NPO法人いい会社をふやしましょう創立記念シンポジウム 森と畑に『いい会社』(1)基調講演 大久保寛司氏2012年12月25日

12月15日(土)にNPO法人いい会社をふやしましょうの創立記念シンポジウムが開催されました。

第一回目のシンポジウムは「森と畑にいい会社」と題して日本が抱える社会的課題の一つである第一次産業にスポットを当てました。

日 時:2012年12月15日(土) 14:00〜16:30
場 所:国立大学法人 東京工業大学蔵前会館
主 催:NPO法人いい会社をふやしましょう (→公式HP
プログラム:
 基調講演  人と経営研究所 所長 大久保寛司氏
 講演    株式会社トビムシ 代表取締役 竹本吉輝氏 (→HP
       株式会社マイファーム 創業者 西辻一真氏 (→HP
 パネルディスカッション
  コーディネーター 鎌田恭幸氏(NPO法人いい会社をふやしましょう 理事) 
  パネリスト    大久保寛司氏、竹本吉輝氏、西辻一真氏

開演のご挨拶:
 NPO法人いい会社をふやしましょう 代表理事 江口耕三氏


森と畑について日本の第一次産業にどんな課題があるか、どんなふうにいい会社が取り組んでいるかプログラムを組んだ。

まず最初にNPOについて説明したあとにいい会社について大久保寛司さんに話していただく。
大久保寛治さんは日本全国のいい会社をまわって大切なポイントを講演や本で日本に広めている。

続いて林業についてトビムシの竹本吉輝さんに。
林業といってもピンと来ないと思うが、何が問題なのか?
10年、20年目線で日本の林業を考えたとき、今手を打たないと禿山になってしまう危機感がある。
今日はトビムシの取り組みについて話していただく。

3番目に農業について。
日本の農業にはいろいろな問題があるが、マイファームの取り組みについて話していただく。

最後のパネルディスカッションは鎌倉投信の鎌田さんがコーディネートする。

NPO法人いい会社をふやしましょうの理念は「いい会社をふやす」こと。
活動骨子は
 ・いい会社を応援する人をふやす
 ・いい会社を目指す経営者社員をふやす
 ・社会起業家をふやす
の3本。それぞれについて取り組んでいく。

理念経営塾を来年から実施する。
また、次回のシンポジウムの開催について案内する。
6月1日にリーダーシップについて
元世界銀行副総裁の西水美恵子さん
NPO法人テラ・ルネッサンスの鬼丸昌也さん
のお二人をお迎えして。


心構え
一人ひとりの力は微力かもしれないが、無力ではない。
自分にできることをする。

基調講演:「いい会社をふやしましょう」
 人と経営研究所 所長 大久保寛司氏


今日はいい会社をつくりましょうという話をする。
伊那食品工業という会社がある。
この会社の社是が「いい会社をつくりましょう」

いい会社の定義とはなにか?
誰に聞いてもいい会社というのが「いい会社」
すべての人にいい会社と言われるのが「いい会社」

いい会社の世間での観点は規模や売上利益率、配当率など。
しかし、素晴らしい業績で配当があったとしてももその影で人を不幸にしていたとしたら価値があるか?
トータルで見たらマイナスの価値の可能性もある。

業績をあげるのが善であれば正しいが、メンタル面で問題があればそれは人として正しいのか?
本質を外しているとしか見えない。

鎌田さんも新井さんもその世界で生きてきた。
金を転がし、どこかでゼロになっているだけ。虚の世界。
そこで踊っていた。達人だったので大変な業績をあげていたが。
しかし、そこで人間として目覚めた。
二人で行き詰まったところでどうしようと。

いい会社を前に、自分たちはこんな会社に貢献しただろうか?と。

二人とも金融の世界にはもう関与しないという覚悟で会社を辞めたが、誰かがやらないといけないと帰ってきた。
いい会社をふやすために本来の金融業の姿を取り戻すために。

伊那食品工業の塚越会長のところにはこれまで300時間くらい訪問したが、いつ行っても社員の輝きが素晴らしい。
元リッツカールトン日本支社社長の高野登さんもロビーに入っただけで驚くほど。
ロビーにいただけで涙を流した人もいる。
なぜ黙っているだけで涙がでるのか?

そこでの応対のレベルは一流ホテル以上。
皆が幸せに働いている。

そこでは命が生きている。輝いてビジネスとして結果をだす。
関わる人すべてが幸せになる。それがいい会社。

納入業者もタクシー運転手も。
タクシー運転手が行先を伊那食品工業と言うと自慢しだす。

なぜ入社したのか?
会長に採用だよと面接が始まる前に言われた。それを聞いて罠だと思った人もいる。
しかし、会長に三回言われて泣いた。伊那食品に入社するのが中学からの夢だった。
なぜ?周りの人がいい会社だと言っていたので。

最近、親に勧められたから入社したいという人が多い。
人として立派になるから。育てなおしてもらいなさいと。
競争率は200倍以上。
その人はよく気がつく人だった。今もいい笑顔で働いている。

