いい会社の理念経営塾(4) 人とホスピタリティ研究所 高野登氏 ― 2013年04月27日
4月24日にNPO法人いい会社をふやしましょう主催の『いい会社の理念経営塾』の第四回が開催されました。今回は元リッツ・カールトン日本支社長で人とホスピタリティ研究所 所長の高野登さんでした。
今回印象に残った言葉です。
・人生は間違いなくあみだくじ
・どこの誰もがやる仕事を、どこの誰もがやらないレベルに高めるのがリッツ・カールトンの精神
・どういう状態でお客様に届けようか考える行為がホスピタリティ
お客様のためにというのは自分の価値観で考えているが、お客様の立場にたってというのは一旦、自分の価値観を消して本当にお客様が求めているものを考えて提供するもので、それこそがホスピタリティというのが自分にとって大きな学びでした。ディズニーランドなどもそうですが、なにが感動を生み出しているんだろう?と思っていましたが、そういうところから生まれていたものだったのですね。
高野さんは人との出会いも大事とおっしゃられていましたが、私にとって今回の講演は素晴らしい方との出会いになりました。
いい会社の理念経営塾 第四回
講演テーマ:『真のホスピタリティと理念経営を考える』
講 師 :高野 登氏(人とホスピタリティ研究所 所長)
日 時 :2013年4月24日(水) 19:30〜21:00
場 所 :JR品川イーストビル20F
主 催 :NPO法人 いい会社をふやしましょう(→公式HP)
いい会社の理念経営塾
第一回 未来工業 瀧川克弘氏(講演録)
第二回 アイ・ケイ・ケイ 金子和斗氏(講演録)
第三回 アチーブメント 青木仁志氏(講演録)
第四回 人とホスピタリティ研究所 高野登氏(講演録)
第五回 アニコム損害保険 小森伸昭氏(講演録)
■ 人との出会い
今日ここにいらしている皆さんはホスピタリティが身についている人です。
本当はここに来ないといけない人はここには来ないんです。
今日は色々なところからお見えになっていて、遠くでは網走からお見えになっている方もいらっしゃいます。私は自分の時間の使い方に軸を持っている人を重心のある人と呼んでいます。
価値観がぶれていないこと。
何をするために自分の時間を使っているのか?
投資したものに対して何を得ようとしているのか。
皆さんにそれを考えてもらうきっかけづくりをライフワークだと考えています。
首長パンチという本を読んで面白かったので樋渡さんの講演を聴きに行きました。
講演の後、是非長野に来て講演して欲しいと頼んだら快諾していただき、長野での講演は大評判でした。
こういう人が地方自治をしたら日本は面白くなります。長野での講演の後、今度は武雄市に来てくれないか?と言われました。武雄市でも素晴らしい出会いがあり、ぶっとび公務員としてジャージ上下で紫色の髪の毛の人がパネルで座っていたのですが、とても面白い人でした。終わった後、その人を探したけれども見つからないと思っていたら「ファンなんです」と日本髪で和服の人に声をかけられました。実はその人がぶっとび公務員さんだったという事も。
こうしたつながりがおもしろいのです。
私は「人生は間違いなくあみだくじ」と話しています。
あみだくじのように自分の道は決まっているとしても、実は違った道に行くのががいいのかもしれない。
どこかで人との出会いがあると、道が出会いによって方向が変えてくれます。
あみだくじの横棒が人との出会い。
川越胃腸病院という素晴らしいホスピタリティを持った病院があります。
人間はなぜ自分と向き合って生きるのか?
