アクティブファンドのアクティブリスクに注目しよう2013年07月15日

アクティブファンドには多くの場合、ベンチマークと呼ばれる運用する上での基準が設定されています。
ベンチマークを上回る投資リターンを目指すのがアクティブ運用の目的と言ってもいいと思いますが、じゃあどれくらい上回ろうとしているのか?目論見書から読み取ることはできません。

そこで、ある程度運用がされているファンドであればアクティブリスクという値を見ることでどの程度ベンチマークから離れて運用しようとしているのかが把握できます。

アクティブリスクを調べるために利用するといいのが投信まとなびです。

投信まとなびのファンド情報ではアクティブ・リスクを見ることができます。
注意点としては投信まとなび運営元のイボットソンが設定しているベンチマークとファンドのリターンの差からアクティブ・リスクを求めているのですが、傾向をつかむのにはそれほど大きな問題ではありません。
(どうしても気になる方は自分でアクティブ・リスクを算出することもできますが、これはまた今度)

例えば、日本最大の国内株式アクティブファンドである「フィデリティ・日本成長株・ファンド」を調べてみましょう。

イボットソンの分類ではラッセル野村大型グロース・インデックスに分類されています。


パフォーマンス詳細表にアクティブ・リターン、アクティブ・リスク、インフォメーション・レシオが書かれています。

アクティブ・リターンというのはファンドのリターンとイボットソン分類ベンチマークのリターンの差でどれだけベンチマークを超過したのかを表しています。

アクティブ・リスクは特定の期間のアクティブ・リターンの標準偏差を求めることでベンチマークのリターンに対してどの程度バラつきがあるかを表していて、ベンチマークからどの程度離れることを許容して運用しているかを見ることができます。

インフォメーション・レシオというのはアクティブ・リターンをアクティブ・リスクで割ることでどの程度効率よくアクティブなリターンを生み出しているかを見ることができます。

フィデリティ・日本成長株・ファンドのアクティブリスクを見ると1年で2.88、3年で3.03、5年で5.03でした。アクティブリスクが5以下のファンドはできるだけベンチマークから離れたくない運用をしていると言うことができます。

ベンチマークを超過するのを目指すとは言いつつも大きなリスクを取っていないため、このようなファンドの場合は信託報酬の影響がより大きく出ます。信託報酬が高いのにアクティブ・リスクが低いファンドは長期的に見るとベンチマークを下回る可能性が高いと言えます。

ちなみに、期間3年、国内株大型もしくは中型のアクティブファンドでアクティブリスクが3%未満のファンドは61本あります。3%〜6%未満のファンドは189本、6%〜9%未満は34本、9%〜12%は8本、12%以上は5本でした。

アクティブ・リスク12%以上のファンド 5本

アクティブ・リスク9%〜12%未満のファンド 8本

今度はアクティブ・リスクが高いファンドの例を見てみます。
今現在購入が出来ないJPMザ・ジャパン、DIAM新興市場日本株ファンドに続く純資産額の「DIAMアジア関連日本株ファンド」です。アジア関連というところがひっかかる方もいるかと思いますが、ガンホーを組み入れていたのが功を奏して直近1年のリターンは126.11%と爆発してます。(だからといって今後がどうかという点はありますが)




また、買付停止になっているDIAM新興市場日本株ファンドですが、DIAM新興企業日本株ファンドという名前が似ていてちょっとだけ信託報酬が上がったファンドが誕生していますが、ポートフォリオの中身は違っているので注意が必要です。

最後に、アクティブ・リスクとはベンチマークとなるインデックスからどの程度離れて運用するかという数値ですので、アクティブ・リスクが大きいという事は大きく失敗する可能性もあるという事も押さえておいて下さい。

ファンド定点観測 2013年6月:ひふみ投信2013年07月17日

レオス・キャピタルワークスが運用するひふみ投信の6月を振り返ります。
また、7月9日(火)に開催されたひふみアカデミーにも参加したのでそちらの内容も。(動画はこちら

