鎌倉投信・第4回「結い2101」受益者総会レポート(10)パネルディスカッション午後の分2013年09月17日

8月31日(土)、鎌倉投信 第4回「結い2101」受益者総会が京都で開催されました。
10回にわたった受益者総会レポートも今回で最終回。午後のパネルディスカッションの模様を報告します。

午後のパネルディスカッションは濃厚な時間でした。
トビムシの竹本社長が自身のブログに「つづけつなぐ just tango on.」というエントリーを書かれていますが、新井さんがトビムシに投資した理由が心を打ったというのもあります。

600人の受益者が集まる受益者総会で投資した理由を質問されてシンプルに「日本の林業を立ち直らせることが出来るのはこの会社だけだと思っている。この会社がダメだったら日本の林業はダメになる。」ここまで気迫のこもった説明をファンドマネージャーはするものでしょうか?

金融商品、投資信託として「結い2101」を考えた時、この答えは正解ではないのかもしれません。
でも、「結い2101」だからこそ、この答えでいいんだと思います。

これこそが「投資は”まごころ”であり、金融は”まごころの循環”である」という鎌倉投信の投資哲学そのものだと思います。

鎌倉投信はブレてない。
そして、受益者も想いを同じくする人達が集まっている。
それを再確認して嬉しくなった今年の受益者総会でした。

日時:2013年8月31日(土) 10:00〜16:50
場所:国立京都国際会館アネックスホール
〜そうだ、京都でやろう!〜
 伝統と革新が息吹く千年の古都で「投資」について考える

【パネルディスカッション・受益者との対話】
 パネラー    牧大介氏
         小野邦彦氏
         大久保伸隆氏
         山口一彦氏
 モデレーター  大久保寛司氏

大久保(寛):
人材育成について話そうとしてきたのに、話し足りないところがあったと思うのでまずはそれを存分にどうぞ。

大久保(伸)
うちで働いている80%がアルバイトで平均年齢は24歳です。3,000人雇用しているのですが、それを大学生の人数250万人にいかに近づけるか、3年で倍の規模にしたいと考えています。

人数が増えると徐々に組織のミッションが薄まってきます。そこで必要になってくるのが教育者への教育です。偉くなればなるほど教育が必要になりますのでリーダーシップ研修に力を入れています。

全アルバイト向けの研修も行っていますが、自分の年代と比較しても価値観が多様化していることを感じます。全く時代の違う人が管理職にいますが、管理職の世代とは違って「いい車やマンションを買おう」といっても奮い立たず、多感でユニークなことに飢えているのが今の若い世代です。

そこで、興味をもってもらうことに注力しています。社員には常にやりがいをもってほしいと考えています。価値観が多様な社員がやりがいを見失わないように入社後の選択肢を増やすようにしています。また、責任を持つと自主性が身につくことから新卒5人で1店舗をオープンするので店長を募集といったこともしています。

現場だけが仕事ではないので店舗と本社の業務を兼務するハイブリッド勤務といった制度もあります。幹部にプレゼンをさせて自分がどこに所属したいか選ばせる選挙制度もあります。そうすると自分で責任を持って仕事を選ぶことになるので言い逃れができなくなります。

また、教育に関しては直接答えを教えないで環境だけ整えて見守り、本人に考えてもらうようにしています。

大久保(寛):
おもてなし企業選で訪問した際の朝礼の話の中身がすごく、同行していた経済産業省のキャリアの方が目の前が真っ暗になるくらいの内容でした。まだ19歳なのに視野が広い話を聞いて、経済産業省のキャリアの方が自分より輝いていると感じていたくらいです。

スタッフはどういう風に育成するのか?質問してみました。場を与えて基本的には見ている。息詰まったらなんとなくヒントを与えているという答えが返ってきました。店長もまだ26歳なのに素晴らしい人でどうしてそんな事ができるのですか?と質問するとそこで大久保(伸)さんを尊敬していてそのようになったと、大久保さんの名前が出てきたのです。

また、食べてみないとわからないという事で自腹で食事をしてみることにしました。お店は18:30で満席になるくらい混雑していましたが、それでも余裕をもってオペレーションがなされていて、スタッフがみんな楽しそうなのが印象的でした。

我々のテーブルで添え物のキャベツが残った状態で皿を下げてもよろしいですか?と聞かれたので下げてもらいました。しかし、しばらくすると先ほどのキャベツにちょっとした調理を加えて出てきたのです。

