鎌倉投信・第4回「結い2101」受益者総会レポート(5)パネルディスカッション午前の部 ― 2013年09月06日
8月31日(土)、鎌倉投信 第4回「結い2101」受益者総会が京都で開催されました。
レポート第五弾は午前の部のパネルディスカッションです。
予め用意された講演ではなく、出たとこ勝負のパネルディスカッションは毎回受益者総会の華と言えるコンテンツです。今回も鎌田社長がモデレーターとなってリラックスした雰囲気でパネルディスカッションは進行しました。
新井さんが企業に訪問して面談する時に最初に自分から30分くらい鎌倉投信の理念を念仏のように話すと相手の反応でいい会社かどうかフィルター出来るというのは面白いですね。
亀田製菓とフェリシモ、地味な会社とオシャレな会社というイメージがありますが社長のお話を聞くとどちらも小さな事からコツコツと取り組まれているんですよね。社員が力を発揮出来るような環境を整えて伸び伸びと働いてもらっている印象を受けました。
日時:2013年8月31日(土) 10:00〜16:50
場所:国立京都国際会館アネックスホール
〜そうだ、京都でやろう!〜
伝統と革新が息吹く千年の古都で「投資」について考える
【パネルディスカッション・受益者との対話】
パネラー 田中通泰氏
矢崎和彦氏
新井和宏氏
モデレーター 鎌田恭幸氏
鎌田:
失われた20年で失われてしまったものは多くあります。社会的課題を企業活動を通じて解決することで人は豊かに環境も豊かになると考えています。鎌倉投信ではこれからの時代に本当に必要な会社に投資していますが、投資に至ったポイントを新井さんから。
新井:
まず亀田製菓さんから。グローバル企業という観点で日本に残る理由を考えてみました。すると、グローバル企業と呼ばれる会社でも日本にないといけない理由が見あたらない会社が多いことに気づきます。グローバル企業は独自の色がないといけません。また、日本のそこの場所にある理由がないと雇用を日本で生みません。
亀田製菓はお米は日本で作っているし、米は主食でそれをお菓子にするのは日本らしいことだと思います。
グローバルニッチと呼ばれる会社は地方に存在する傾向があります。新潟という地方にあって雇用を生みだしている背景には東京のようにお金で人が動かないという長く勤める人が生まれやすい土壌があるとも考えています。
亀田製菓は今後どの方向に行くんだろう?と考えていろんな人に聞いてみたところ、海外に向かうというはユニークだと考えました。
また、三世代が一緒に働ける職場というのも評価しています。
続いてフェリシモさんについて。社員さんに会う機会が多かったんです。特に環境問題の会などに行くとよくフェリシモの社員さんに出会いました。それで、こういう会社なんだなと。
フェリシモでモデルをやってる方とも知り合いになりましたが、デザインがすごく良くなっていると話していました。外の人の意見を汲んでくれるという声も聞いています。
鎌田:
いろんな投資家がいますが、その中で鎌倉投信はどう見えているのか。お客様の印象をお願いします。
矢崎:
個人投資家の前で話す機会が年に2〜3回ありますが、聞いていただける雰囲気がなく大変苦手です。
今日は全く逆でびっくりしました。最初に流れた鎌倉投信さんの受益者総会に向けての映像にもびっくりです。
ここには気持ちや精神に呼応された方が集まっているので場の雰囲気も違って感じます。
鎌田:
お二人には「株価や業績の話は必要ありません。なんのための事業かという想いを話してほしい。」とお願いしました。数字は運用責任者の新井が全て引き受けています。想いの無いところには夢はありません。そして成長もありません。
田中:
ユニークな存在であると感じました。一般の投資家とも違いますし、600人近い方が集まることにもびっくりしました。
ここにいる皆さんは何に投資しているのかわかって投資されています。それで運用成績もいい。新井さんは偶然だと言いましたがそういう事になる法則があるのかもしれません。
鎌田:
田中社長は実直な方。最初はいやだと言われました。いい会社じゃないし、鎌倉投信の受益者の前でなにを話せばいいのかと。亀田製菓には様々なお菓子がありますが、ハッピーターンという名前にはどういった由来があるのでしょうか?
田中:
オイルショックで日本経済が錯綜した時代、幸せがもどってきたらいいよねとつけた名前です。
日本航空さんの経営が傾いたときに機体にペインティングして応援したりもしました。
鎌田:
長寿商品はどうやって生まれるんですか?とお聞きしても「あまり考えてないんだよね」というような答えが返ってきます。311のあとも就職がキャンセルになった人をたくさん採用したりもしていました。
<会場からの質問>
矢崎社長のお話は頭に景色の浮かぶ言葉で話されると感じました。
ともにしあわせになるしあわせが社員に浸透していると思いましたが、そういったことは大切ですが実現するのは難しいと思います。御社ができた理由はなんでしょうか?自慢をひとつお願いします。
また、新井さんからも自慢ポイントをお願いします。
矢崎:
自慢できるのは人です。仕事をしていても凄いと思いますが。
社名をフェリシモに変えたのが24年前。最初はちんぷんかんぷんだったけれども、少しずつやってきました。そうするとだんだん社内に事例が共有されて浸透していくようになります。
お客様やメディアの評価も受けていくうちにそういうことをしたい人が入社してくるようになりました。
会社には風土と制度がありますが、制度はすぐできるけれども、風土は信じて愚直に貫くことが早道です。
新井:
水曜午前中に行くと面白いんです。オープンスペースで部活をやっているので周りの話しを聞いてみています。そうすると笑い声がそこら中で聞こえるんです。社員だけじゃないんですよ。取引先やお客様も集まって商品開発をしているんです。
この風土は隠せません。あれが金融的に言うと担保です。
<会場からの質問>
グローバルな企業になるという中でハーシーの話が出ましたが、その中でオリジナリティを守るという話がありました。その辺りをもう少し聞いてみたい。
田中:
ヨーロッパで発達したお菓子がアメリカに伝わって手作りだったのが機械化されました。それぞれ発展の過程で1900年くらいからの話です。創業者のチャレンジ精神、執念が個人的に勉強したい点です。
ハーシーは1945年に亡くなりましたが、2000年に株式を預かっていたファンドはポートフォリオのバランスが大切だと売却を検討するという考えられないような事態が起きました。これをどういう風に考えていけばいいのか?