人生は出会いの連続。必ずいい出会いが待っています。
しかし、手を抜くと出会わない方が良かった人に出会ってしまいます。
どういう出会いでもいい出会いにする力を持たないといけません。
避けてばかりでは人生がきつくなります。
例えば占いで決める人。
自分が全ての良い運をもらおうとすると、誰かが代償を受けているということ。
知らないよりも知っていた方がよいことは多い一方で人知を越えるものはあるが、それを知ることは潔くないと思います。リッツカールトンを辞めて長野市長選挙に出たが、あれは後援者に引っ張られてのものでした。ガンに罹った後援者の方がまだ切らなくてもいいのに自分の選挙にあわせて早々に切ったのを知って今引き受けないと死ぬ時に後悔すると思い、立候補することにしました。
結果的に選挙には負けましたがいいこともありました。
■ ホスピタリティとは
人との出会いの中で簡単にホスピタリティという言葉を言いますが、昔の言葉では「どうやって身を修めるか?」と言います。ホスピタリティはコンピュータでいえばOSにあたるもの。自分にとって一番大事な価値観のことです。
アメリカで様々なメンターに言われたことは
「毎日生きていく上で稼いだもので生活をつくる必要がある。しかし、一生のスパンで見た時、自分が他の人に役に立ったものの集積がその人の人生の価値を決める。」
アメリカの宗教的な観点も含まれているかもしれないが、日本の宗教でも人に物事を与えることに価値をおいています。
長野の中山間地域に行ったら見えてきたもの、それは地域社会から何代も守ってきた知恵と伝承が消えていく姿でした。そこからどうやって日本人として身を修めるか考えることになりました。
原点は日本人としての重力を作ってきたもの。
戦後教育を受けた最近の子供に日本は戦争に負けたと言ったら「どのゲームで?」と言われました。
戦争に負けるということは占領されるという事で、日本にも進駐軍が入ってきました。
進駐軍の周りには子供達が寄ってくるので兵隊はガムやチョコレートをまきました。
それを家に持って帰ってくると子供に食べるなと親は言えませんでした。そこで何と言うか?
「ちゃんとありがとうと言って食べなさい」
戦前教育の軸をもったお母さんは翌日、貧しい生活の中ながらも人参などを持って進駐軍のところへ行きました。いただいたものへのお返しです。
どちらが貧しいとか、勝ったとか負けたとかは関係ないのです。
是非について話しているのではなく、これが戦前教育の軸でした。
これにはアメリカがびっくりしました。
様々な地域に行ったが、お返しを持ってきた民族は日本だけだったのです。
これはやばい、放っておくとまた優秀な民族になるという事で彼らは日本の教育を壊しました。
日本人らしさを離れた教育システムを導入することによって現在、モンスターペアレンツなどの問題が起きています。かなり日本人らしさが壊されてしまったが、ではどうするか?
我々がどういった立ち位置で?取り組むのか?
長野で選挙に落ちたあと善光寺百年塾というものを始めました。
百年先に我々が残せるものを、先人と同じような価値観を我々は残しているかという事で。
建物や橋など50年しかもたないものを作っていないか?
奈良や京都、善光寺は1000年単位でものを作っています。
自分の身の処し方に全てが繋がってきます。
PHP企業研修シリーズで伊那食品工業に45人の経営者を連れてでかけて行きました。
岡谷で合流してバスで伊那食品工業に向かったのですが、行くときは皆さん元気で伊那食品と言っても地方の工場だろうと思っている人も多かったのです。
バスの中では塚越会長と大久保寛治さんの対談ビデオを流していたのですが、ほとんど見ていない状況。
予習したほうがいいのに。もったいないなと思っていました。
伊那食品工業に着いて塚越会長のお話を聞きました。会長は話がうまく、ぐいぐい引きつけるものがあります。しかし、その後でスタッフの方にも登壇してもらいました。現場の声をきかないと本質は見えないからです。
そのスタッフの皆さんの表情がいい。堂々としています。
9時始業で全員8時前に出社しているが残業手当は出ないというのを聞いて経営者たちは質問を浴びせました。
「本当はやらされているんじゃないですか?」「先輩がいるから自分もという事はないですか?」「朝早く出るのが嫌になることはないですか?」
答えは「時々、体調が悪い時などはつらいことはありますが・・・」というもの。
「なぜそうまでしてやるのですか?」という質問に二年目の方は「気持ちがいいから」と答えました。
「自分の心がすがすがしいからです。朝起きて顔を洗って歯を磨くと気持ちがいいですよね。あれと同じです。」
経営者たちは黙ってしまいました。
また、年功序列と聞くと先輩よりも自分の方が能力があるのに抜けないのはイヤじゃないですか?くやしくないですか?と聞きました。その答えは「それは出世欲のことですか?自分に出世欲はありません。でも、誰よりも成長したいと思ってます。」
また、経営者たちは打ちひしがれました。
出世と自分の成長がリンクしていないのです。人間的な成長と会社での出世は別の話。
自分はこの先輩のこの部分はまだ抜けない。人間力の違いを感じると先輩を尊敬できるようになります。
そうすると出世のためにという発想が出てこなくなります。
ここで働けて幸せですか?
「とても幸せです。」
いつから働こうと思いましたか?
