いい会社の理念経営塾 石坂産業見学ツアー(3)高野登氏講演2013年10月06日

石坂社長のお話の後は元リッツ・カールトン日本支社長で人とホスピタリティ研究所所長の高野登さんの講演でした。

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石坂産業さんと同じくおもてなし企業経営選に選ばれた都田建設さんの家を解体するという事は思い出を壊すこと。思い出を永遠に閉じ込めるプロセスを取り入れることでお客様に感動を与えるという話は家の解体で出た瓦礫を処理する石坂産業さんのプラントを見学する前に家の解体瓦礫って思い出が詰まったものでもあるんだよなと視点を変えるきっかけにもなりました。

また、働いている時間は人生におけるど真ん中というのも心にズシリと来ました。
自分は20歳から働き始めて今38歳です。まさにど真ん中の芯に近づいているわけで、これから何をしようかもやもやしながらも考えているに新たな気付きをいただきました。

人が面倒がってやらないことをやればいい

これは、いい会社に共通する要素だと思います。
面倒がってやらないことというのはお客様にとっては逆にやって欲しいことなんですよね。

rennyさんがCTW - 「公開会社」への新しい道というエントリーを書かれています。
上場していないけれども「いい会社」に応援したいという気持ちのこもったお金を届けるという事は自分にとって上場企業に投資するよりもやりたいことでした。

上場するまで規模の大きくなった会社よりも身近にあるいい会社に応援したいという気持ちを投資という形で届けたかったのです。でも、それって実現するにはお互いにかなり面倒なことです。

それをミュージックセキュリティーズさんはマイクロファンド、鎌倉投信さんは公募投信という器を使って実現してくれました。クラウドファンディングも寄付という形にはなりますが気持ちのこもったお金を届ける仕組みです。

気持ちのこもったお金を届けるという事は単なるお金だけの関係とは違ったコミュニティが生まれると思います。そういうのが、自分のやりたいことなのかなとも思ったのでした。

本当にやりたい事だと面倒を厭わないB型なので、本当にこれをやりたい!と打ち込める何かを探しています。でも、えいや!で飛び込む事も必要なんだろうなと思ったり・・・。


人とホスピタリティ研究所
 所長 高野 登氏

先日も石坂さんのお話をお聞きしましたが、今日も5ページメモをとりました。

どういう話の聞き方をするか?
伝わってくる礼儀礼節を感じることが会社訪問の醍醐味です。

例えば石坂さんが違う業態に行ったとします。
チームが行ったときにどんな働きをするんだろうな?
どこにいってもすごい仕事をやるかもしれないと簡単にシミュレーションできます。

伊奈食品の塚越会長が「まいったな」と言いました。
石坂さんが別の業態に行った場合のことを瞬時にシミュレーションして「まいったな」という言葉が出てきたのです。

自分のやってる仕事だけでなく、違う業界では自分はどうなんだろう?
価値を作り出せるかどうかそういう事を考えてみると陰と陽が見えてきます。
善と悪ではありません。

人間には良識がありますが、同じだけのエネルギーの欲があります。
欲が良識を押し上げるエネルギーになるとは限りません

例えばホテルで動物愛護協会がコンベンションをやりました。
分厚いステーキ食べながら上映されているDVDはクジラを殺してる現場で酷いことだと憤っています。

善と悪ではなく陰と陽で考えるのです。

おもてなし企業の講演会で埼玉で石坂さんが話されました。
その後開催された日比谷では一緒に聞いていましたが、そこで建設業界の解体の話が出ました。
そこで出た質問を昨日行った住宅メーカーの勉強会でしてみました。

解体とはなんですか?
解体にこめる想いとはなんですか?

誰も答えられませんでした。
答えは「見ていてつらい」という事です。

住んでいた家を壊すという事は思い出を壊すこと。

都田建設さんでは思い出を永遠に閉じ込めるためのプロセスを取っています。

建て替えのために家を解体する前に家中のあらゆるところを3000枚写真に撮ります。
そこには柱にできた傷なども含まれています。それが終わってから解体に入るのです。

解体の時、家主さんには寂しさ、つらさもあります。
新しい家が出来て引き渡しの時に写真のDVDもお渡しします。
家主さんはそのDVDを見ながら号泣したりして思い出が浸透していくのです。

どういう人に解体して欲しいか?
自分の中に思い出ができる、一緒にストーリーを作っていくことで次のプロセスに進めるのです。

世の中の多くの人はそこで終わっていますが、その先のプロセスがあるのです。

石坂社長の苦労の容量はものすごいだろうと思いますが、そこに垢を感じません。
苦労がにじみ出ないのがすごいことです。
自分に置き換えてシミュレーションしても石坂産業をこのようには出来ないだろうと思います。

行政も今では石坂産業さんに応えはじめています。
こういうのも能力、魅力だと思います。
社員にとっても大事な資産ではないでしょうか?

どういう人についていきたいか?
部下は上司には格好いい人であって欲しいと考えています。
一つの財産になるのでは?

リッツ・カールトンの創業者であるホルスト・シュルツィは貧しい家庭に生まれ、学費を稼ぐためにコーヒーショップでバイトを始めました。そこで一生懸命頑張っていると現場の人に認められ、ウエイターくらいにはなれるかもしれないからホテルスクールへいってはどうか?と薦められました。

そうしてホテルのウェイターの仕事をしていく中で世の中の見方が変わりました。人を見るようになったのです。正確に言うと人間の陰と陽を見極めるということです。

ウェイターである自分たちはお客様のサーバントだと思っている中で、お客様と目線が変わらない一人だけ対等な人がいたのです。

それがメートルディ。ワインの相談などを受けている人です。

一体自分と何が違うのか?

