鎌倉投信・第4回「結い2101」受益者総会レポート(6)西粟倉・森の学校 牧大介氏2013年09月11日

8月31日(土)、鎌倉投信 第4回「結い2101」受益者総会が京都で開催されました。
レポート第六弾は西粟倉・森の学校の牧社長の講演です。

午後の分は大久保寛司さんがファシリテーターとなって講演とパネルディスカッションを交ぜたような形で進行しました。まずは牧さんの講演パートです。

地域に眠っている森林という資源を生かすために様々な取り組みをされています。
ミュージックセキュリティーズの共有の森ファンドを通じて西粟倉・森の学校へ個人的に投資も行っていますが、(褒め言葉として)本当にあきらめの悪い人たちです。

思っていたのと違うことが次から次へと起きるのですが、あきらめないで別の方法で乗り切ってついに単月黒字まで持ってきました。自分自身、何度か西粟倉村に足を運ぶことで日本の林業における問題の根深さとそれをどうにかしようとしている人達の姿を見て応援せずにはいられませんでした。

日時:2013年8月31日(土) 10:00〜16:50
場所:国立京都国際会館アネックスホール
〜そうだ、京都でやろう!〜
 伝統と革新が息吹く千年の古都で「投資」について考える

【講演】
 (株)西粟倉・森の学校 代表取締役 牧 大介氏

鎌田:
午後は若い革新的な企業が集まっています。非常に難しい事業に挑戦されていますが、ごく普通の方たちです。今日会場にお越しいただいている登山家の繰木さんの言葉に「成功の反対は失敗ではない。何もしないことである。」というのがあります。

大久保寛司:
皆さんの講演の後にパネルディスカッションの予定でしたが、構成を変えたいと思い昼休み中に打ち合わせをしました。まず一人10分でそれぞれお話いただき、私がそれに質問していく形をとりたいと思います。お聞きの皆さんも聞いている最中に聞きたいことがありましたら挙手してください。双方向にいきたいと思います。

牧:
鎌倉投信さんに投資していただいているトビムシの取締役であり、トビムシの関連会社の西粟倉・森の学校の社長でもあります。これはヒノキのネクタイでモクタイといいます。ヒノキには覚醒効果がありますので、勝負ネクタイなんです。


商品一つ作るのにも色んな人が関わって作られています。木を植え、育ててきた人、伐る人、運ぶ人、製材する人、加工する人、販売する人。まずは人を育てないといけません。地域資源から価値を生み出す人を育てています。森の学校という名前にはそういう意味も込められています。西粟倉には自分で事業を展開していたり、独立しようとしている人が集まっています。

地域には使われていない資源がある状態ですので、まずは社長を作らないといけません。そうやって地域全体の森林の管理をしていく事でほったらかしの森を商品へと育てていきます。西粟倉では2058年を目指して百年の森事業が進行中です。2040年に村の人口が1,000人という国の推計に逆らうべく、挑戦を連鎖させています。

村の森は所有権が細かく分かれていて簡単には管理ができません。みんながもうだめだとマインドが冷え込んだところをどうにか役場が権利をまとめて森林組合が森を全体管理する仕組みを作りました。

2012年、西粟倉村はついに原木市場への出荷がゼロになりました。年間間伐面積も50haだったのが300haと6倍以上になりましたが、その背景には間伐材を利用するベンチャーがたくさん生まれたという事があります。

材木加工と販売のインフラを持っているのが森の学校です。木材の加工ベンチャーがいても、いきなり丸太の状態で材木を購入するわけではありません。森で伐ってきた丸太をニシアワー製造所へ運び込み、材木にして村の加工業者へ販売します。また、商社部は間伐材の製品をエンドユーザーに販売しています。

鎌倉投信さんには親会社のトビムシ社債を買っていただき、資金的に厳しい中助けていただきました。
先月、森の学校は創業から40ヶ月で初めて単月黒字になりました。(会場から拍手)

原木を出荷する村から商品加工の村として3億円以上の売り上げをあげるようになったのです。かつては本気でチャレンジしている会社がなく、応援する仕組みも十分ではありませんでした。50年前に木を植えた人の思いを受け止めながら次の50年後を目指してお客様、ファンをふやしていきます。