■ 6月の運用と今後の見通し(ひふみアカデミーより)
6月はひふみ投信運用開始来で最も失敗した月と言えます。主因はひふみ投信の強みでもある中小型株が不調であったことと、現金比率を高めに設定していた中で月後半の上昇についていけませんでした。
結果については真摯に受け止めていますが、その中でも質の良かった点としては大きくブレることが無かった点で悪かった点としては現金の動かし方を失敗したこと。運もあるかもしれないが避けられたのかもしれません。

運用哲学において変わってはいけない点として、いい会社をアグレッシブに組入れるというのがあります。
今回はインデックスにクリンチしていたのを意図的に外して新規銘柄を組み入れた瞬間にインデックスが上昇していき、思い切った運用が裏目に出た結果になりました。

中国のリスクは終わったとは考えておらず、TOPIXが下落するのではないかと現金比率を高めのまま推移しています。

組入1位は三越伊勢丹HD。デパートの組み入れは初だと思う。足元の決算が良く、為替に反応しない銘柄。
サンマルクHDやコシダカHDについても同様に消費銘柄。組入4位の日本農薬はグローバルで農業が発達していく中でイモ虫を殺すが益虫は殺さない農薬を販売しており、地味ながらも下値が固く成長ストーリーが見込める銘柄と考えています。

他に話が出たことについて、各媒体で記事になっています。




2013年前半は以前のひふみ投信だったら苦手な相場と言っていてついていけなかった上昇相場だったと思いますが、政権交代によって相場の流れが変わったことに速やかに対応できた点は良かったと思います。確かに時々読み違いもしていますが、修正が早いのでそこは信頼して持ち続けています。

草快塾で一緒のグループにいた方がひふみ投信を積立しているが、あんなに銘柄を入れ替えて長期投資と呼べるんだろうか?と言っていました。

確かに藤野さんはセミナーなどではこれから成長が期待できる会社に投資しましょうと話していますが、一方でファンドの運用ではいい会社だからといってずっと保有し続けるのではなく、その時の相場にあった銘柄を中心にポートフォリオの組み替えを行なっています。

ひふみ投信は長期投資か?と言われれば自分はひふみ投信は長期投資ではないと思っていて、コモンズ30ファンドや結い2101のような銘柄の入れ替えが頻繁ではない(回転率の低い)ファンドが長期投資なファンドだと思っています。

ただ、ひふみ投信のフレキシブルなポートフォリオの組み替えがあるからこそキャッシュポジションの変更、リスク管理まで含めてお任せしていますし、ひふみ投信に対してポートフォリオのメインとして長期投資をしています。

■ ひふみ投信の日次リスク(250日)の推移
 :基準価額
 :リスク(250日)

5月末からの相場の乱高下を受けてさらにリスク=ボラティリティが上昇しています。
足元では東日本大震災の時に近いリスク水準です。

■ ひふみ投信の決定係数(250日)の推移
 :決定係数(JASDAQ指数)
 :決定係数(TOPIX)

インデックスとの感応度を表す決定係数の推移です。
東日本大震災の後下がりつつあったのが、今年に入って徐々に高まりつつあります。アベノミクスによるTOPIXの上昇についていく為にクリンチしていることがわかりますがインデックスと同じような動きをしているというレベルではありません。


■ ひふみ投信のアクティブ・リスク(250日)の推移
 :アクティブ・リスク(JASDAQ指数)
 :アクティブ・リスク(TOPIX)

インデックスとどれくらいズレて運用しているかを表すトラッキングエラーです。アクティブリスクとも呼び、アクティブファンドの場合はどの程度インデックスに対してアクティブに運用しているかの目安になります。

ひふみ投信はベンチマークを設定していませんが、概ね10%以上で推移しておりTOPIXとは異なる運用をしていることが確認できます。


■ ひふみ投信の資金流出入


6月は0.6億円の純流入でした。5月が9.0億円、4月が7.2億円の流入超だったことを考えるとだいぶ解約が目立った月でした。5.23の後も資金流入は続いていましたが6月に入ると一転して解約が進みました。


■ 2013年6月末時点での組入上位銘柄



■ 概要
 過去1ヶ月  -6.37%
 過去1年   43.19%(R&I騰落率ランキング 334位  R&I安定性ランキング 16位
 過去3年   63.19%(R&I騰落率ランキング 19位  R&I安定性ランキング 15位)
 純資産総額  72.19億円
 組入銘柄数  74(前月比-1)
 株式比率   75.12%
 現金比率   24.88%