このような事はホールのスタッフに対しても権限委譲されていることからできているのです。
お客様に出したものは食べていただくという事が徹底されています。

大久保(伸):
現場を体験させるようにしています。リアルを知らないと想いがのってきません。自分が漁に同行した時の話です。そこではうちに朝早くに卸さないといけないからと以前よりも早く深夜の2時に出漁してもらっていました。

荒れた海で自分は早々に30分くらいで吐いてしまったのですが、しばらくすると漁師さんも吐いていました。そんな姿を見ると自分もちゃんとやらないといけないと改めて思いなおします。

大久保(寛):
小野さん、山口さんの講演を聞いた感想を聞かせてください。

小野:
大規模か効率化かという点で違うと思いました。うちは規模は小さいが高付加価値という路線ですが、ベルグアースさんは効率化を選んでいます。ぼくらは小さい農地を対象にしていますが、面白いアプローチだと思いました。

最後には山口さんも本音で話していたと思います。新陳代謝が必要というところは同じです。
アプローチは違っても似てくるんだなと共感して話を聞いていました。

大久保(寛):
牧さんはどう感じましたか?

牧:
農業の話をきいて両輪かなと感じました。林業の世界でも大規模か小規模の集約化というアプローチの仕方があります。自分の山を丁寧に副業としてやるのと、大規模で産業として成立せしめる林業とそれぞれありますが、両方やらないといけないよなと感じました。

大久保(寛):
山口さんは小野さんの話を聞いていかがですか?

山口:
小野さんの話を聞いて、そんな風にやりたいなというのは本心にはあります。うちも大規模化が全てとは思っていません。元々うちは耕地面積が小さく、小さな畑の中で坪当たりいくら稼ぐか?というのを突き詰めた結果が今の姿で最初から大規模ありきではありませんでした。

農業は集団が競争しながら誰かがまとめるという形が良いと思います。今でも期待はしています。

家族だけでやるとつらいんです。かといって休んでいると続きません。「寒いね。明日にしようか。」と炬燵に入りながらお互いいたわりすぎる場合があります。そこで、企業的な農業で全体をまとめるような形が良いのではないかと考えています。

西粟倉もいろんな人がやるから元気になっているのではないでしょうか?

大久保(寛):
地域の賛同を得るにはどのように?

牧:
西粟倉も出だしは20%くらいの人が前向き、60%は様子見、20%は明確に反対という感じでした。その後、なんらかの形が出てくると徐々に空気が変わり、乗ってもいいという人が増えてきます。

最初に森林組合を辞めて起業した国里さんのように自分はこうしたいという人の存在が大切です。今はそういったマインドもつ人が西和倉の役場の中にも生まれるようになりました。

今年になって少し余裕が出てきたので他の地域の事にも関わるようになったが、あれだけの密度でそういったマインドを持っている人が集まっているおかしい村だと改めて気づきました。取組を始めて4年ほどでチャレンジする人が増え、村が面白くなってきました。

大久保(寛):
いろんなことが起こると思います。途中で無理じゃないか?という感覚はありませんでしたか?

牧:
とにかく始めてしまっているのでもがいています。

ただ、やるからには投資は先行させないといけません。木材を作るには一定規模の投資が必要になりますが、応援団に支えられて生き残ることができました。

どこまで言っていいかわかりませんが、とても苦しい時期もありました。そんな所に投資したと言うと新井さんの立場があれですが・・・

大久保(寛):
本当は今日お見えになる予定だった元世界銀行の副総裁で鎌倉投信の株主でもある西水美恵子さんもトビムシに投資したと聞いて最初は反対されていました。新井さんが投資した理由を説明して今では応援してくださっていますが、きっと新井さんはこれからの日本に必要な会社だからとそんな事を話したんだと思います。

以前トビムシの竹本さんにこんな事を言われました。
「西粟倉は成功する条件が揃っていた。ここで実現できなかったら日本のどこでも無理だ。」
とにかくやるしかないんです。

牧:
確かに西粟倉は条件の整った地域でした。様々な方から応援してもらえている中でだめならというのはありますが、じゃあ自分たちはやれるだけやりきったのか?戦いきったのか?という問いかけは常にしながらもがいていました。

会場からの質問:
四名に質問です。TPPについてどう思いますか?

