第五回マイクロファイナンスフォーラム(2)講演:澤田康幸氏(東京大学経済学部教授)2013年01月12日

昨年12月16日(日)にNPO法人 Living in Peace主催の第五回マイクロファイナンスフォーラムが開催されました。

日 時:2012年12月16日(日) 14:00〜17:30
場 所:日本財団ビル
主 催:NPO法人Living in Peace (→ 公式HP
Ustream中継:有り アーカイブは こちら でご覧になれます
プログラム:
 ▼第一部(14:00~15:50)
  1.Living in Peace(LIP)理事長、慎泰俊による挨拶(5分)
  2.講演:Stuart Rutherford氏(Safesave創設者)(20分)
  3.講演:澤田康幸氏(東京大学経済学部教授)(20分)
  4.LIPプレゼン「貧困削減効果を巡る学説紹介」(15分)
  5.議論「グループレンディングと貧困削減効果」(50分)

 ▼第二部(16:00~16:30)
  1.マイクロビジネスアワード概要
  2.受賞者のビジネスに関して
  3.受賞者登壇 質疑応答
  4.現地式典、受賞者のビジネストリップ報告

東京大学経済学部教授 澤田康幸氏講演


開発経済学は1950年からあったが、20世紀は地位が低かった。
貧しい理由を机上の空論だけでなく検証できなかったため。
しかし、2000年以降見直されるようになり、MITでも今年博士号を修得する18人中6人が開発経済学。

不完全情報の経済学アプローチにより経済学的にも説明がつくようになった。

1970年代に利子補助融資したが40%の不履行率だったのに無担保で90%返済されるのがおかしいとされた。
なぜ成功したか理論的な理屈づけや実証的、実験的検証がなされなかった。

マイクロファイナンスの返済率はなぜ高いのか?
グループレンディングによる連帯が大切と考えられていた。
毎週行われるミーティングやグループだと借りる側が変な人と組みたくないという事で逆選抜の防止効果、お互いに適正な目的に利用しているか見たり、他人の債務不履行は自分にも不利益になるためグループの中での協力も生まれる。

マイクロファイナンスの効果について計測するため、医薬品の検証で使われるRCTという手法を使ったフィールド実験を行った。

フィリピンでグリーンバンクというMFIを利用している14,000人を対象に実験を行ったもの。
グループレンディングしていた人たちを無作為に個人融資に切り替えたが、返済率に統計的に優位な効果は
見られなかった。

どうやら連帯責任だけで高い返済率が実現されているわけではなさそう。
仮説では、返済すると次回借りられる額が増える前向きのインセンティブが働いているのでは?という事だった。また、毎週ミーティングが開かれるため問題がある人を早期発見できたり、みんなの前で借りたり返したりする心理的効果があるのでは?

マイクロファイナンスの新しい試みとしてインデックス型保険というものがある。
これはマイクロファイナンスの主要顧客である農家の収穫が天候に左右されるため生まれた保険。

降雨量に応じて保険金が支払われる仕組みで干ばつへの対策となる。
平年の半分以下の降水量になると25%の保険金が支払われ、全く降らないと100%の保険金が支払われる。

保険は保険金を支払う前に調査を行ったりしてコストがかさむが、降雨量のような指標に連動して支払うようにすれば調査費用も不要になる。
また、被害認定型と違ってモラルハザードも発生しにくい。

他にはウルトラプアプログラムと呼ばれるマイクロクレジットも利用できない人向けのプログラムや、土地なし農民への融資を収穫期に合わせて返済できるようにするプログラムも。

海外に出稼ぎにいくのをサポートするマイグレーションローンではVISA発行をサポートもしている。

課題:
お金を借りて何をするかが重要

例えば、家を人に貸すビジネスをした人は大きな成功を手にしている。

「高金利はいけない。搾取している。」という声により、上限金利を設定する国も出てきた。
結果、コスト圧縮で毎週から毎月へミーティングの間隔が伸びたり支店閉鎖といった動きも出ている。

有害な面としては日本の連帯責任制度を例に自殺につながるのではという意見もある。
頼母子講も自殺や娘をうったりした過去がある。

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