NPO法人いい会社をふやしましょう 第二回「いい会社の力」シンポジウム(2) パネルディスカッション2013年06月08日

6月1日に開催されたNPO法人いい会社をふやしましょうの第二回シンポジウムの第二部パネルディスカッションです。テラ・ルネッサンスの鬼丸さんとHASUNAの白木さんのお話しは初めてでしたのでとても楽しみにしていました。
皆さん本気のスイッチが入った時に想いから行動に移されていて、まだ行動に移ることができていない自分からすると眩しい方達ばかりです。お話を聞いてとても刺激を受けました。そして自分の中でどうしようかという悩みは深まります・・・。

第二回「いい会社の力」シンポジウム 本物のリーダーシップ
パネルディスカッション:リーダーシップの原点
パネリスト:西水美恵子氏 ソフィアバンク シニア・パートナー/元・世界銀行 副総裁
      鬼丸昌也氏 NPO法人テラ・ルネッサンス創業者
      白木夏子氏 HASUNA Co., Ltd. 代表取締役
      新井和宏氏 鎌倉投信 取締役運用部長
コーディネーター:大久保寛司氏 人と経営研究所 所長
日 時  :2013年6月1日(土) 11:00〜14:20
場 所  :東京大学伊藤謝恩ホール
主 催  :NPO法人 いい会社をふやしましょう(→公式HP

大久保:
最初はまずパネリストの皆さんから順に自己紹介を

新井:
鎌倉投信のキャッチフレーズは「いい会社をふやしましょう」
伊那食品の社是「いい会社をつくりましょう」からいただいたものです。
金融機関としての他にこのNPO法人のような活動も行っています。

銀行や証券会社で販売されるような投資信託を扱っている会社がなぜこのような活動をしているのかについてお話します。

私たちの本社屋は築80年の古民家で2008年11月まさにリーマンショックの直後に産声をあげました。
私たちが目指すのは「日本をあきらめない」これに尽きます。
日本には「いい会社」がたくさんあります。
坂本先生の書かれた『日本でいちばん大切にしたい会社』を読んでこれを私の使命としました。

なぜ本社が古民家なのか?それはつべこべ言わずに日本で大切にしたいものは自分たちでも動くと決めたからです。本社屋の裏には畑があり、山もあります。また、本社は様々なことを伝える場でもあります。

3つの「わ」 和 話 輪 の場所を提供することも鎌倉投信の役割です。
NPO活動含めて22世紀のための投資を行っています。

つながりを大事にしているので受益者総会という対話の場を設けました。
他にもいい会社への訪問(見学)も実施しています。

日本は課題先進国だと思っています。
社会的課題というのは問題ではなく課題である以上解決する必要があります。

投資先の会社としては震災の後、見事な現場力を発揮したヤマトHDや障碍者雇用を本業で行っているエフピコ、更にはトビムシという会社にも投資しています。トビムシは社債の格付けもつかない小さな会社です。でも。格付けを信じてもなんにもならない事をリーマンショックは示しました。大事なことは自分が見たものを信じるという事です。

大久保:
新井さんは二度と戻らないと考えていた金融に帰ってきました。
「数字は真実を語る」というのは嘘。しかし、目の輝きは嘘をつきません。
初めてお会いした時、新井さんの目は輝いていました。

鬼丸:
2001年10月大学4年の時テラ・ルネッサンスを始めました。
国内に8名、海外含めると50名程で活動をしています。
活動地域はウガンダ、コンゴ、カンボジア、岩手。

活動資金の8割は寄付などによって得ています。
私たちは子供兵や被災者の社会復帰、立ち上がるサポートをしています。
なぜできるか?
自分には何もできないから。英語もできないけれども伝えることはできると講演活動から始めました。
自分が何も出来ないと出来る人が寄ってきてくれるんです。支援を受けてくれる人もそうです。
みんなで世界を変えたいのです。「自分が」ではありません。