「5歳からです。いい子に育てよ。伊那食品に入れるようにな。」と地元の人が子供に話すのです。
地元の人もいい会社だと思っているからこういう言葉が出てきます。
みんながどこかのタイミングで伊那食品に入りたいと思いながら入社してきています。だから
「入社できてよかったです。」「このチームに入れて幸せです。」といった言葉が出てきます。
「確かに叱られるし、喧嘩もします。それでもやってくのが会社じゃないんですか?」
ネガティブなことを聞こうとしていた経営者はしゅんとしてしまいました。
伊那食品では厳しく人を叱ります。
ただ、なじらないのです。なじってしまうと心が破れます。
叱らないと育たないので、叱っても筋肉になるとわかった上で耐えるのはつらいけれども叱るのです。
これはリッツカールトンも一緒です。
会社のプロセスの中でそういう時代はあります。
研修が終わって岡谷に帰る時、バスの中はシーンとしていました。
それぞれがそれぞれに今日見たことを咀嚼していく時間です。
岡谷についてそれぞれ帰って行きましたが、10人くらいの人が私のところに来て言いました。
「参りました。ここまでとは思いませんでした。」
「腹が決まりました。」「立ち位置が見えました。」
「自分のスタッフにああいう言葉を発するような仕事をさせてこなかった事に気づきました。これじゃだめだろ。自分はなにをしてきたのか?スタッフがこの会社にいて幸せですと言われないといけないと気づきました。」
そこで、私は「それでは明日どうしますか?」と聞きました。
「まずは社員に謝ります。」
そう言いました。確認はしていませんが、本当にその人は次の日にやったと思います。
腹の決まった人の目つきは違います。迫力があります。
新しい重力がふっと宿った瞬間、恥やプライドが小さいと気づきます。
もっと深い大事なプライドに火をつける
そういう重力を感じる会社、リーダーがあります。
ふわふわしている、人の言うことに左右されているというものは年齢的なものもありますが。
尊敬できる経営者の子供に会って、すごいと感じることも感じないこともあります。
問題はその人がリーダーになってフォローすることができるかどうか。
ホスピタリティとはわかりやすいもの。自分がどうあるべきか?という事です。
■ ホスピタリティを身につける
感性を磨けと言われてもなかなかわからない。
自分なりにそこそこやるが、歯車が合っていないことに気づかない時に軌道修正をする必要があります。
リッツカールトン時代、日常生活の中で軌道修正をした例を。
お母さんに「いただきます」「ごちそうさま」と言っている?という質問をしました。
「している」と全員が答えたので、それでは「今日もおいしいね。」と言っているか?と聞いたらやっていないという答えが返ってきました。
そこで、それをするように業務命令だと冗談で言いました。
そうしたら騙されて3人が本当にするようになり、彼らは2週間から1ヶ月で目つき顔つき、姿勢が変わってきました。
すると、それをやらなかった人との違いがよく見えるようになります。
家族に言葉をかけて元気にできない人がお客様にわくわくできる言葉がけができるわけがないのです。
後日、母親から私に電話がかかってきました。
「うちの息子はどうしたんですか?最近、うちのご飯がおいしいと言うようになったんです。こんなこと、5歳以来です。」
そこで私は「彼も成長したんですね。」と伝えました。
毎日の事でも自分が作ったご飯を餌のようにかっこんでいなくなったら作っている側は寂しいのです。
美味しいねと声をかけることで親子の会話が生まれるようになりました。
「リッツに入れてよかったです。」と母親から泣きながら言われました。
一番身近な人を元気にすることの大切さをホテルマンでも気づいていない人がいるのです。
ものが売れない時代と言われていますが、なぜ売れないのでしょうか?