山口:
TPPについては参加するのではないかと思います。そうなることについてどうするか考えないといけません。うちの苗の60%はJAで販売されていますが、経団連は推進の立場です。

TPPに賛成、反対という議論をするより生産者、消費者は日本の農業をどうしたいのか?残さなくてもいいものはないのかを議論する必要があると思います。

大久保(伸)
取引先の宮崎の生産者と飲んでいても「決まってから考える」という人が多いです。TPPが農業について真剣に考えるきっかけになればと思います。地鶏に関して言えば影響はありません。

小野:
お付き合いしている人が新規就農の人である為、あまり影響はありません。うまいこといけば農業の新陳代謝が進んで残さなくてもいい人が退場するきっかけになるのではないでしょうか?

牧:
あまり関心がありません。西粟倉は既存の流通とあえて外れてやっているので関係がないからです。
新しい市場を開拓しようとしている人にとっては関係ないのではないでしょうか?

大久保(寛):
30年、50年単位で見た時、補助金をたくさん受けている業態で良くなったところはありません。囲われているので努力していないのです。

沖縄の補助金はすごいものがありますが、補助金がなくなったらやっていけないと地元の方が話してくれました。人頼りの姿勢では輝けないのではないでしょうか?

山口:
農業は延命していますが、延命が必要な部分もあります。

農業者は上場ができないんです。もともと30年前まで農家は会社を作ってはいけないという時代でした。
徳島のみかん農家が農業生産法人をつくったのですが、いまだにその流れがあるために株式譲渡制限が外せないでいます。山口園芸のままでは上場できなかったのです。

農地を借りられるのが一般の株式会社に開放されたのも5年前からです。「農業はそんなものだから上場なんかできるかい」と言われていると感じていて、それは差別だと思っています。

農業者にとって大きなチャンスをつぶしています。補助金に頼るのではなく資金と人材を農業に入れたいと思い、上場しました。農業は芽をつまれていると皆さんどんどん言ってください。

大久保(寛):
補助金を行政が出したものはほとんどうまくいきません。厳しい中でもやっていけるものしか生きていけないのでは?甘い環境で育ったものはだめなのではないでしょうか。

会場からの質問:
大久保(伸)さんにアルバイトの冷蔵庫問題についてお聞きしたい

大久保(伸)
まず最初に悪いのはその子のせいではありません。その子のご両親、先生、企業の教育の問題です。
企業にもその子を採用した責任があります。採用の段階で見抜けなかった企業の力の不足でもあります。
とは言いながら、うちでおきないようにしています。

会場からの質問:
山口さんに質問です。本気のスイッチが入ったときの話を聞かせてください。

山口:
京都に大手種苗会社があります。うちの苗を全国展開したいなと思い、そちらで苗を売ってもらおうと取引をお願いしました。その後話は進んで先方の部長がやってきたので喜んでもらえるかと思い、半日ばかり部長をほったらかしました。自分が一生懸命働いている姿を見せたのです。

部長は言いました。「えらいな~。でもあんたとことはつきあえん。」
なぜ?と聞くと「あんたが死んだらどうすんじゃい?」と言われました。

死ぬほど働いているのを見せてしまったからです。そこで、おらが死んでも苗が作れる会社を作ろうとしたのが企業的な意味でスイッチが入った瞬間です。

その後、自分が営業になって再び苗の販売で商談をしにいった時、あの時の部長とまた話すことになりました。「誰のおかげでここまでなったんや」と言われたので「今からは自分の足で歩きます」と話しました。

質問:
新井さんに質問です。今日の登壇者の会社に投資したり投資前の会社については登壇をお願いした理由について聞かせてください。

新井:
牧さんは先ほどとんでもないことを言ってましたが・・・
理由は簡単です。この会社がなくなる損失と我々が投資した現金を失う損失とどっちが社会的にリスクが大きいかを考えました。日本の森は彼らにしか立ちなおせないと考えました。それだけです。

小野さんの会社は投資していません。でも、鎌倉投信の目指す姿はまごころが先です。若い人が農業にいどむその姿を応援しています。

エー・ピーカンパニーについて。軸は二つあります。出口戦略についてと会って五分で大久保(伸)さんと意気投合したからです。人材育成で伊那食品を目指してるこの会社はいい会社です。

ベルグアースについて。社長がこんな人だから嘘はつかんと思いました。

会場からの質問:
ウガンダでゴマを育てると聞いて着眼点がやわらかいなと感じましたがどこからそのような着想がくるのですか?