大久保:
鬼丸さんは21歳で地雷の世界を知り、ウガンダに出かけました。
ウガンダは外務省で危険地域に指定されているところでしたが、鬼丸さんはそこで3つの職業訓練校を作りました。
銃を突き付けられたこともあるそうですが、笑顔で手を振っている人は撃てないものなんですね。だからといってマネはしないでください。
彼だからできたんです。彼には本質があるんです。
何もしていないと話していましたが、その通りに聞いてしまってはダメです。
本当にぼーっとしているだけではこれだけのことはできません。
ぜひ鬼丸さんの人間を感じて欲しい。

白木:
2009年にジュエリーの制作販売をするHASUNAという会社を立ち上げました。
取り扱っているのはエシカルなジュエリーで、エシカルというのは社会と自然環境と人に配慮したという事です。

婚約指輪なども作っていて鬼丸さんもうちのお客様です。
ジュエリーがお客様に届く前、職人さんが作っているのと発展途上国の鉱山で採掘されているという事は知られていますが、その間についてはほとんど知られていません。
鉱山から日本に来るまでがブラックボックス化されていて、その間に密輸や児童労働 紛争など様々な問題が起きています。

南インドにあるタミール州のアウトカーストの村で暮らした事があるのですが、インドにはアウトカーストと呼ばれる人間扱いされない人たちが約1億人います。私がステイしていたのは鉱山労働者の村で、一日中働いてもほとんど賃金はもらえないような状況で5~6歳くらいの子どもも働いていました。
彼らの平均寿命は短かく、過酷な労働条件でした。そこでは雲母や金といった私たち先進国の人の生活を豊かにするものの中に使われている鉱石が採掘されていましたが彼らとのギャップはなんなんだろう?私がやらないといけないんだろうなと思いました。

帰国してからNPOやNGO、国連、更にはビジネスを勉強する中で金融にも身を置きました。
いよいよジュエリーを直接買い付けするという構想を実行に移すにあたってどうしたらいいかわからないので御徒町の卸に行きました。

御徒町に行ってもこれがどこで採れた水晶やルビーなのか知らず、それが常識だという対応でした。
数十円の野菜の生産者の顔が見える一方で値段の高い宝石の生産者が見えないのが疑問視されない業界がおかしいのでは?と感じました。業界の常識にのっとっていては仕入れはできないとNGOなどにいる知人のツテで鉱山のオーナーや職人さんを紹介いただきました。

例えばパキスタンの砂漠民族が採掘で生計をたてていますが、その90%以上は密輸されています。
安く買いたたかれ、中国産、アフガニスタン産として販売されているのです。
現地にいったJICAの方やマイクロファイナンスをやっている知人との縁もあって彼らを紹介してもらい、直接取引ができるようになりました。

イスラム世界で女性が仕事をするのはとても難しいことで、彼女たちには仕事がほとんどありません。
そこで、宝石の研磨を彼女たちにしてもらい、買い付けをしています。
美しさというものはお金でつくれるものだけではなく、内面から輝くものだと思います。

取り組みを始めてから2年がたち、ちょうど6月から彼らの商品の販売を開始します。
最初は研磨のクォリティーも低かったのですが、1年半かけて日本の百貨店に並べられるクオリティに育ちました。

そうしてお金の循環を生み出し、目指す姿を少しずつ実現していっています。

HASUNAのジュエリーは世界中の関係者が笑顔でいられることまでデザインしています。
鉱山からお客様にお渡しするまでのすべての人の笑顔がデザインなのです。

大久保:
西水さんの講演を聞いた感想を

鬼丸:
一番前の席はエネルギーが来ますね。
大久保さんに本物にはふれないとだめだと言われましたが、色んな方の話を聞きながら見ているのはどんな姿勢で聴衆と向き合っているのか?ということ。
西水さんには本気を感じました。自分には足りないとへこんでいます。

大久保:
本に講演の100倍の情報が詰まっていても直接波動をうけないといけません。
見えない世界の方がはるかに広くて深いのです。
直接ふれることの大切さを感じてほしい。

新井:
淡々とした話で想いを伝えられる姿を見てリーダーとはこうあるべきと感じました。

白木:
目の前で気をうけました。
世銀スタッフのお母さんとお子さんの話にすばらしい姿勢を感じました。
そこまで上の人が考えてくれているとついていかざるをえないなと。

