「企業との対話」ワークショップ〜統合レポートを読み解く 〜 オムロンさん・資生堂さんをむかえて 〜2013年06月14日

コモンズ投信主催の統合レポートを読み解くワークショップに参加してきました。

対象となる企業はオムロンさんと資生堂さんです。
最初に各社から統合レポートへの取り組みのお話がありました。

■ オムロンの統合レポート 執行役員 経営IR室長 安藤聡氏

・統合レポートを投資家だけでなく全てのステークホルダー向けのレポートとして位置づけ
・特集仕立てにし、インタビュー形式でわかりやすく
・企業価値向上に対する考え方
 経済的価値(永続性)「自信」×社会的価値(企業は社会の公器)「誇り」=企業価値「夢」
・統合レポートを作った理由
 中長期の企業の成長性/信頼性を理解してもらい本質的価値を正しく伝える
 平時に有事を想定した情報開示を行うことで有事の信頼性(株価の安定)を担保する

■ 資生堂の統合報告の取り組み IR部株式グループリーダー 山崎直実氏


・資生堂は世界で太く強いブランドを保有するマルチブランドカンパニー
・資生堂の考えるESGは企業が持続的に成長するためのすべての活動
・投資家はESGで企業のサステナブル性を見る(持続的発展のための成長機会とリスク回避)
・ESG情報を情報開示→アンケート回答→対話→情報開示というサイクルで対応
・ESGアナリストとの対話において何を成長機会、リスクと捉えているのかミーティング等で把握
・統合版アニュアルレポートは主に機関投資家向け
・ホットイシューは全て網羅することでESGアナリスト・機関投資家からの評価は高い

■ ワークショップ 参加者から
オムロン
・歴史を書いてくれるとわかりやすくなる
・商品ラインナップがわかりにくい 写真も大きく
・役員の写真が卒業写真のよう
・インタビュー形式はわかりやすい反面全体観がぼやける
・統合報告という事で新しいものを作ろうとしているのを感じる

資生堂
・ブランドイメージが強く出ている
・ワンワードで重要事項を書いている
・ユーザーや一般社員の意見ものせて欲しい
・アニュアルレポートのようにテンプレート化されていて読みやすい

■ 私の感想

報告書という意味では資生堂さんのアニュアルレポートは完成度は高く、投資家が欲しい情報は総じて網羅されているように感じました。数値も豊富でスクリーニングするのに向いてそうです。ただ、統合版アニュアルレポートと名乗っていますがアニュアルレポート+CSRレポートという感が強く二つのレポートで書かれていたことが一つのレポートに融合されているようには見えませんでした。また、レポートを読む前にESG調査機関によく聞かれる情報は網羅したという話を聞いていたので余計にそう感じたのかもしれませんが、自分が伝えたい事を書いているというよりはアンケートに回答するようにレポートを書いているように感じました。

オムロンさんは全てのステークホルダーを対象にレポートを作るというチャレンジをした結果、まだまだ取組中という感じですがインタビュー形式でわかりやすく構成したり色々工夫を感じました。反面、見せ方が甘くそこは化粧品メーカーの資生堂さんはさすがだなと思いました。こちらも統合報告という名前はついていますがアニュアルレポートやCSRレポートで表現していた内容がうまく溶けていない状態です。

網羅的、数値を見せる資生堂さんに対して情緒的に見せるオムロンさんというアプローチの違いは比較してみて面白かったです。

レポートにおいて財務情報は現在の姿を現し、非財務情報は企業の心を表していると自分は考えています。非財務情報であるESG活動を可視化することも大事ですが、数値やYES/NOが大事なのではなく、なぜその取組をしているのか?という企業の考え方、志を知りたいと思います。

なぜなら長期投資というのはその企業の将来を信用するという事であり、将来を信用するためには企業の心、志を共有する必要があるからです。問題があるから対応するのではなく、元々の企業の志に則って行動していればこういった問題にも対応できるだろうという将来に向けた信用をしたいのです。

統合レポートは企業の見える財務的な姿も見えない心の部分も一つのレポートに融合しようという取り組みです。将来的にいちいちCSR活動・ESGという章が存在せずとも他のそれぞれの章に自然に織り込まれている姿になってこそ企業の心が滲み出る本当の意味での統合レポートなんだと思います。