それはあなたから買う理由がないからです。
ホテルの教育でも表面的なエチケットやマニュアルの話で終わるのが多いのです。
マネージャーはどうせうちのスタッフは育たないよと言いいます。
でも、それはあなたに育てる力、言葉があるんですか?ということです。
リッツではちょっとした事を毎日に組み込むことで6年で日本一になりました。
でも、他のホテルより優れている仕組みがあるわけではありません。
なにが違うかというと、日頃の小さな積み重ねです。
■ 遊び心を持つ
では、これは誰でもできるようになるかというとそうでもありません。
「遊び心」を自分の中にもつトレーニングが必要です。
遊び心というのは車のハンドルと同じように余裕があるということ。
フランベというデザートがあります。
ある老舗ホテルでフランベをお願いしたらスタッフが持っていたものを落としてしまいました。
彼は平謝りに謝りました。その姿を見て、私はそんなに大げさな話でないなと思って見ていました。
リゾナーレでもフランベを食べる機会がありました。
男性ばかりの会食の場で女性スタッフがフランベを担当することになっていましたが、見ていると彼女はそんなに慣れていないようでした。じーっとみんなが彼女のことを見ていると、彼女はにこっと笑って「そんなに見られると照れるじゃないですか!」といいました。
その一言でテーブルの雰囲気が良くなりました。
彼女はまだ25歳くらいで長く経験しているわけではないけれども、星野さんはスタッフをしっかり遊ばせているなと思いました。
リゾートという場でお客様に楽しんでもらえるようにどうしたらいいか常に考えているからこそ出てくる言葉です。
こういった事はマニュアルはなく、自然に出てくるものです。
私は「やられた」と思いました。
自分の仕事の軸は自分で決めるものです。
私は以前、二子玉川の美容院に通っていました。
たまたま新しくオープンしたお店で通りすがりに中を見てみるとカットした人と目があった瞬間笑顔が返ってきました。
そこで、私はドアを開けてその日は予約をして帰りました。
彼女に何度かカットしてもらったある日、高野さん、次に来るときに写真を持ってきてくださいと言われました。変なことをする子ではないと思ったので持っていくと、「これでいいです。完璧です。」と言われました。3週間くらいたってそろそろ次の予約の時期だなという頃、私の家に女装した高野登のハガキが届きました。これが遊び心です。
毎回写真を使って遊んだハガキがそろそろ予約だなという時期に届くようになりました。
私もそれをだんだん心待ちにするようになりました。
結局そこの美容院には3年以上通いましたが、ある時彼女が保母さんになるという事でお店を辞めることになりました。私はおめでとうと言いながらも寂しいと感じました。最後の日に花を持ってありがとうと言いに行ったら花束の山で、そこで私は写真をもらっていたのは私だけではなかったと気づいたのです。
どういう仕事をしていてもお客様も楽しませ、自分の立ち位置を強くするという事に気がつく人と気がつかない人がいます。
自分に関わる人の幸せをつくること、楽しませること。
それが自分のライフワークになっています。
どこの誰もがやる仕事を、どこの誰もがやらないレベルに高めるのがリッツ・カールトンの精神。
百年塾ではある瞬間、立ち止まって生き方を考えてみるようにしています。
二ヶ月に1回、自分の人生を立ち止まって振り返ってみることで大事にすべきことを大事にしてきたか?自分が将来のために貯金できているか?振り返って考えます。
長野の善光寺だけではなく大江戸百年塾を増上寺でやったり、他の地域でも開催しています。
■ サービスとホスピタリティの違い
サービスとホスピタリティについて基本的な考え方をお話しします。
ここに講演者のためのペットボトルとグラスがあります。
そこで、私は一つの提案を待っています。
「今日はお水はペットボトルを用意しております。一杯目はついだ方がよろしいですか?」
これができるホテルマンは100人に1人もいません。
でも、「一杯目はついでおいて下さい」と言うと100人が100人ともやってくれます。
人は指示をされたらできるのですが、言われる前にするというプロセスが抜けています。
どういう状態でお客様に届けようか考える行為がホスピタリティなのです。
50回でも100回でも同じように準備する。それはサービス(約束)。
お客様が100人いたら100人とも水の提供の仕方が違うのでは?それを考えるのがホスピタリティ。
ホスピタリティはOSだと話しました。
OSの上でサービスというソフトをどう機能させるか?ここが重要です。
多くの場合、OSがないままサービスをさせようとするからギリギリになってしまいます。
するとホスピタリティの余裕がなくなってしまいます。
カーテンで仕切られた向こうから「はさみを貸してください」と言われたとします。
こちらでハサミを用意して「どうぞ、準備ができてます」と答えます。
カーテンの向こうにいた三人は一人は右手がなく、一人は目が見えず、もう一人は2歳の女の子でした。で
用意したはさみは右きき用で鉄製のするどい大人用のはさみでした。
はさみを準備するのはサービスです。
でも、それでは3人の誰の役にもたっていないのです。
理由はふたつあります。
一つは対話がなかったから。どういうはさみが必要なのか確認をしませんでした。
もう一つは自分の価値観で物事を考えてしまったという事です。「みんな」という言い方は「自分が」と言い換えられます。
相手の価値観が見えなくなる瞬間があるのです。
多くの場合、相手の価値観は見えないままで終わってしまいます。
お客様のために準備をしよう。提案をしよう。これが「お客様の立場にたった」という意味です。
この言葉の持つ危険性に気づいて下さい。
せっかくあの人のためにやったのにクレームになってしまった。感謝されなかった。
こういった上から目線の言葉につながりがちですが、これを平らにしないといけません。
このお客様にはこれでいいのかな?と自分の価値観を消せるホテルマンは伸びます。
これをやらない理由は簡単です。
めんどくさい。それだけです。
リッツカールトンはめんどくさいに価値を見いだしました。
他がやらないならそれは価値だと。
大変なクレームを筋トレと一緒に表現しました。
今日の筋トレは200kg。この人はすごいね!と遊び心をもって臨むことで面倒な事にも取り組みました。
伊那食品では社員がなぜ8時に来るのか?