大久保:
おねしょは悲しみの象徴。本質を対処しないといけない。
お母さんはすごいと知ることで止まったんだと思います。

西水:
メンターが「なんであたりまえのことを言っただけでなんで喜んでくれるんやろな?」と言っていました。
嬉しいのはエネルギーや知恵を受けてくださり、自分なりに成長してくれる人が出てくること。
正直に話してよかったなと思います。
悲しいのは自分の成長の糧になっていないリーダーがいるということ。

リーダーは必要とされると終わり。
本当のリーダーシップはなくなっても大丈夫という社会であり関係であり組織。

Q
障碍者の雇用について世界ではどうなのか?

A
西水:
その分野には明るくないので新井さんから

新井:
日本は障碍者に隔離する政策をとっていたので100人に5人いるのにそんなにいるように感じません。
海外は隔離をしないノーマライゼーションが進んでいます。

日本の場合は障碍者雇用率は形式上の話であり努力目標。実質的な雇用がされていません。
しかし、海外でも誇れるモデルの一例としてエフピコがあります。
障碍者が早く月曜がこないかなという働くことへのモチベーションの高さは海外に対しても誇れることです。
障碍者雇用の世界で北欧が進んでいるのは間違いない事実ですが、Kaienという会社が北欧モデルを国内に導入しようとしています。

大久保:
ISFネットという会社は2400人のうち1000人弱が就業弱者。
匠カフェという障碍者が働くカフェも運営していてインドと韓国にも国からの要請で匠カフェがオープンします。
障碍者も成長できるというモデルとして。

Q
頭とハートがつながるとおっしゃっていましたが行動になかなか起こせないでいます。
皆さんにとって頭とハートがつながった瞬間を教えてください。

A
白木:
これまで散々迷ってきました。26歳までは貧困問題を解消したいととにかく色々と動いていました。
NGO、NPO、国連など・・・。
当時はやりたいことは大きくて頭でっかちになり、行動しても空回りしていました。

全部がつながった瞬間というのは次のことを考えた時でした。
回想したら母がファッションデザイナーでものづくりに携わりたいと考えていました。
おばあちゃんからもらった大切なジュエリーにはいくら出されても売りたくないお金ではない価値があるとも思っていました。

そういった想いのこもるジュエリーの裏に困った人がいるのはおかしいのであないか?
自分しかそういう発想にはならないだろうというこれらがつながって今のジュエリーのビジネスになりました。

自分がそこに気づいた時、そこから先は迷いなく歩むことができました。

大久保:
直接の体験というのはとても大切。
実際に体験してみるとひらめくものがあります。
座禅でひらめいたのは勘違いの可能性がある。

鬼丸:
いろいろ苦しんでます。今は円安にも。
でも、自分ではやめないと決めています。
そしてやるとも決めています。それはありえない事だと思いますが皆さんがテラルネッサンスの活動の支援をやめてしまったとしても、例え一人になってもバイトしてでもやるという事です。
なぜかというと自分そのものだから。これ以外にやることが思いつかないのです。

なぜそうなったか?というと人との出会いがあります。
ダイエーに行くにも車で40分かかるような田舎の家庭環境で育ちました。
そこはみんなの協力がないとなにもできない環境でした。
自分にできなくてもたくさんの人とやるとできるというのは小さなころに身に付けたのだと思います。

大久保:
鬼丸さんになぜするんですか?と聞くと「他にだれもやらないんで僕がやります」と答えました。
しかも「僕って幸せでしょう 人のお金で自分の好きなことをやっていて。」とまで。

新井:
自分は前職でストレス性の難病にかかって開き直りました。自分はもう終わったと。そうしたら尽くしたいと思うようになりました。
母親が障碍者でふつうに側にいて不自然に思えていました。買い物につきあうだけで近所の人にほめてもらっていた事を思い出してお金って冷たいじゃなくてあったかくて必要とされるものでなくてはいけないと気づきました。

