伊那経営フォーラム2013 第一部 講演「いい会社、いいまちを!」塚越寛氏2013年06月23日

6月15日(土)に伊那文化センターで伊那経営フォーラムが開催されました。



第九回伊那経営フォーラム
テーマ  :「未来を創るリーダーシップ ~動き出す勇気、やり続けるハート~」
日 時  :2013年6月15日(土) 11:00〜17:00
場 所  :長野県伊那文化会館大ホール
主 催  :伊那経営フォーラム実行委員会
内 容  :第一部 講演「いい会社、いいまちを!」
       伊那食品工業 代表取締役会長 塚越寛氏
      第二部 講演「あなたの中のリーダーへ」
       元・世界銀行副総裁 ソフィアバンク・パートナー 西水美恵子氏
      第三部 公開対談「リーダーのあるべき姿」
        伊那食品工業 代表取締役会長 塚越寛氏
        元・世界銀行副総裁 ソフィアバンク・パートナー 西水美恵子氏
       コーディネーター
        ヤマオコーポレーション代表取締役 NPO法人茨城経営品質協議会代表理事 鬼澤慎人氏

伊那をダボスのようにしたい、経営品質のメッカにしたいという思いで開催されて今年で9回目になる伊那経営フォーラムに初参加してきました。毎年、伊那に集まって経営品質について考えている人が勉強する場になっています。いい会社の代表例である伊那食品工業の塚越会長のお話が聴けるというのと、先日東京でも講演をお聞きしてかなり衝撃を受けた西水さんが講演、対談されるという事で楽しみにしていました。

塚越会長のお話では社員を大切にして毎年少しずつでも成長することが企業を永続させるための仕組みというのを聞いて、自分が以前投資していたジョンソン・エンド・ジョンソンを思い出しました。
また、自分、世の中、相手の三方よしに将来を追加した四方よしというのも自分にとってはしっくり来ました。自分が行なっている投資も次世代の事を意識して少しでも世の中をいい状態で引き継ぎたいという想いを込めています。仏教やキリスト教は時代遅れと言われないという言葉にも長く生き残った考え方にこそ人間としての生き方の大事な軸があるんだなと気付かされました。

とてもいいお話でしたのでフォーラムの最後に「いい会社をつくりましょう」を買って帰りました。
帯には「永続こそ、企業の最大価値」とありますが本当にそう思います。

 
第一部 講演 いい会社、いいまちを! 伊那食品工業 代表取締役会長 塚越寛氏

自分がいなくなった後に経営理念を残す為、社員向けに非売品のつもりで書いたところ出版社からぜひ売って欲しいと言われて販売する事にしました。(『いい会社をつくりましょう』)自惚れて言うと10年以上売れているということはあまり変わらないいいことが書いてあるのではないでしょうか。基本的なことは変えなくてもいいのではないかと思います。

経営と街づくりは関係しています。いい会社をいい街と読み替えていただければ良いと思います。伊那食品工業の経営の特徴はとにかく安定させようとすることにあります。不安のない経営を社員に対してしてあげたいと思っています。会社を大きく成長させる有名な経営者には女々しい事をと思われると思いますが、これまで社員を大切にしてやってきたのが一つの評価につながったのです。

先日、松本に行って平日の昼間であまり人通りのない道を歩いていると少しでも街を美しくしようと花を植えたりしている人がいました。誰が見ているとか誰に訴えようとしているのではなく自分の故郷をよくしようとしている素晴らしい行動です。市長とも話しましたが、伊那もばら祭りが盛んになってきました。各店がバラを育てるようになり、大勢の人を巻き込んで特徴ある街にしようと短期間に広がった証拠です。このように、みんなでやると大きな運動になります。それでも価値観の違いがあり、自分の店の目の前であっても公道だからと草一本むしらない人もいます。問題はこういうところに来ない人にあるのです。