それは自分が会社に使われてると思っていないからです。
そこが自分が生き生き働く場だと思っているからなのです。
就業規則に則ってではなく、人としての生き方に則って会社に使われないためにいきいきと気持ちよく働いています。
当たり前のレベルをどこまであげるのか?
自分の心が磨かれていけば、他の人に自分は何ができるだろうと考えるようになります。
川越胃腸病院のトイレはピカピカです。
でも、そこを掃除しているのは病院の人でもなく、契約している会社の契約社員の方です。
その方になぜここまできれいに出来るのですか?と聞いてみました。その答えが素晴らしいのです。
「もしここで感染症がおきたら私のせいじゃないですか。それなのに悪い評判は病院についてしまいます。こんな素晴らしい病院に悪い評判がつかないようにきれいにしています。」
掃除のおばさんは掃除をしているのではなく、環境を最高にしているのです。
患者さん、病院の人、自分のために。
自分の中の重力を定めていくことで自分の流儀、型になります。
■ 質疑応答
Q
業務命令でごはんを食べるときに美味しいと言いなさいという例をお聞きしましたが、他にもマネージメントの例を聞かせてください。
A
なにをしようかとパーツで考えるのではありません。
自分がどういう組織にしたいか、どういうチームになったらいいかというのをしっかりと思い描いてください。それが描けていないと何をしたらいいのか声がけはできません。
イメージが出来上がったら、そこに向けて声掛けをするようにしてください。
10年、5年、2年、もっとショートタームでの理念もあります。
最高のホスピタリティを提案するという事は社員同士、パートナーさんは内部顧客と見ることにつながります。すべてのお客様にホスピタリティを提供できる集団になりましょう。
何をやったらいいですか?という質問ですが、例えば営業マンは背広で外にでかけていきます。家に帰ったら靴の埃を払ってお疲れさんと声をかけてあげます。スーツにもしわをとって今日も一緒に戦ってくれておつかれさんと声をかけてあげるようにします。
そういうことをしていると、お客様のことが見え始めるようになります。
このお客様はそういう事をしているなと。逆にそういったことに無頓着な人も見えてくるようになります。
そういう事をしながら海外のエグゼクティブを見ると違いがわかってきます。
彼らはホテルに来るとシューシャインに出しています。いつもピカピカの靴でいるためです。
こんなことができるチームでありたいというイメージを持ってください。
誰もがリーダーになれるわけではなく、限られた人がリーダーであり社長になり、その責任と義務と楽しさを与えられるのです。
ギフトと考えてください。
Q
今日は高野さんの元リッツカールトンの肩書きに興味があってお話を聞きにきました。
世界でトップのホテル、ホスピタリティの代名詞でもあるリッツだから出来たのか?と思っていたが高野さんのお話をお聞きすると高野さんが生み出している魅力があるのでは?と感じました。ここまで高めた背景やきっかけを聞かせてください。
A
どちらがというのはあまり意識をしていません。
もちろん、リッツカールトンを作った人から受けた影響は大きいです。
リッツを創業した最初の5人は全員ヨーロッパからの移民という事もあると思います。
物事を見ていくときのスピード感がアメリカとは違います。
例えば、コーネル大学のものをみるスパンは3ヶ月や1年ほどです。
それに対してリッツカールトンは100年の目線で適正な成長速度を目指しました。
100年の目線がぶれなかったのでバブルでも乗り切ることができました。当時はオファーがすごかったがまだその時期じゃないとほとんどを断りました。射程距離が長いからそういった事もできるのです。
景気がローラーコースターのように上下している時に拡大せず、正しく成長する。そういうスパンの経営者と一緒に過ごすことができたのです。
長野県の戸隠村というところが私の出身地で私は48代目にあたります。
そういうところでは家の中のものごとをみるスパンが長いのです。
自分の代だけでばたばたしてもしょうがない。でもその中でどうするか?を考える文化があります。
高校の時、先生に商人道の話を聞きました。
景気のいい時は少しの投資で大きくもうけようとするが、最大の努力を惜しまないのが日本の商人だと。
