竹川美奈子さんのバンガード視察ツアー報告会に参加しました ― 2012年10月26日
バンガード本社はペンシルバニア州フィラデルフィアの郊外にある。
敷地は東京ドーム25個分。ボーグルさんは船が好きで必ずどのビルにも船の模型などが飾ってある。
また、建物の名前は船の名前がついている。
社員が外を掃除はしていなかったが、伊那食品工業のようだと感じた。
一緒に行ったカン・チュンドさんは群馬の製造業の工場のようだと。
バンガードグッズを販売するバンガードショップがあり、結構高かった。
どこが低コストだ!と思ったが、外部の人向けに販売しているのではなく、社員向けに販売しているものということだった。
バンガードでは勤続年数の長い社員が多い。
理念を理解していて自分がそれに沿った役割を担っていると理解して行動している。
顧客に対してメッセージを伝えるのが大事。
バンガードがベストだと信じているから親や知人にも薦められる。
今売れるものではなく、10年20年必要とされるものを提供する。
顧客優先の考え方。
徹底したコスト削減。
ウェリントンからスピンオフして設立してから80ヶ月資産が流出し続けた。
2000億円あったのが底では480億円まで減っていた。
立ち直りのきっかけになったのはマスコミなどが検証してみたら意外にパフォーマンスが良かったことに始まる。検証記事で徐々に評価が高まり、今ではスケールメリットを出せるまでに育った。
ファンドがバンガードの株式を保有しているという特殊な構造。
すると、株主のため=ファンドに投資している投資家のためになり、利害が一致する
ファンドが株主というのは世界では他にオランダのロデコがあったが、なくなってしまった
今ではバンガードだけ
【販売チャネルについて】
バンガードというと直販ノーロードというイメージがあるが現在は違っている。
DC,DBの年金関係が30%、IFA経由での販売が23%、残りの47%が直販。
半分以上は外販。
【徹底したコスト削減】
投資家とのコンタクトはWebや電話を重視している。
日本の直販投信はリアルコミュニケーションを重視しているが、ここは違い。
とにかくWebに誘導してコストを下げる。ITには予算の三割を割り当てている。
個人投資家の90%はオンライン経由でのつながり。
今では電話は1日30本くらい。
ニュースレターの開封率が25-30%と高いのも特徴。
ファンが多いから?
販売会社に手数料(コミッション)を払わない
アメリカではFAは顧客資産に応じたフィーでもできるようになった事で顧客と利害が一致。
かつてはジョン・ボーグルがFAを嫌っていた。「コミッションを払うFAは犯罪者だ」とまで。
FAがコミッションを取っている時代、バンガードのファンドはなかなか売れなかった
そこでバンガードは顧客とFAがの利害関係を訴えた。顧客資産を増やすことに専念させる。相場にぶれが生じるので安定した運用を。
広告宣伝費をあまり使わない。
ネットプロモータースコアが高い。
あなたは友人や家族に勧めますか?10~0までの11段階評価で10,9の合計から6~0までのスコアをマイナスする。
マイナスになる企業が多いなかバンガードはプラス。
富裕層だと80%が10,9を出す高い満足度。
目論見書などの印刷から発送まで自社工場でオートメーションで行なっている。
中は日本の工場っぽい雰囲気。壁には「改善」と日本語で書かれている。
自社ですることで外注するよりも30~40%コストダウンできる
発送する際も事前に宛先を仕分ける事で7.5セント割引を受けている。
とにかく、細かいところまで徹底的にコストを削減する
改善サイトがイントラネットにある
1年で5つ改善が採用されたら「先生」 3つで「先輩」1つで「後輩」。
日本語で。1つ採用されたら後輩に格下げされるのは不思議だが(笑)
2008年のニューヨーカー誌がきっかけ
他にも貸株利益を他社は半分自社に付け替えているのを全てファンドに還元したりしている。
2兆ドルの資産があっても細かいところでコストを削る
バンガードでは低コストではなくアットコスト(適正なコスト)と呼んでいる。
所有構造とスケールメリットについて
株主がファンドのため実費主義
他者と違って無理して下げている訳ではない
そのため、アットコストという呼び方になる
【顧客向けサービス】
投資家を投資資産に応じてセグメント分けしている
5万ドル以下 コア
5万ドル~50万ドル
50万ドル~100万ドル
100万ドル以上 フラッグシップ
100万ドル以上のフラッグシップも3段階に分類
500万ドル未満
500万ドル~1000万ドル
1000万ドル以上
担当者がついているが対応はあくまでも電話とWeb。対面ではない。
主にポートフォリオマネジメントや節税についての相談にのる
担当者は経験が長い人が担当する
社員にはサラリーのみとし、担当する金額による競争はさせていない
給料は安いがリストラはしていないし、バンガードが好きな社員が多い
サービスはいまいちという声に対して2009年から改善している
以前は理論にかなった話をしていたが、エモーショナルなナビゲーションにシフトして満足度が向上した。
家族の話を聞いたりもする。
しかし、95%はWeb
FPサービスは5年前から開始。これも試行錯誤しながら。