■ 人様に迷惑をかけないこと

終戦の年、私が8歳の時に父親が亡くなりました。終戦直後といえばどんなお金持ちであっても苦労した時期で、残された母親は子供をかかえて生活保護を受けていましたが、その事を非常に恥ずかしいと思っていました。生活保護を受けていることをひた隠しにしていて、私は生活保護を受けちゃいかんと子供心に思いました。そんな母親が私たち子供に言ってきかせた言葉が私のバックボーンになっています。

 後家の子供は三文やすいと言われるでなあ
 ぼろは銃後の勲章だ
 上見れば我より勝る者多し、傘取りてみよ、天の高さを。 下見れば我より勝る者はなし、蓑着て暮らせ、己が心を

子供にはあまりうるさく言わなくてよく、ただ一つ人様に迷惑をかけないような生き方をするように育てるとよいのです。人に迷惑をかけない、そのことを思えばやることが見えてくるようになります。

会社経営でも人様に絶対に迷惑をかけないようにしています。しかし、伊那食品も最初の20年くらいは迷惑をかけっぱなしで有名な公害企業でした。当時は伊那信用金庫に管理された銀行管理の会社でしたがそれでも社員の生活を保障しないといけませんし、会社も立ち上げないといけませんでした。工場の隣を流れる川に寒天のかすを流し、それが土手になって川をふさいでいるのもそのままにし、 梅雨の時期になると天竜川に流れて行って良かったと話すような会社でした。まさに貧すれば鈍するの状態です。

私が学生の頃、生活保護をうけている家庭では高校に行ってはいけない事になっていた為、私も普通では高校に進学することはできなかったのですが、先生の養子になったという体裁にしてくださり高校に進学することができました。しかし、伊那北高校の2年生の時肺結核にかかり、そこから3年間の闘病生活を駒ヶ根の隔離病棟で送ることになります。結核は伝染するという事で友人もお見舞いに来なくなり、身長が15cm伸びた思春期を隔離病棟で過ごすことになりました。

入院中、友達が進学していくのがうらやましいのと窓の外に見える池の縁を歩く人を見て「いいなあ幸せだなあ」と感じていました。外を歩けることは当たり前に感じるでしょうが、本当に幸せなことであると日光の下を歩けない病人からしたら思ったのです。それから健康である幸せ、外を歩ける幸せを実感し、その後の人生を決定づけました。

幸せという言葉ほど大事なことはありません。すべての人は幸せを求めて生きています。会社も利益だして幸せになることを求めて経営されています。すべての役所はみんなの幸せを求めている・・・かどうかは知りません。この世の中は人間が快適で便利に暮らすように出来ています。しかし、人間の営みの大きなものである会社が考えてみると多くの不幸せを作っているのです。

■ 倒産しない会社をつくろう

大手企業の工場閉鎖で伊那地方も騒がれています。120名が失業することになと思いますが、120人には120人のドラマ、生活があるのです。娘が結婚する、家を新築するなど、そこに想いを馳せれば簡単に工場の移転や閉鎖はできないはずです。伊那食品工業では幸せの順位にこだわっています。みんなの幸せを少しでもふやせるように。社員が幸せになれば地域にもいいことがあるだろうと少しずつ取り組んでいます。

退院して材木会社で1年働きました。私は働けることの嬉しさを感じ、他人とは違う働きをしていました。すると「今、親戚につぶれそうな会社がある。お前が行って好きなようにやっていいからやってくれ。」と経営再建を頼まれたのが伊那化学寒天株式会社でした。社長代行という肩書きで入社し、まずは寒天の会社なのに化学が付いているという変な社名をすぐに変え、夢中で経営を立て直しました。そんな中、一緒に働く人にとっても夢や使命がないといけないと気づき、夢はなんだろう?なにを楽しみに働いているんだろう?と考えるようになりました。

