運用をしたいという想いがあるだろうか?

   運用期間が無期限であることも大切。未来永劫、次の世代、また次の世代とつなげていけるように。
   期限があってはおかしい。でも実際は期限付きが多いのが現状。しかも短い。
   復興応援ファンドといいながら運用期間が短いのはなぜ?
   相場にのせることしか考えていないからそうなる。そういう細かいところを見るには勉強が必要だが
   一般の金融機関では化粧をはぐような勉強を投資家に対して行えない。

   積立をちょっとずつでいいのでやってみて欲しい。楽に立派な長期投資ができる。
   積立てる度に購入時手数料がかかるのはおかしい。
   同じクォリティで購入時手数料がないものもあるので、大きなお金になるほどそちらを選ぶ。
   退職金で1000万円分購入しようとすると3%だと30万円にもなる。
   他人に30万円もお金をあげる経験はないと思う。

渋澤:購入時手数料がゼロでないといけない訳ではないと考えている。
   きちんとサービスを受けたのであれば対価は支払うべき。
   日本人はサービスは無料と考えてしまうところがある。