小野:
やりたいことは無数にあります。やりたいことをあちこちでしゃべっていると、ある日山田精油さんがうちが買いますと言ってくれたので「じゃ約束ですよ」と話をまとめました。

出口が決まってるという事は重要です。NPOの支援でも作物の作り方だけ教えて帰ってしまう場合が多くあります。出口を確保しておかないとNPOの人が帰ってしまった後にその土地の人が見たこともない植物ができたその後にどうすればいいのでしょうか?

作った作物を買ってくれる出口を押さえてるのが大事なポイントです。ですから山田精油さんが反応したような、ちょっとしたチャンスを逃さないようにしています。

大久保(寛):
なぜウガンダなのですか?

小野:
ゴマは乾燥に強い作物というのを知って、どこでもよかったのですが乾燥化が進んでいてなおかつコミュニケーションがとりやすい英語が通じる国という事でウガンダになりました。

ググってウガンダで活動しているNGOにメールをしたら手をあげるところがあり話を進めました。12年8月に現地に行ってみましたが、いい事っぽくても最初は20%しか共感は得られません。ごまっていいよって話して、やってみたい人?と聞いて手を挙げた人は20%程度でした。

それでも僕らの本気を知ってもらうために1名常駐して猫の額のような狭い畑でつきっきりで育ててました。結果が出て、周りの顔つきが変わりました。

乾燥と貧困には強い相関関係があります。出来上がったゴマについて質がいいよというと誇りをもってくれました。それで、自分もやるという人が増えて1年目の収穫は100kgだったのが2年目は一気に6tくらいになりました。頭でそれをやるのが合理的だからという世界ではないのです。

会場からの質問:
金融機関と今の事業ではだいぶ違うと思いますが

小野:
損得ぬきに事業をできる動機付けを求めています。もちろんお金と両立させようとしていますが執着はしていません。人の世はうつろうなと感じています。

確かに金融機関で働いていたころの給料は良かったです。でも、何に使っていいのかわかりませんでした。
欲しいものなくてボーナスで折りたたみ自転車買いました。普段だったら9800円のにしそうなんですが奮発して5万円のものを。

野菜が身近にあれば餓死もしないしお金への執着はありません。自分たちの会社を小さくて楽しい会社にしたくないと考えています。あくまでもインパクトの大きさは求めたい。

規模を追いかけるの下手な子が集まっていますが、そこはインパクトを出せるようにやっています。

会場からの質問:
自分は中国関係の仕事をしています。中国への進出を計画しているという話ですが、技術をもっていくとパクられるという問題についてどう考えていますか?

山口:
そのリスクは考えましたが、ノウハウはブラックボックス化できます。
また、海外で実証しながら技術を日本で作っていくという事も考えていて、新しい技術を作っていく自信はあります。他のリスクとしていいパートナーを見つけるとか、その際は鎌倉さんにもっと応援してもらいたいとかそんな事があります。

大久保(寛):
世界中で農家が道端に野菜を置いておいて、百円を置いて持って帰るのというのができるのは日本だけです。

震災でも都会ではデパートを開放して階段に座れるようにしました。海外だと略奪を恐れてしめてしまいます。日本だと階段に座るにしても詰めて一人でも多くの人が座れるようにという気遣いが見られました。

埼玉でホームに落ちた女性を助けようと乗客が降りて電車を押している姿が海外で報道された際もなぜ一致団結して人を救えるのか?と話題になりました。

日本ってすごい何かを持っていると思います。
すごさをきっちり出していくのが大事ではないでしょうか?

東南アジアに行くと目が輝いてるとよく言われます。
でも、目の輝きが少し違います。物欲はギラギラした目の輝きです。

刺激を求めない日本の今の若者は素晴らしいと思います。
社会が良くなることに自分をかける人が増えています。

明るい人は暗い事に文句を言いません。

明るくなるようにはどうしたらいいかを考えています。

世間が悪いといっても良くならない事を知っているからです。

では、自分は何をするか?

日本のそこら中に違う価値観の持つ人がたくさん出てきています。

それを支援するのが鎌倉投信です。