会社を少しでも快適に働きやすい環境にするのが社員にとってもいい事だろうと長い間にすこしずつ改良してきました。また、ちょっとでもお金をかけずに自分たちで直そうとしています。おかげで色々な知恵がつき、仲間の結束が強くなりました。10時と3時にお茶菓子タイムがありますが、これも単純作業から社員を開放させる意味があります。仕事もローテーションさせ、生産設備もよくなっていきました。そうして入社してから20年後には業界でも知られる会社になってきました。

夢中でやってきた20年でしたが今後も安定した経営をしていこうと。会社は大きくなるより社員にとって幸せなのは安心して定年を迎えられるように安定していることではないのか?と考えるようになりました。社員にとって一番不幸なことはなにか?と言ったらそれは倒産です。働く場所がなくなり、これまでやってきた事が水の泡になるのです。倒産しない会社を作ろう、それが経営思想になりました。登ったり降りたりするより安定していた方がいい。

会社経営にもいろんな価値観があります。大きくしたりなるべく利益を出すのが目的だったり、豪邸に住んだりや外車を買ったりするのを目指す価値観もあります。しかし、手段を間違うと世の中に多大な迷惑をかけることになるのです。永続するためには急成長をしてはいけません。小さいうちは急成長もいいけれども、大体のパイが決まっている分野で急成長するという事は誰かが伸びた分誰かが縮むことになるのです。

かんてんぱぱガーデンではレストランも夜の営業はしていません。本当は夜も営業した方が経営的にはバランスが取れるのですが伊那市の仕事を奪わないようにしています。大きくなるととかくバランスを崩しがちですが、バランス経営を心がけています。企業規模にふさわしい、市にふさわしいバランスというものがあります。

■ 成長について

哲学なき時代と言われていますが言葉が一人歩きしていて本来の意味を理解していないように思います。成長と言った時、99%の方にとって成長とは売り上げが増えることを意味します。果たしてそうでしょうか?

私の場合、売上高はあまり意識していません。大事なのは中身です。去年よりいいね。掃除がいきとどくようになったね。社員の笑顔がふえたね。と言ってもらえることが会社の成長です。街づくりにおいては去年より住みよくなったね、なんか気持ちよくなったねというのが成長にあたります。

成長は自然現象です。毎年何か良くなって欲しいと思っています。人間も地球にたかったカビみたいなものです。人間は自然物と考えると会社経営も自然体がいいねという事になります。あまり自然から離れすぎると地球温暖化だけでなく異常気象も誘発してしまいます。

手段と目的を間違えてはいけません。どんな行動にも目的があります。やることが目的になっていると、終わるとやれやれと思ってそこで終わってしまいます。みんなに協力してもらおうというのは池上さんに教えていただきました。利益は手段であり、目的はみんながハッピーになることです。利益が目的になると今さえよければいいという事になり、クビ切りなどもするようになります。


■ 教育の大切さ

知識をつめこむために学校教育があるのではありません。知識は手段であり、人様に迷惑をかけないようにする、できたら少しでも人様のお役にたつことをしようという人間教育が目的です。

地元の倒産した会社を2つ買いました。空き家のままだと治安上よくないため多目的ホールに作り直しました。新しく立て直して作ると社員も綺麗な建屋で働けてうれしいものです。街にとってもいい面があります。倒産する会社というのは土地が道のほうに押し出しているものです。結果的に道が狭くて使いづらくなっています。土地に執着せず、なるべく自分の土地を削ってでも道を広くすると本当に都合がいいものです。なんとなくいい、使いいいというのは大切です。

お客様の目に留まるところは始業の30分前に社員が自発的に集まって掃除してくれています。おかげで敷地内は本当にきれいになっています。山に近い部分は年に2回くらい掃除をするのですが、それはみんなでお祭りのようにやっています。最近では終わった後にビールは飲まなくなりましたが、みんなでやる楽しさ、群集心理というものがあるのです。

自分の店の前であっても公の道は雑草をとらない人が多いです。雑草が最高に醜いと思います。たまに会社周辺の雑草をとったりしていますが街をきれいにする事も習慣すると楽しいものです。女性が高所作業者をやりたいと免許を取りに行った事がわかったので後で免許取得に対して手当を出したりもしています。