この考えとリッツカールトンが一致しているので納得することができました。
Q
100年後をみている社長と自分の代でのゴールを求める社長との違いについて聞かせてください
A
短期的な計画などはもちろんリッツカールトンにもあります。
それは当たり前のこと。一方で5年先のことが見えない時代でもあります。
自分一代でどうにかしたいすごいエネルギーを野心と言い、次の代につないでいく祈りのことを志と言います。どちらのエネルギーも必要ですが、志が定まっているか?それが重要です。
伊那食品工業の塚越社長にも野心があると言われました。
塚越会長に野心が?とお聞きしてみると「自分一代で本当に社員の為で利益を生み出せることを証明したい」というものでした。
短期計画は結果としてついてくるものです。
Q
善光寺寺子屋100年塾について教えてください
A
ポプラ社から出版された『日本人の流儀』という本にに書いています。
長野の仲間と100年先の長野を考えていますが長野以外の方も結構来ている。
遠方から来られる方もいらっしゃるし、毎回参加でなくても大丈夫です。
ご興味があればぜひ来てください。
Q
「お客様のために」に陥らないためにポイントがあれば
A
自分の考え方に遊びをもたせるが大事です。
遊びがないと自分の考えに引っ張られてしまいます。
一方で「お客様のために」も最初は大切なこと。
最初のステップとしては自分の中の価値観を育てるために自分が今できることはなんだろう?と考え、それができるようになったら一回消して立ち位置を変えてやってみてください。
真面目な人ほど遊びがありません。
あるがままにとらえないこと。
例えば駅前の駐輪禁止という看板。看板が立っていてもその目の前にすぐ停めていきます。
そこで、停めなくするような言葉を考えます。
例えば、アフリカに寄付する自転車をここに停めてください。
NPOに寄付で集まる自転車は修理が必要なものが多く、いいものが少ないのできれいな自転車が集まれば大喜びする人もいます。
ものごとに精通すればするほど堅くなってしまいます。
普段の景色と違うところに身を置きましょう。
そうしないと発想がそこから抜け出せなくなってしまいます。
リッツの研修プランを紹介します。
ナインドットと呼ばれるもの
この9つの点を4本の線で全ての点をつなげてください
・・・
・・・
・・・
飛び出すことで4本の線でつながるようになります。
この9つの点は精通している世界で飛び出したところに見える2つのドットがお客様がまだ声に出していないニーズなのです。
2つのドットを可能性の領域と呼びます。
可能性の領域で仕事をするホテルマンがいるホテルになろうとしています。
スマートフォンを今では多くの方が使っていますが、この中で10年前に指でシュッシュする携帯が欲しいと思っていて、スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表した時、「これだよ自分が求めていたのは!」と思った人はいるでしょうか?
そういった可能性の領域に持って行くアンテナとして遊び心が必要です。
ウサギとカメの童話があり、企業研修などで圧倒的だったウサギは余裕で寝てしまったけれども努力し続けたカメが最終的に勝つんですなどと話されるが、実際のところウサギはそう簡単に寝てくれません。
そこで、絶対に亀が勝てるレースを考えることにします。そうすると色んなアイデアが出てきます。
海でやって島をわたってくるレースはどうだろう?
1万年かかるレースはどうだろう?鶴は千年、亀は万年というので。その間にウサギは死んでしまう。
ウサギが勝負を降りるように色々と考えます。
大事なのはウサギが降りること。ライバルとは競争したくないのです。
勝負しなかったら負けません。
戦略会議
戦略とは戦いをはぶくと書きます。
戦わなければ負けないのです。
そこで、リッツにとって圧倒的なものはなにか考えました。
めんどうなものに価値を置くこと。
そして、これをみんなで共有できるか?そこで大切なのが理念とビジョンです。
東洋思想では戦わずして勝つというものがありますが、リッツカールトンは戦わずして負けないという思想を持っています。
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