ファンド定点観測 2013年6月:結い21012013年07月24日

鎌倉投信が運用する結い2101の6月を振り返ります。
参考資料は結いだより第40号です。

■ 今月の巻頭特集
投資先のいい会社訪問として6月30日に開催されたサクセスホールディングスさんへの訪問がレポートされています。私も参加しましたが、実際に保育園でふんだんに間伐材の遊具や家具が使われているのを見たり、柴野社長のお話をじっくりと聞くことができて良かったです。当日のレポートは当ブログでもまとめています。


■ 第4回「結い2101」受益者総会
8月30日に開催される受益者総会に新規に組入れられたエー・ピーカンパニーの大久保常務、ベルグアースの山口社長も登壇されることになりました。午後は第一次産業をテーマにかなり盛り上がりそうです。

■ 新規組入のいい会社:エー・ピーカンパニー
塚田農場などの居酒屋チェーンを運営していますが、市場を通さず生産地から直接食材を仕入れることで第一次産業の強化と顧客にこれまでなかった鮮度と価格で料理を提供しています。

■ 新規組入のいい会社:池内タオル
タオル生産で有名な愛媛県今治市にあるタオル生産会社。池内タオルは自社が利用する電力の全てを風力発電によるものにしており、WWFから日本初のWindMade認定企業にもなっています。環境負荷には徹底的にこだわり、「オーガニックな会社をつくりましょう」を合言葉に経営されています。池内社長は第一回の受益者総会のパネルにも登壇されました。

■ 第四期決算と分配金
7月19日に結い2101は第四期の決算を迎えました。目標リターンである5%(信託報酬控除後4%)を上回っていることもあり、今期は1万口あたり500円の分配金が出ました。基準価額を見ると年率5%を上回った分の約25%に相当する金額でしたがどの程度の分配方針で考えているのかは確認してみたいと思います。

■ 純資産総額が50億円に!
7月24日に結い2101の純資産総額が50億円を突破しました!おめでとうございます!

■ 6月の売買動向
株式比率は新しくエー・ピーカンパニーを組入れたこともあり、56.4%→56.7%に微増しました。
現時点での非公開の組入会社は1社です。
債券への投資も新規に池内タオルを組み入れたことにより、2.3%→4.9%に増加しました。非上場の会社への投資については5%を上限に行うと運用ルール上定められていますので現行の純資産額においてはほぼ上限になっています。また、トビムシの債券への追加投資も行われ、組入比率の2位になっています。

社債への投資の場合、株式と違っていつでも購入・売却できるわけではないので一時的に上位に登場しますが、純資産額が増えるに従って相対的に下位に下がっていきます。結い2101では債券への投資については現金と比較しての運用利回り向上を狙い、年率10%以内のリスクで目標リターンの4%を実現する範囲で投資を行なっています。

■ 顧客数
 5,675人

■ 結い2101の日次リスク動向

250日の日次リスクにおいては10%をわずかに超えています。設定来でも9.4%と、そろそろ想定リスクの上限に近づいているものと思われます。

■ 結い2101の資金流出入


6月は1.3億円の流入でした。ほぼ積立分の流入になります。4月3.4億円、5月4.3億円の流入だったのが急に止まった感じです。

■ 結い2101の決定係数

結い2101と各インデックスとの感応度を示す決定係数です。
TOPIX、JASDAQいずれも0.6程度とかなり低い数値になっています。投資先の市場分散や高いキャッシュ比率などにより特定の市場の影響を受けづらいのが確認できます。

■ 結い2101のアクティブ・リスク

インデックスと比較してどの程度値動のバラつきがあるかを示すアクティブ・リスクはいずれも12%超と高い数値を出しており、決定係数の低さを裏付けています。

■ 資産構成比  *(カッコ)内は前月
 株式  56.7%(56.4%)
 債券  4.9%(2.3%)
 現金等 38.4%(41.4%)

■ 運用パフォーマンス
 過去1ヶ月  -2.82%%
 過去1年   27.78%(R&I騰落率ランキング 371位 R&I安定性ランキング 2位
 過去3年   38.6%(R&I騰落率ランキング 258位  R&I安定性ランキング 2位)
 純資産総額  45.70億円
 組入銘柄数  43(前月比 +2)