なぜそんなにやる気がでるのですか?という質問をうける事があります。決まって答えるのは運命共同体ですから喜びも悲しみも一緒になるという事です。会社はファミリーです。会社の成長はみんなの幸せ。会社と個人資産を分ける中小企業が多いですが一緒にしてこそ真剣に取り組むようになります。会社が安定なら自分も安定という全部をそそぎ込んで運命共同体になる必要があります。

大手が外国に進出していますが社員の給料は伸びていません。それでは社員は会社の成長に対して関心を持ちません。会社が成長したら自分たちに跳ね返ってくるのが会社経営の要諦ではないでしょうか。


■ 社員の幸せのために

福利厚生にも力を入れています。たまに恩に着せて「うちだけだぞ」と言っていますが(笑)社員にはがん保険の他生命保険にも加入していて42年前から2年に一回海外旅行にも行っています。こんなに喜ぶなら続けようと約束して、ただ毎年は厳しいので2年に1回の海外旅行を21回続けています。それも会社が確実に徐々に上向いているからできることです。

環境問題がやかましくなり、アイドリング防止、マイカー通勤をやめようという流れもありますが伊那の土地柄を考えるとマイカー通勤をやめるのも現実的ではないし、冬は出勤前にアイドリングが必要です。そこで、地球に優しくする仕組みとして屋根のある車庫を作った社員に対して7万円の手当を出すようにしました。屋根つきの車庫に入れておけば朝、すぐにエンジンをかけてでかけられます。

利益を出すのが目的ではなく環境や人をよくすることを目的としています。かんてんぱぱガーデンには樹齢70年の松が700本ありますが、松林も大事にしています。松林はありそうで意外に人間の通る道沿いには少ないのです。害虫駆除も3年に一回続けていて近くにあった松林は全滅しましたがかんてんぱぱガーデンの松は今も元気です。松くい虫の駆除に300万円ももったいないねと言われることもありますが、何の為に利益を出すんですか?という話です。利益を法人税として納めるだけでなく、そういうところにこそ使うものだと思います。そうしてめぐりめぐって収まるようになるのです。

世間では人件費を削ってでも利益を増やそうとしていますが諸外国は日本ほど極端ではないように思います。例えばヨーロッパでは土日はしっかりと休みます。生活や幸せを重視する哲学が根付いているからです。人生は働くためにあるんじゃない。幸せを求めるのが社会であり人生の本当の目的なのです。

「銀座のバーもTQC」というくらいにTQCという言葉が昔流行りました。何をするかと言うと、電気を消して真っ暗な食堂で黙々と昼食を食べるんです。生産と関係ないところでお金をかけませんと言って利益を生み出すために食堂の電気を消したのです。それで社員は幸せを感じますか?生産性を向上させるためにパートがいい、派遣社員がいいという話も似たような話です。


■ 感動づくり

トヨタ自動車で講演させていただく機会がありました。トヨタは蓼科に聖光寺という菩提寺を持っています。自動車の商売は不幸にして交通事故で亡くなる人を生み出しています。それに責任を感じたトヨタはお寺をつくり、薬師寺からお坊さんを呼んで自動車安全運転祈願をやっていますが世間では知られていない素晴らしい取り組みです。毎年7月18日に会社のトップが全員集まって喪服で供養している姿を見た時、日本人の陰徳、陰で徳を積む姿をそこに感じました。グローバル企業は陰徳が大事ですが、世界に羽ばたくのであれば世間に言ったらどうですか?と私は申し上げました。そして公用車をトヨタに変えるように指示をしました。想いに感動したらそれに応えるのです。値段ではありません。