森からお客様までをつなぎ、百年の森事業のゴールとされている2058年まであと45年です。

大久保:
日本は森に関しては資源大国なのに今のような暗い森ではダメになってしまいます。森林を生かせるかどうかの瀬戸際なんですよね?生かせれば資源大国なのに、資源にするために必要な間伐をすると麓まで運び出す経費も出ません。結果として手入れを放棄され、鬱蒼とした杉林が広がっています。

では、どうしたらいいか?間伐していくモデル化が必要です。

牧: 
西粟倉村では森の所有者が小さく分断されていて6000にも分かれていていましたが、今では役場が権利を集約することで生きている木をいつ間伐したか?太さはどのくらいかといった事が在庫管理できるようになりました。

これを実現するには莫大な手間がかかります。ただ、やりきってやろうと大変だけど取り組んだあきらめの悪い村が西粟倉村なんです。

大久保:
西粟倉村での最初の反応はどうだったんでしょうか?

牧:
既に打つ手は打ってもダメだったのにまだなんとかなるとは何事か?という反応が多く、すぐに賛同はしてもらえませんでした。そんな中、国里さんという森林組合にいたあきらめたくなかった人が木薫という会社を起業しました。そこからなんとか役場に任せてもらえるようになるまで4、5年かかりました。形になってきたのもあっていろんな人が前向きになれるようになりました。

大久保:
地域も日本の常識でも、ありえないところにチャレンジしたと思います。ここまでまとめるのには人をつなげる必要があります。その地域に対して良い事をすると言っても受け入れられないのが人の心理。これは海外への支援活動などでも同じことです。地元やそこに住む人たちとの信頼関係をじっくり築くことをしないといけません。

まずは家に行って「すごいね!」と話を半年くらい聞いているとやっとこちらの話を聞いてもらえるようになります。トビムシの竹本さんは仕組みをつくるプロですが、仕組みを実現するまでにはそういった事もやられています。

大島さんというヒノキで家具をつくる職人さんがいます。ヒノキで家具を作るという事は家具職人の世界ではありえない事で、「おまえは職人じゃない」と言われてしまいます。それでも大島さんは挑戦したのですが、なぜできたのですか?と聞くと「じいちゃんの教育で人間やってやれないことはないというのが染みついてた。」と話していました。

家具は堅い広葉樹で作るのが常識になっているので、ヒノキで家具を作ろうとしても塗装する術がありません。そこで何をしたかというと、大島さんは古文書を紐解きました。結果として舐めても大丈夫という塗料が出来上がり、舐めても大丈夫という事は子供用にも使えることになりました。大島さんは時々、この塗料を舐めているそうです。「過去の自分の経験と常識をすべて捨てました それからできるようになりました」大島さんの言葉です。

森の学校ではツアーもやっています。事業を立ち上げた人に直接会っていただく場です。
昨年鎌倉投信が主催したツアーに私も同行しました。天然うなぎが食べられるという事で、懇親会の最中に牧さんは抜け出してうなぎを採りに行かれました。翌朝、とれたうなぎはたったの一匹でそれを一切れずつ参加者みんなで食べました。天然うなぎが食べられるツアーという事で量については書いていなかったので。でも、解体女子が解体した鹿肉の料理もおいしかった。この秋にもまたツアーがあるのでぜひこの目で見てみてほしい。

牧:
秋はうなぎのシーズンではないので今回はうなぎはありません・・・。また、絶滅危惧種になったという事で来年はもう天然うなぎはやらないかもしれません。西粟倉で一番おいしいのは人。森を見て人にふれていただいています。

鎌倉投信・第4回「結い2101」受益者総会レポート(7)坂ノ途中 小野邦彦氏2013年09月11日

8月31日(土)、鎌倉投信 第4回「結い2101」受益者総会が京都で開催されました。
レポート第七弾は坂ノ途中の小野社長の講演です。

農業による環境負荷を未来からの前借りと定義して持続可能性に疑問をもったところからスタートした野菜提案型の企業です。スタートが面白いのと、こだわりを持った新規就農者から野菜を買い取ることでしっかりと販路を提供しています。

鎌倉投信が投資している会社ではありませんが、いずれ関わりがうまれそうないい会社だと思いました。
未来からの前借りをやめましょうというメッセージはわかりやすいですね。
農業に新陳代謝をという姿勢にも好感を持ちました。