最初は30ページ以上の調査 200問以上の質問をしたが、顧客から不評で失敗だった。
今はもっとスマートに。
バンガード単独の顧客というのは少ないため、他社の資産を含めた全体での相談も受ける。
【FA向けサービス】
FAに向けて積極的に情報公開している
9月は10回開催。
ファンドの情報開示は年に2回が法律で定められているが、バンガードでは四半期に一回開示している。
【ETFについて】
DCのターゲットデートファンドとETFは伸びしろがあると考えている。
バンガードに対してETFを作るよう指数プロバイダーから誘いはあったがのらなかった。
参入前の懸念事項は既存のインデックス・ファンドと食い合いするか? また、ETFは頻繁に売買してしまう特徴があること。7年間慎重に検討した結果参入した。
バンガードのETFはインデックスファンドのシェアクラスの一つとして作っているので安いコストで出来る
この仕組は特許も取っている。
インターナショナルボンドなどの分野でアクティブETFも検討中。
インデックスファンドとの食い合いは起こっていない。
なぜならパイが広がっているのと顧客層が違うため。
直販の顧客(コア層)はインデックスファンド。
フラッグシップ層はアドバイザー経由でETFを購入する
アメリカではIFA用にポートフォリオアドバイスツールがあり、ポートフォリオをバンガードのETFで構成することができる。
海外ETF含めると世界で4位の規模。
新製品の開発を続けている。
例えば新しい国に進出した場合や既存のものを新しい形で発展させる。
顧客には一定期間よりも短く売買しないようにお願いしている。
ポートフォリオマネージャ10名 10年くらい担当している。
どこの国のオフィスでも人数が少ない。
【インデックス運用について】
バンガードでは時価総額加重しかインデックスと呼ばない。
いいインデックスはほとんどマーケットキャップ
ファンドマネージャーの話。
エマージングの運用は大変。
例えば、ブラジルレアルでは購入時にチャージがかかる。
ADR買うと値が高くなるため、現地の株と比較して安い方を。また現地で売買するのとADRを利用するとので取引所が閉まる時間も異なるため、トラッキングエラーを考えながら運用している。
インデックスファンドはコンセプトは簡単だが、運用はキャッシュフロー的な問題もあり難しい。
【ターゲットデートファンド】
当初株式90%、債券10%のポートフォリオでスタートし、年齢は41歳から債券の比率を徐々に高める。
41歳から毎年1.8%ずつ債券を増やしていき、60歳からは年3.6%ずつ債券を増やす。
すると70歳で株式30%、債券70%になる。
毎週リバランスしている。
エクスペンスレシオは0.19%
アメリカにおける確定拠出年金のシェアトップはフィデリティ。バンガードは二位。
バンガードでも相場による影響を受けるが確定拠出年金は安定して入金があるのでありがたい存在。
【バンガードQ&A】
Q.リバランスはどうしたらいいか?
A.年に二回レビューし、必要であれば行う
市場にショックが起きた場合には顧客とコンタクトをとるようにしている。
話している内容はアロケーションを守るようにと。
こういったサービスは他社もやっている
顧客へのアドバイスを行うCFPは180名抱えている
Q.老後にお金を引き出すアドバイスはどうしているか?
A.基本的に定率引き出しを勧める。
自動解約ファンドもある
Q.なぜバンガードではアクティブ株式は外部のサブアドバイザーを利用しているのか?
A.外注の方がコストが安いのと、悪いファンドマネージャーに当たった場合、外部の方が選定し直しやすいため。
Q.なぜバンガードがアクティブ運用を採用している?
A.スピンオフする前のウェリントンはアクティブ運用だった。また、色んなクライアントがいるので顧客のニーズに応えた結果。
Q.フラッグシップサービスはフィーを取るのか?
A.下の層は有料サービス。上位層は無償サービス。
【竹川美奈子さんが見たバンガード】
社員のモチベーションがすごい。
運用理念に誇りを持ち、いい会社だと思っている。
ファンドがオーナーであることに不安はないか?と聞いたら自分は親や親しい人に薦めている。そういった総意で運営されているなら素晴らしいことと答えていた。
また、社員間でもギスギスしていない。長く働ける安心感もあるのかも。
食事の時などに若手社員の話なども聞いたが、悪い話は出なかった。
社内インターンシップ制度があり、自分に合わないと思ったら他の部門の仕事をインターンシップで体験することができる。双方合意すれば異動することもできる。
これにより、離職率も抑えられているのでは?通訳してくれた日本人スタッフも社内インターンシップで異動していた。
田舎の古きよき製造業のような印象をもった。
印刷工場などでも自分の仕事を見てくれ!という人が多い。
気さくで、自分の仕事に誇りを持っていると感じた。
ウェリントンからスピンオフした時、純資産2000億円からスタートして80ヶ月減り続けても480億円という違いはある。日本の場合はセゾン投信が5年増え続けて500億円。
みんなで助けあうという雰囲気がある。
コールセンターでもスイスアーミーの旗が置いてあって、それをあげると誰かが助ける仕組み。
まず運用哲学があって、その商品をどう売るか?ではないか。
最近のコメント