地域との共生はあまり無理をしないでやっています。競争力はコストを下げることですが、弊社では10年間ベースアップを継続しています。
新井:
アメリカのオーガニッククッキーのM&Aも創業者がアレルギー持ちでも食べられるクッキーをという事で作りました。自然から恵みをもらっているだから自然を大切にしないといけないという話を聞いて幹部の方が感銘をうけていました。
鎌田:
田中社長は元々大手金融機関に勤めていた方。危機感を奥深くに秘められた方で「優れたリーダーが必要なものは危機感」というのは元世界銀行副総裁の西水美恵子さんの著書にもある言葉です。
<会場からの質問>
4月に投資被害にあってしまいました。どうやったらいい会社を見極められるんでしょうか?
新井:
いい会社というのは完璧な会社ではありません。完璧な人間がいないように、完璧な会社もありません。
会社の看板は見ることができますが、会社というそのものは見ることができません。
いろんな問題が起きるけれども、その中で経営者がいい会社になろうとしているか判断しないといけません。感謝の気持ちがたくさんあるというのはいろんな方の協力によって成り立っているという謙虚さの裏返しです。
我々が会社訪問した時、最初の30分で我々の理念を話すようにしています。そうするとこんな金融機関が!と喜ぶタイプと「おまえ、俺の話を聞きに来たんじゃないのか?」というタイプに分かれます。
いい会社というのは前者のケースで、いい会社を見分ける方法として念仏のように理念を語るようにしています(笑)フェリシモのように雰囲気が大事なんです。会社の気をみてほしい。
他には細かいところも見ています。例えばお客様用ではなく社員のトイレ。
会社見学している最中に急にお腹が痛くなってもう我慢できないと社員用のトイレに入ります。そこで見るのは水回り。会社に時間を提供しているだけで愛を感じていない会社では手を洗った後に水回りを吹いたりはしていません。
<会場からの質問>
実はみんな知っている。個と全体がつながっていない。というのがまさにその通りだと思いました。
一歩を踏み出せているきっかけ、秘訣を教えていただけますか?
矢崎:
ああは言いましたが、うちのトイレは大丈夫だったんでしょうか?(笑)
対象が大きすぎてわからなかったという事もあります。その場合でも今自分がやってることを少しずつ置き換えてみるというのが大事です。
段ボールに色をつける、書店でカタログを売る、日常をベースに近づきたい理想に近づけていくのです。
アクションすることで知恵が生まれ、進化していきます。そのうち周りを巻き込んでいくようになります。得意なところでつなげていきます。
鎌田:
午後の部は何百歩も踏み出した人のお話なので楽しみに
<会場からの質問>
元気な人が入ってきてくれるという話がありました。働く側からするとやりたいことができる会社なのかな?と感じました。社員の笑顔がきれいだと感じたのですが、社員の笑顔を担保するのに気をつけていることはなんでしょうか?
矢崎:
入社式で長く働いてくれる人をという話をします。君たちが輝けるように役割と舞台は用意すると。
ただ、全員がピッチャーでは野球はできないので部活やジョブクリエーション、プレジデント30といった制度があります。
プレジデント30というのは30歳になったら社長にという制度で50周年記念に50社起業することも考えています。いずれにしてもパッションを維持できる状況をつくる制度をつくっているつもりです。
鎌田:
地元で三代で働く環境もありますが亀田製菓はどうでしょうか?
田中:
これといって思い浮かばないのですが・・・共稼ぎも認めています。
代々来ていただいているのはありがたいのですが、部長以上の子弟は採用しないという条件はつけています。
鎌田:
亀田の理念に会社を私物化しないというのがあります。
<会場からの質問>
地方の企業は地元でずっと働くという人が多いと思いますが、地方の中小企業に海外展開にあたってこういうことをやっては?というアドバイスがあれば教えてください。
田中:
海外展開は四苦八苦しています。海外赴任については例外を認めない方針で基本的にやっています。
問題は海外に順応できる人なのか見極める必要があるというところです。社員の半分以上は海外に行ったら現地社会に入り込めない人だと思っているので現地の生活を楽しめる人を送り込むように気をつけています。
鎌田:
日本初のグローバル企業はこれから生まれていくと考えていて、そういうところに目を向けています。
文化をつくるのに15年はかかります。社長は人知れず努力しています。社長は圧倒的な努力をしないといけません。それを10年15年やりつづけるのです。社長は徳がないといけません。徳を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか?人のために時間を使うのです。つながりを大切にしないといけません。
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