メートルディはお客様を紳士淑女として見ていて、お客様もメートルディは紳士淑女として見ていたのです。我々も紳士淑女であるべきだと彼はホテルスクールの卒業論文に書きました。

15歳のシュルツィがホテルマンとして生まれた瞬間です。

その後シュルツィはホテルマンとしていくつかのホテルで働くことになりますが、どこにいっても実感としてそのように感じることはありませんでした。ある日、新しいホテルを作るが一緒にやらないか?と声をかけられリッツカールトンの創業社長としてシュルツィが封印していた想いを形にする機会がやってきます。

仕事というのは海外でも日本で原理原則は変わりません。

時間軸との調整です。
なにが変わらないのか。不易流行。
シンプルになっていくのです。

石坂産業さんの本当のすごさはプラントでも働く人でもなく、ここにやってくる業者さんを見ないとわかりません。普通、トラックの運転手さんは挨拶をしても返さないものですが、ここにくる業者さんはみんな礼儀正しいのです。

仕事の本質とはなんでしょうか?

誇り  喜び
プライドアンドジョイだと思います。

仕事のプロとしてみんかなにか人の役にたっているのです。

でも、多くの場合自分の可能性に蓋をしてしまっています。
「思」という文字を思い浮かべてください。

4割の社員が新社長の方針についていけないと辞めてしまいました。
それでも残った6割の社員と一緒に運んでくる業者さんに対して自分たちの理念を一緒にやってくれませんか?と働きかけたのです。

リッツカールトンでも取引先の会社さんとオリエンテーションをやっていますが全然違います。
自分だったらここまですることができずに諦めたいんじゃないか?と思います。

「思」という文字から蓋をとると「志」に変わります。

リーダーの思いが蓋を取るのです。

先ほど、石坂社長が「捨て場」に運んでいくという表現を変えようと思ったと話されました。
自分たちがやってることを本気で考えたことでプライド、喜びとして作ってくれるパートナーがうまれたのです。

分かっている!

「分かっている」と「志」が組み合わさるとその効果はかけ算になります。

努力、可能性は無限大で思わぬ形で成長していくものです。

目に見えない部分の何を感じ取るか?
社員がどれだけ自分たちが大切にされているか?
業者さんに対して真摯に向き合っているかが誇りなのです。

どんなにきれい事を言っても社会的強者と弱者はいます。
これを無くすことは不可能です。

でもこれを強弱で捉えることはどうなのでしょうか?強弱では優劣を捉えないのです。

例えばホーキンス博士は素晴らしい方です。乙武さんもいつもお会いするとなぜそんなに明るい?のと聞いてしまいます。

優れた人と強弱は違うのです。

課題は「本人がそれをどう捉えるか?」「重たい蓋をどうとってあげるか?」そこにあります。本人も含め、その人たちの志にどこまで近づけるか、複雑になるものをいかにシンプルにするかが百年塾です。

陰と陽の話でもう一つ、命を大切にしているということがあります。
命をキーワードに共通項があるのでは?と思いました。

神戸の震災のあと、おばあちゃんが美容師さんに髪を整えてもらって化粧したときに笑顔が生まれたといいます。これは東北の震災の時も同じでした。

同じように持っている感性はあるんだろうな?と感じました。
そこに気がついたか?気がついたらどうするか?

何を感じるのか?
何をするのか?

いい会社について考えてみる視点です。

今日は石坂産業さんの何が素晴らしいのか?
ゆっくり熟成させて考えてみてください。

縦軸に24時間、横軸に人生の80年をおいたとします。
そうすると22歳から60歳まで、9時から17時までというのは仕事にささげる時間にあたります。

これは「人生のど真ん中の時間」なんです。
ど真ん中の時間をどう過ごすのか?

自分の人生のセンターピンを撃ちぬく働き方をしてるでしょうか?

自分は長野の市長選挙に出馬するために大好きだったホテルを辞めましたが未練はあっても後悔はありませんでした。後悔がなかったことでやめる決心をすることができました。

ここにいる多くの方は指導する立場にあると思います。

私は12年計画を立てています。
そして私の師匠である力石寛夫先生も84歳まで正しく日本の食を伝える活動をしようと12年計画をたてています。

インプット症候群の方がいらっしゃいます。どこに行ってもまたお会いしましたねといいますが、いい話を聞いたとインプットばかりして実践に移そうとしない人です。
大事なのはアウトプットすることです。

百年塾に参加されている中に保険の営業をやってる方がいらっしゃいました。いつも誰よりもメモをとっていたのですがその方の素晴らしいのは話を聞いた次の日には実行に移していたところにあります。

人が面倒がってやらないことをやればいい

コツコツと学んだことを仕事にフィードバックした結果、8ヵ月で売上は32%アップしたそうです。それも嬉しいのですが、一番嬉しかったのは社員が元気になったということだそうです。
業績が悪く社員の雰囲気も悪かったところに、今度はこんなことをやってみようと社長が提案してくるようになったので最初は悪い宗教でもに入ったのか?と思われたそうですが8ヶ月続けたことで社員も社風も変わったのです。

お客さんはやって欲しいことについて明確なメッセージを持っています。
そして、それを聞いてくれる人が出てくることを渇望しているのです。