ファンづくり、感動づくりが大切です。品質や広告も大事ですが、社員のために会社を安定させたいと思うと楽隠居できません。経営陣に対してもがんばれよと活をいれています。永続するためには同じ事をやっていてもだめです。常に改革が必要なのです。踏襲するのは仕事ではありません。それだけならバカでもできるからです。もっと市民のためになるようなことはないのかと真剣に考える風土が必要です。

知らしめないとだめ。知らせるでは足りません。そこで、テクニック使います。直接話すことはとても大切です。本を読んで得るのと直接話すのでは得るものが違います。そこで、社員のためにいつでも話ができるような会場を用意しました。 ビデオも使って遠隔地の社員に対してもなるべく回数を多く話すようにしています。


■ 目指すべき方向をわかりやすく共有する

同じことを繰り返し言うことで徹底できるようになります。ただ、全く同じことを言っていてはだめです。直接的に掃除しましょうっていっても伝わらないので例え話をうまくする必要があります。他には自分が見てきた話に変えて話すことも効果的です。ホテルに泊まった時、聖書と仏教の2冊の本がありますね。皆さん、あの本をぜひめくって読んでみてください。宗教がどうだというのではなく、全部例え話で書かれています。例え話だと人間はよく理解できるからです。

狼少年の話はイソップ物語に書かれていますが、イソップ物語は選りすぐりの例え話です。それがどうして消えていったのでしょう?私が子供のころは国語や道徳も例え話が主流でした。例え話をしてあげるとわかりやすいのです。例え話の代わりに実例をあげてもいいでしょう。

社是は「いい会社をつくりましょう」です。いい会社というのはどういう会社の事なのか定義が必要です。私は「会社を取り巻く全ての人が日常会話の中でいい会社だねと言ってくれること」だと思います。街づくりに変えると「いい街をつくりましょう」になります。これを私なりに定義すると「単に景観や設備がいいだけというだけでなく みんなが住みよいと実感し自発的に美化につとめ市民全員が幸せを感じられるように協力しあう」になります。

社是は社是カードにして社員全員に配り、社員も諳んじることができます。そこまで浸透して実行できるのです。J&Jという会社にクレドがあります。カルビーの松本社長はJ&Jの東京支社長やってた方で世界有数の大きく立派な会社を経営されていました。そして今、カルビーにその文化を持ち込んでいます。

会社がすすむべき道を示すようにみんなに我が街の進むべき道を知らしめる努力をするといいのではないか?と思います。伊那谷が残雪がきれいです。初夏に残雪が見られる地域というのはアジアにはあまりありません。これは立派な資源であり、すばらしい景観をどう生かしていくか?考える必要があります。私は20年前から伊那谷のファンを増やしたい想いから伊那谷の風景を写真に撮ってカレンダーにして配るようにしています。今ではお会いしたお客さまや通信販売のお客さま宛に10万部刷らないと間に合わないくらいになり、製作費も千数百万円かかっています。結構な出費ですがこれは続けています。想いがあるから受け取った方も評価してくれるのです。


■ 景観について

かんてんぱぱガーデンには電線、電柱がありません。世界的に見ても日本の電線、電柱は見苦しいと思います。これからの国づくりを考えた時、建設業者はこれをやってはどうでしょうか?電線の地中化は電力会社の仕事と考えるのではなく、お互いにできることをやりましょう。ものづくり大国が終わった後、観光立県、観光立国を目指すことになると思います。その時、受け入れ体制があればアジアから人がやってくると思います。

まず手をつけることが大事と考え、ガーデンの中の電線を地中化しました。自分の敷地内であればそんなに費用はかかりませんでした。例えばドイツには洗濯物は外に干してはいけないという取り決めがあります。そのために、アパートには相応の設備があるんだろうと思いますが先進国で日本はドイツに負けてないと思っているかもしれないが遙かに遅れています。美観に関しては恥ずかしいと思います。日本は北欧の先進国に学ばないといけません。住環境についても例えばオーストラリアやアメリカは自分の家の庭の芝生を刈らないと近所から苦情が来ます。コミュニティへの美意識という点で日本は遅れているのです。