なんで会社が好きなんですか?と聞くと答えは
「いい人ばかりですから。本当です。先輩のようになりたいです。上司のようになりたいです。」
という答えが返ってくる。

大手企業の幹部研修で話していると、若い人は将来先輩のようになってはいけないと思っている。
なぜなら苦しそう、輝いていない。みじめだから。

若い人は偉くなりたくない。
自分の生活が大事だから。

キラキラではなくギラギラ。濁点とはよく言ったもの。

伊那食品では後輩のようになりたいという人が増えてきた。
みなが立派だから私もあのようになりたいと。

いい会社はチームワーク。
根底には思いやり、助けあい。

優秀とは偏差値ではない。優しさに秀でた人。優しさとは人を憂うと書く。
そういう社員ばかり。

土日もかんてんぱぱガーデンに来て誰もが枯葉を掃いている。強制ではない。
自発的に来ている。朝早く来て掃除をしている人は本気の動き。
掃除を通して五感が研ぎ澄まれている。
基本的感性が磨かれる。

いい会社は目が輝いている。
そして職場の雰囲気がいい。

このふたつは間違いない。捏造できない。
働いている人が幸せでやりがいと達成感があり、お互い支えあっていると生まれるもの。

表情はトレーニングでできるが目は違う。
目は人の本質が出る。

テラ・ルネッサンスの鬼丸さんと沖縄で講演した。
地雷除去と児童兵25~30万人を救おうという事で21歳でNPOをはじめた。

アフリカの奥地の危険なところに入っていって、元子ども兵の魂の再生をはかる学校を作る。
職業訓練施設。
NPO法人はなにで成り立つか?理念に賛同した人と企業の賛助金。
お金が必要。

ISFネット 渡辺さん
12年間で社員2000人のうち800人の雇用弱者を雇用した。

青山に三号店を開いた。福島、安城にもある。
ここでもセミナーをやった。
健常者は1~2名 ほかは知的ハンディのある人だが、素晴らしい笑顔で対応してくれる。
福島と仙台と盛岡に拠点をつくって180人雇った。

道路や防波堤で真の再生か?
職をつくる。そうでないと人は生きていけない。
寄付金がたくさんあって生涯生きていけるようだとしても、それでは生きがいは見いだせない。
生きていないから。

鬼丸さんもウガンダから震災の義捐金5万円をもらった。
このお金で何をするんだ?と言われ、すぐに拠点をつくって10年タームで考えた。
中高年女性がやることがない。
何もしていないと悲しい思いがフラッシュバックする。
そこで女性たちに縫ってもらうことにした。一流のデザインで。

そうすることで女性たちが生きがいをもてた。嫌なことを忘れられる。
働いたお金で子どもや孫に何か買ってあげられる。

職を提供するのは企業。
企業が素晴らしい職を提供する。
そういう企業が増えたら世界平和につながる。

貧困になると暴動が起き、荒廃する。
経済がまわらなくなると国情は荒れる。
経済は仕事を通じて価値をうみだすこと。
ただし、生み出す過程で不幸な人を生み出してはいけない。

何年か前に寒天ブームが起きた。
伊那食品では社員が夜も勤務をさせてほしいと言ってきたので24時間体制を取った。
すると1ヶ月で社員の目がおかしいと外部の人に言われた。
そこで、24時間体制は翌日から中止。社員を不幸せにしてはいけない。既に在庫はあるという事で。

軸がちがう。
お客様を大切にという会社はあるが、社員を大切にという会社はあまりない。
ただ、お客様を無視して儲ければいいとまでは社是に書いていない。
社是を持っている会社も90%以上は無視して違うことをやっているのが現実。

鎌倉投信は素晴らしい会社を本当に増やしていきたいという事で設立されたがそれだけでは限度がある。
別の形でやろうというのが今日の場であり、NPO法人。

いい会社をふやし、職をふやし、幸せな人をふやすこと。
メンタル上行き詰る人が多い。
皆でで助け合う。人に関心をもつ。
困った人に手を差し伸べるとメンタルは荒れない。
輝いている。

鬼丸さんと会った時のギャップがすごかった。
柳のように軽やか。
この人がアフリカで銃をつきつけられた。
とても危険な地域に足を踏み入れたので自業自得ではある。だが、鬼丸さんは生き延びた。
銃を突きつけられても、兵に満面の笑みで手を降ったらどこかに行ってしまった。
人間、危害を加えないと思ったら撃たない?
殺されると思わなかったんですか?と聞くと、「思わないです。」という答え。変ですよね。
何かが生かしてくれるだろうという信念を持っている。
本物の笑顔はナチュラル。みなさんは真似しないで。

高野登さん
リッツカールトンの日本支社社長を務められた。
その高野さんが伊那食品ですれ違う社員をみんな連れていきたいと言った。
動作が美しい、言葉、表情が美しい。そして素晴らしい仕事。
本当の美しさは内側から生まれる。
化粧は外から塗ってもある程度まで。内からの美しさは減らないし、本物。

児童兵はまごころを引っこ抜かれて兵隊になっている。
現地で元児童兵の怖い人を集めて、再生の学校をつくった。
そんな彼らが東日本大震災を聞いて5万円集めて送ってきた。
人間性を消滅させられたと思っていたが、素晴らしい人間性というものは無くならない。
彼らにとって大金である5万円も半日で集めた。日本人が救ってくれたから。
自分たちに何かできないか?おもいやり。人間性。
人間性はなくならない。奥に沈殿してしまうだけ。
どうやって引き出すか?思いやり、愛情を注いであげる。
井戸が枯れたら呼び水を入れる。
呼び水はたくさん必要だが、たくさん注がれると目覚める。
活き活きと。恩を感じる。

本質においていいものがある。
表にだしているのが本物。
人間性を表にだしていないのが本物ではない人。

竹本さん、西辻さん、鎌田さんはいずれも本物人間ばかり
そこに集まる方も本物。

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