コツコツ所沢#13を開催しました2013年07月25日

7月21日(日)にコツコツ投資家がコツコツ集まる会 in 所沢(略称:コツコツ所沢)#13を開催しました。
(そういえばその日はブログ開設10周年でもありました)

今回は7名での開催となり、初参加の方を含めて3時間30分たっぷり話しました。
お店はいつものパスタ・デルフィーノさんです。


今回の話題です

・バリュエーション表から日本の労働生産性について
 ・現場ではかなりがむしゃらにやっているが・・・
 ・現場と経営は違う。海外赴任の経験からも日本は経営がまずいのでは。

・確定拠出年金、NISAの導入背景について
 ・貯蓄から投資への流れで誕生している
 ・確定拠出年金を従業員がしっかり理解しているか問題がある
 ・商品ラインナップだけでなく、制度のどこまでシステム上再現してるか確認してからでも遅くない

・投資信託の運用報告
 ・公募投信の運用報告は法律に書いてあるからがベースで全然投資家に伝わらない
 ・年金基金ではファンドマネージャーもしくは営業経由でファンドマネージャーから報告がある
 ・運用報告会を開催しているファンドもあるが

・ブラックだろうが株価が上がる会社はいい会社?
 ・自分の利益だけでなく会社を選ぶ視点が必要ではないか
 ・議決権もしっかり行使して欲しい
 ・機関投資家にもPRI(責任投資原則)などがある

今回プレゼントしたのは以下の2冊です。

『投資家が「お金」よりも大切にしていること』 藤野英人
『「増やすより減らさない」老後のつくり方』 平山賢一

次回のコツコツ所沢は9月を予定しています。
参加下さった方、ありがとうございました。また、機会があれば参加下さい。

株、投信を買うなら必見!税金がタダになる、おトクなNISA活用入門2013年07月26日

著者の竹川美奈子さんからNISA入門書を献本いただきました。ありがとうございます!


日本一わかりやすいNISA本の決定版と帯にも書かれている通り、イラストも多く一見簡単そうで実は奥が深いNISAの制度を丁寧に説明しています。第一章の説明でわからなくても最終章のQ&Aを読むとだいたい疑問は解決するのではないでしょうか?

特筆すべき点としてはNISAの入門書でありながら確定拠出年金など他の税優遇制度と比較して家計にとって総合的に見る視点を入れているところです。竹川さんは個人向け確定拠出年金の本も書かれていますが、この本の中でも個人向け確定拠出年金や企業型確定拠出年金について制度を説明していて、自分にとってどの制度が有効なのか考えた上で活用しましょうというスタンスをとっています。

NISA活用法ではNISAで非課税となる5年間投資した場合の各資産毎の平均リターンや最高リターン、プラスリターンとマイナスリターンの比率などの過去データが紹介されており、どの資産の商品を購入しようか考える上で参考になります。

肝心の金融機関選びは「注意点がいっぱい!金融機関選び方」と題した章で確認する項目や実際にネット証券などの対応状況について書かれていますが、NISA入門書としては皮肉なことに今すぐ決めてキャンペーンにのるのは早計だと気付くことになると思います。

竹川さんのブログでも課題が紹介されていますが、個人的には来年になって各証券会社のシステム対応状況を見てから申し込んでもいいと思っています。4年間は金融機関を変更できない制度ですので慌てずじっくりと考えて金融機関は選びたいところです。


イギリスのISAは個人貯蓄口座という名前の通り貯蓄性商品も購入できるのに対して、日本の場合は投資性商品だけに限定されており「貯蓄から投資へ」の掛け声の一貫として導入されたような制度になってしまいました。先日のコツコツ所沢に参加されていた方が話していたことでもありますが、将来に向けた資産形成教育を行いつつも、その実践の場として確定拠出年金(DC)、NISAがあるというような形に成熟していくといいなと思います。

ほんの少し、この本づくりのお手伝いをさせていただいた贔屓目を差し引いてもNISAの制度を学ぶ上で本当に役に立つわかりやすい本です。せっかくの優遇制度ですのでこの本で制度を勉強してうまく利用して欲しいと思います。