海外旅行に行ってやっぱり日本がいいねと言う人は一体何をを見ているのでしょうか。スイスにも学ぶことがたくさんあります。いいことはマネすればいいのです。そうすれば観光も盛んになることでしょう。

J・Fケネディは言いました。国家が何かをしてくれる時代ではないと。行政に頼るのではなく、自分に何が出来るのか?ささやかですが自分の出来ることをやっています。老朽化したインフラをどうするのか?も今後の日本の抱える問題です。


■ ビジネスは四方よしに

千葉県にユーカリが丘という場所があります。6000戸の街を作った方がおられるのですが、街をいっぺんに作ると多摩ニュータウンのようにいっぺんに老朽化するため毎年200戸しか分譲していません。とても人気があり一気に分譲すれば売れるのにも関わらずそうする事が住民にとっての幸せににつながると、もっと高い理想を持ってやってる人がいるのです。

ビジネスは三方よしと言います。自分も相手も世の中にとっても良いことを言います。私はそこにもう一つ”将来”を加えて四方よしにしようと言っています。時間軸を加えるのです。今だけ良ければというのが世の中にはたくさんありますが、子孫、地球環境のため、ひいては将来のためにという時間軸を入れた後輩への配慮が求められていると思います。

二宮尊徳の遺訓にこうあります。

 人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。
 学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。
 知って行うことを能はざれば、知らざると同じ。
 故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず。
 学をなすもの、必ず道を知らざるべからず。
 道を知るもの、必ず行はざわるべからず。

学びなさい。そして学んだら自分のあるべき姿を知りなさい。あるべき姿を知ったならば行いなさいという教えです。自分の範囲であるべき姿を知り、実行することが大事なのです。しょせん自分は次の時代へのリレーのランナーに過ぎません。次の人が走りやすいようにしておきましょう。

大会社の経営者でも何年か後に誰が名前が残っていますか?人は亡くなるとみんな忘れられていくものです。


■ 質疑応答

Q
ショッピングセンターに勤務しており、地域のことを考えて清掃活動をしています。なかなか積極的に参加してくれないのですがどうしたら楽しく参加できるようになるのでしょうか?

A
自分の都合でやるのは動機が不純です。時間はかかるけれども人間教育をしないといけません。終始一貫ぶれていない行動をし続け、自分の行動からそちらに向けるのです。

Q
人間社会を営む上で他人をコケにする人がいます。仲間意識が強い自衛隊の人にあこがれていますが、同じ人の社会なのに何が違うのでしょうか?公のために働くからなのでしょうか?

A
綿密に計算された愛国心や社会への奉仕の教育がされているからだと思います。すとんと落ちるような教育であれば受けた人が大きく変わります。基礎になるのは学校教育。学校でやるべきなのは人間づくり。進学するために教育すると勘違いしている人がいるから困ります。学校教育を受ける年齢でないと身につかない人間学があります。

いい学校、いい会社に就職するために成績だけいい人は協調性や知恵がなく危険です。人間学を学ぶのが教育のあるべき姿でスキルアップではなく人間学を伊那食品工業ではやっています。どう生きるのかについては森信三さんの本を読んで「人生二度なし」の考えが役にたつのではないでしょうか?

Q
経営者として社員の人生を背負う覚悟を決めた時、「いい会社をつくりましょう」という未来を考えた際のエピソードを聞かせてください

A
私たちの時代は社員を大切にするのは当たり前中の当たり前という世代でした。若い人とはそこが違います。リストラや利益中心といった教育を私たちの世代は受けていません。クビをきるのは恥ずかしい、安売りすることは恥ずかしいという時代です。時代とともに価値観が変わりましたが。

「いい会社をつくりましょう」というのは何かみんなの目標をつくろうとしたものです。山へ登ろうよと言うだけではなく、どの辺?あそこだよ。と明確にすることでモチベーションが変わってきます。中小企業はモチベーションが大事です。