鎌倉投信・第4回「結い2101」受益者総会レポート(3)亀田製菓 田中通泰氏 ― 2013年09月04日
8月31日(土)、鎌倉投信 第4回「結い2101」受益者総会が京都で開催されました。
レポート第三弾は亀田製菓の田中社長の講演です。
とても実直な社長で自分のところの会社はまだいい会社ではないと話されていましたが、きっとそれは要求するレベルが高いからこそ出てくる言葉なんだろうなと思います。
米菓メーカーという事で手堅い業績で地味な印象を持っていましたが、世界に打って出て米菓を世界に広げていこうというとんでもない野望を秘められていました。きっとコツコツと実直に海外展開をされていくのだと思いますが、亀田製菓が世界のKAMEDAに育っていく過程を見守りたいと思います。
日時:2013年8月31日(土) 10:00〜16:50
場所:国立京都国際会館アネックスホール
〜そうだ、京都でやろう!〜
伝統と革新が息吹く千年の古都で「投資」について考える
【講演】
新潟発、米菓の心を世界へ
〜真面目で粘り強い社員という新潟企業の強みを活かして、米菓を世界へ広げる〜
亀田製菓株式会社 代表取締役社長 田中 通泰氏

受益者総会でお話をと言われて何度かお断りをしていたのですが、何をしゃべってもいいと言われましたので参加する事にしました。
鎌倉投信はいい会社への投資を標榜していて、そんなすばらしい投信会社に投資されていることは嬉しいです。しかし、我々は少しでもいい会社になりたいともがいているところなのです。
亀田製菓売上は890億円、営業利益は50億円です。売上の85%くらいはあられ、お煎餅などの米菓、残りの15%が米や植物性乳酸菌関係となっています。将来的には米菓の比率を下げたいと考えています。
亀田製菓は1957年設立で連結での従業員3100名のうち2100名が新潟での勤務者になります。
1946年に新潟県亀田町で男にはどぶろくという楽しみがあるけれども、女、子供には楽しみが無いという事で水飴つくりを始めました。しかし、なかなか水飴は売れず余ったお米を煎餅にしたところから始まっています。
社是は「製菓展道立己」
お菓子づくりを通して会社も人間も成長していこうという内容です。
しかし、こういった社是も従業員に浸透させるのは難しいことで、経営者、従業員の理解度が経営の質に影響してくるだろうと考えています。管理職は150人以上おり、口やかましく話しているものの実践に結びついておらず、現場でもすぐ忘れてしまうのが現実です。
そこで、「おかしのことでケンカしよう」という亀田スピリッツを三年前に制定し、安心、安全でおいしいお菓子をつくるために妥協してはいけない、みんなで真剣に取り組むようにしました。月に何度かみんなで集まってお菓子の食べ比べや会合を行っています。これはうまくいっていたのですが、最近ではマンネリ化も見られ、企業理念の実践は悩みどころでもあります。
亀田グループの一番を紹介します。日本の米菓全体で2500億円のマーケットのうち、30%ほどの約760億円を亀田製菓が占めています。また、日本全国のスーパーなどの米菓売り場ではほぼどこでも亀田製菓の米菓が置いています。
ライスクラッカーのシェアも世界一でアメリカにおいては半分のシェアを占めています。腎臓病患者向けの低タンパク質米ではタンパク質を35分の1にできるのは当社だけの技術で 40%のシェアがあります。他にも長期保存食の分野で尾西食品をM&Aしました。5年間保存できるご飯が特徴で、こちらも50%のシェアがあります。
地域への貢献という点でお話すると4工場すべてが新潟にあり、2200人の従業員が働いています。新潟は東京の裏側に位置していて、全国の中心に位置している地形的な利点もあります。地元での米つくりにもこだわり、生産者農家とのつながりも大切にしています。また、アルビレックス新潟には創業から後援をしていて、あまりお金は出せない代わりに口も出さないという事でやってきています。米菓メーカーの70%は新潟に会社があります。
全国のお米の生産量は約800万tでうち新潟県は60万tを生産しています。米菓用としてのお米は20万tが使用されていますが、亀田製菓ではその約5%にあたる4万tを使っています。
新潟県人の特徴として気候条件が厳しいので黙々と仕事をする反面、冒険より安定志向にあり、過去の成功体験に固執するところがあるのではないかと思います。また、新潟県人は食べるのに困らないのでそこは人の良さにつながっていると思います。日本海側の県は世帯収入が多い傾向があるのですが、新潟県もその例に漏れず世帯収入は950万円(全国4位)です。これは 三世代同居のため複数の収入があることが理由です。
今後の経営環境についてお話します。国内市場の人口減少と高齢化が問題になります。高齢化は有利ではという意見もありますが、高齢化が進むと若いときほど食べていただけないためマイナス要因となります。そこで、世界的な健康志向 オーガニックやグルテンフリーに進出することで貿易自由化による米の流通拡大にのっかりたいと考えています。お米は低アレルギーでヘルシー、美味しいというのが世界的にも注目されていてビジネスチャンスがあると考えています。
亀田では世界の最適地で生産、販売を行っており、グローバルフードカンパニーを目指しています。世界の米菓市場でリーディングカンパニーとなり、世界中で和を代表する信頼のブランドに育てていこうと、この目標を絶対に実現するという強い意志を持っています。アメリカやオーストラリアでは既に亀田と中国の2,3社がシェアを獲得しています。いずれナビスコなどグローバルの大手企業も参入してくるだろうが負けないように企業体質も大きく変える必要があります。
まじめで黙々と働きながらもチャレンジをすること。農耕民族から狩猟民族へ変わります。
アメリカのグローバル食品企業は地方都市にあることが多いのですが、その中でも尊敬している会社を二社紹介します。
m&m'sやスニッカーズを生産している米国の食品メーカー「マース」は非上場なので多くは知られていませんが本社は田舎の中学校を改装したもので、フロアのどまんなかに社長がいるそうです。また、駐車場が先着順になっており社長といえども遅れて来ると遠くに駐車する事になります。こういった社風に興味をもちました。
米国のチョコレートメーカー「ハーシー」は1894年創業のチョコレート専業メーカーです。
20世紀前半にチョコレートに特化して成功しましたが、その利益をペンシルバニア州の街づくりに使いました。
1918年には学校を管理するファンドに自社の株式を寄付しましたが、2000年にそのファンドは資産が偏っているということでハーシーの株を売却しようとしました。結局反対の意見も出て売却されていないのですが、以後ハーシー社は積極的な行動をとるようになりました。
亀田は配当性向が低いとアナリストから言われていますが、利益の源泉は老朽化した生産設備をだましだまし使っていたり、新潟にしては高いレベルでも全国的に見るとまだ低い給与などから来ています。
つつましやかさで経営をしていますが、これからは成長戦略にかけていこうとしています。アナリストに理解はしてもらえていませんが。
成長がなければ当社の未来はありません。亀田流グローカル思考で成長を目指します。
創業精神と新潟企業の強みを生かしながら世界市場を見据えて戦略を練り現地の食文化をふまえて行動していきます。
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