私じゃなくてもいいけど、自分がそこにいて気づいた。だからやっているという感覚です。
これが社会にあれば。

Q
リーダーシップは信念だとおっしゃられていますが、自分が消えてもいい組織を作るとは

A
鬼丸:
私たちはオーナーシップという言葉を使っています。
オーダーメイドとオーナーシップ。
一人一人に寄り添わないといけないという事と決定権があるという事。
自立と自治に、安心して生活できることを。
自分らしく生きるきっかけを提供しつづけます。

白木:
自分はリーダーとして頼りないと思いながらやっています。
引っ張っていく感じでもない。
一番大事にしている事として、目指す方向は示すようにしています。
5年後、10年後にどういう世界をつくっていたいのか?
全員にシェアしています。
桃太郎も明確なミッションがあったので
一つの言葉で表して浸透させることが大切だと考えています。

新井:
感謝の気持ちが前にでている方、自分はなにもできない、周りがすごいとおっしゃるのが共通しています。
他人事にせず、自分ごとにすることも大切だと思います。

西水:
ここにいる皆さんは変わり者だと思います。
自分で自分を引っ張りはじめています。
リーダーとは自分で自分を磨き始めるプロセスで輝きだすのです。
リーダーについて書かれた本は世の中にたくさんあるけれども、読んでもどうしようもないことだと思います。

自分自身で耳を傾け、自分の目の奥をまっすぐ見つめる雰囲気があれば開拓できるのでは。
リーダーの条件として、自分の欲望のために動いてしまったらリーダー失格です。
少しでも自分の為にという事を部下が感じたらやる気がなくなります。

本物のリーダーシップとはなんでもその人たちの目線に近づいてためにになりたいと本気で思うことから始まります。

大久保:
本物のリーダーシップとはなんでしょう?
リーダーシップというのは日本にない言葉です。
例えるならば村の長。
人を幸せにするのがリーダーの役目でそれがたくさんできれば素晴らしいリーダーシップです。

リーダーには組織をまとめる事や部下が必要と思っている人がいますが、たった一人の人がいればそれでよいのです。

村の長も村人全体の幸せの為のまとめ役です。
自分は大したことをしていないという人がすごい人。
本当になんにもしていない人もいますが・・・

香川塗りの職人さんの仕事を見ていると説明をしてくれました。
1回の塗りは0.03mmを何十回も塗るのに対して安物で塗が剥がれてしまうようなものは2-3回しか塗っていないと言っていました。
本当の強さというものは積み重ねから生まれます。

Q
反対する人が出てくると思いますが接し方、処遇の仕方を聞かせてください。

A
西水:
それぞれがそれぞれの理由で反対しています。
声をあげてくれるのはありがたいことです。意見を聞くように努力すると、そこからわかってくることがあります。
逆になにも言ってくれない人の方が怖かった。話せない環境を自分が作ってしまったと気づき、ミーティングは楽しいものをするように変えました。
最後に議長がサマリーを話す後に何もも言わなかった人に今日のミーティングについて聞いてみます。
まさに沈黙は金。最後にすごい意見が出てひっくりかえったりもします。 

白木:
意見をみんなが持っています。言ってくれるのはありがたいこと。
喧嘩をしようよと言っていて、そこからヒットは生まれると思っています。
そこで、意見を言いやすい環境を心がけて黙ってる子は気をつけるようにしています。

鬼丸:
そうですねとまず言います。
そして、少したって忘れたころに私はこう思うと話すと意外に受け入れてくれます。

新井:
自分の視野ではないことを言ってくれる貴重な意見です。
何が足りないんだろう?自分の考えを磨いてくれる存在と愛を感じて聞くようにしています。

大久保:
環境、条件をつくるのがリーダーの仕事。
西水さんはスタッフに変われと言うのではなく、体験させました。
多くの人は指示で変えさせようとしています。
大事なのは環境をどう整えるかです。

原石を磨くと光ります。
人にもいろんな原石があっていろいろ輝けます。ただし、磨けばの話。
人との出会いでも自分を磨くことができます。

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