日時:2013年8月31日(土) 10:00〜16:50
場所:国立京都国際会館アネックスホール
〜そうだ、京都でやろう!〜
 伝統と革新が息吹く千年の古都で「投資」について考える

【講演】
 (株)坂ノ途中 代表取締役 小野 邦彦氏


4年前に農業が持つ環境負荷を減らして持続可能にしたいと会社を立ち上げました。

現在の農業は危ういのではと考えています。農薬や化学肥料などで今のコストは落ちるが、反面土や水は汚れてしまいます。これは未来からの前借りで、このままでは続けられないよなと思っています。

そこら中にこういった問題意識を持った人がいますが農業を始められないでいます。就農する人もいるのですが、続けられないないのです。出来上がった農産物の品質は高いのですが、品質が高いものを売ることができません。

新規就農する人は空いてる農地を借りて始めますが、空いている農地というのは云わば何らかの問題があった土地です。使い勝手が悪い理由があるのです。そういうところで就農するため、収量が不安定だったり少量しか収穫できなかったりバイヤーからすると面倒くさい農家になってしまいます。
 
それでも、いいものを売れる仕組みを用意すればやる人が増えるだろうと考えました。
新規就農の人と提携して一軒一軒は少量不安定でもグループ全体では安定した収量を確保できるようにしました。

飲食店や自然食品の店、スーパーの他に来月からフェリシモさんでも販売することになりました。
個人向けの販売も行っています。自社の通販サイトはこちらです。

共感して買い続けてくれている人がいて広告宣伝0でやっています。広告宣伝にお金をかけられる余裕がないともいいますが・・・一般の販売からこぼれ落ちてしまうものを販売しようと八百屋もやっています。

他には被災農家さんの受け入れも行っていて、福島の原発事故では多くの有機農家さんが除染という土の除去のために農業を止めてしまいました。そういった人たちに関西への移住支援を行っています。通常の移住支援というのは済む場所を提供したらそこでお終いなのですが、私たちの取り組みでは移住して終わりではなく、ビジネスパートナーとして私たちに有機作物を販売してもらう関係になります。

ウガンダでゴマの栽培にも取り組んでいます。途上国でこそ有機農業が大事だと考え、貧困の原因でもある乾燥した地域でも収穫できる作物ということでゴマを選びました。そんな話をしたら山田製油さんが買い取ってくれることになりました。

就労したい人がいきなり始めるのではなく経験を詰む場所を用意しようと自社農場も始めました。そこでは自然農で作物を作っています。

大久保寛司:
自己紹介をお願いします

小野:
自分の親がよく仕事を変える人でした。そのため、不安定な収入をうめるため野菜を作っていました。 
学生時代にバックパッカーをしていてどれだけ人間が環境に負荷をかけているのか考えるようになりました。その後外資系金融機関に就職してデリバティブをやっていました。

大久保:
外資系金融機関と今の事業はだいぶ違うように感じますが。

小野:
どうせなら全然違う分野で働いて学んでみようと考えました。結果的に40件の農家のリスクコントロールのスキームはデリバティブをやっていた頃の知識を利用することができました。農業は人間と自然の結び目だと思います。農業が変な形になってたらあかんと。そこで、土づくりを大事にしています。

農業をやりたい人はたくさんいるけれども、それは数字には表れてきません。仕組みを作ればやる人が増えて新陳代謝がうまれるのでは?と考えました。就農説明会を開催するとかなり人が来ます。65歳というのは農業の世界では若手ですが、30代の若い方も来られます。

農家をやって食べていけるようにサポートをしています。ただし、農家としては食べていけるくらいだけれども、企業の給与ほどではありません。うちの従業員にも餓死はしない程度の給料しか払えていません。お金だけでやれる仕事でもありません。

大久保:
初めから売れましたか?

小野:
最初の半年くらいは飲食店などを回っても想いなどは隠してコストが下げられて利益が増えますよというような提案をしていましたが売れませんでした。そこで、農家をなんとか守りたいんですと正直に想いを話すようになったら急に買ってもらえるようになりました。

大久保:
どんな野菜を作ってますか?

小野:
色々作っています。本人が作りたい作物だったり、お客さんからこういう作物をと要望があったりもします。