第三回鎌倉投信受益者総会レポート(3)ツムラ 加藤社長講演 ― 2012年09月30日
鎌倉投信受益者総会レポートを続けます。
□ 日時:2012年9月29日 9:30~12:15(第一部) 13:15~16:00(第二部)
□ 場所:建長寺
ツムラ加藤社長について新井さんからの紹介
午前の部は鎌倉投信が考えるテーマ「共生」について二社の投資先のいい会社の社長からお話をいただく。
まずはツムラの加藤社長。6月に就任されたばかり。それまでは芳井社長(現会長)。経営多角化で悪い会社だったのを10年かけていい会社にした。
役員10名以上ごぼう抜きで新社長に選ばれた方。
加藤 照和社長
鎌倉投信さんとの付き合いに関して言えば、昨年までは自分も受益者として参加していた。まさかここで話すことになるとは思わなかった。
ツムラの社長が変わったという事で、ツムラをさらに良くするために頑張っている。
キーワードは人。
第二回日本でいちばん大切にしたい会社大賞で経済産業大臣賞を受賞した。受賞により、ますます日本の社会に貢献しないといけないと社員一同邁進している。
漢方はなかなかわかりにくい。漢方記念館に来ていただくとすべてわかるが漢方の原料はほとんどが植物。生薬が人とどうつながって皆さんの健康に寄与しているか。
【医療用漢方薬について】
日本国内が市場
売上は連結で1,000億円に届きそうなところ。医療用医薬品として8兆円の市場の1.3%に相当する。少ないと思われるかもしれないが、そのうち漢方は1,200億円。漢方の中では83%のシェア。
海外展開については西洋医学が届いていない地域で漢方が有効であればそこに進出していきたい。
医療用漢方薬の需要がどう拡大しているか?
この10年で数量は二倍になった。患者さんや処方される先生も増えている。
漢方の教育が全国の医学生向けにされるようになり、毎年漢方を学んだ先生が増えている。
生薬はまだ人類が発見していない成分も含まれているため、分析を進めている。科学的に証明された漢方にすることで西洋医学と漢方のマッチングを目指す。
今後、高齢者の疾患や女性特有疾患も増えていく。
また、心とからだの問題もある。ツムラでは漢方を通じて健康寿命を伸ばしていきたい。
【漢方について】
日本のこれからの医療に漢方が大事な位置づけになるのではないか。
実は漢方は中国の医学ではなく日本の伝統医学。中国では中医学。韓国では韓医学。日本の伝統医学であるため、日本で独自にあみだされた処方もある。これをしっかり守りながら生かしていく。
保険が適用される漢方薬は日本全体で148種類のうちツムラでは129種類取り扱っている。
漢方薬を構成している生薬は118種類。
今日は展示ブースにも生薬の見本を展示しているので、ぜひ見て欲しい。
葛根湯は中国の古典では必ずしも風邪薬ではない。
効能は感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん。
炎症性疾患などにも効果があるが自己判断ではなく先生に見立てをいただいた上で服用して欲しい。
一回2.5g 67円 保険ではその3割負担になる。非常に安価。
漢方で風邪の治療は難しい。
体調や症状によってたくさんの選択肢をもっている体質や胃腸の状態によって与えてはいけない薬もある。胃腸の弱い人に葛根湯は胃腸障害をおこす。そのため、ツムラではほとんど医療用に販売している。
葛根湯とアスピリンを分析した3Dグラフ
アスピリンは成分がはっきりしているのに対して葛根湯は7つの成分をまぜているので複雑な構成になっている。このあたりが漢方が科学的ではないと言われる所以。
しかし、この組み合わせの妙が副作用を軽減したりしている。薬のしくみが西洋医学と全く違う。
【理念経営】
社長に就任してから中国などを含めて3,800人の社員全員と挨拶や乾杯しながら今後について話している。悪い会社からそれなりの会社になって、これからいい会社へ向かっている。
人の判断ではなく、経営理念をはっきりとすることが大事
「自然と健康を科学する」これがツムラの経営理念
日本の医療にしっかりと貢献し続ける
しかし、一番下では一人ひとりが握手しながらまわっている。
漢方薬を科学的に分析してこのレベルで販売している会社は世界中でツムラだけ。
プラントなども全て独自技術になっているため、全て考える必要がある。
理念にもとづいて行動する他に、自ら考える必要がある。
【障碍者雇用について】
企業の成長は人の成長。障碍者やシルバー人材の手も借りている。障碍者では机を並べて仕事のできる方を採用している。アスペルガー症候群の方と一緒に仕事をしたが、すっかり馴染んでもらい、最近では忘年会にも参加できるくらいになった。
一般社員と肩を並べて仕事ができるようにすることが大切。
障碍者雇用率は3.93%までのびている。新卒採用で増えても期中のMRの中途採用でだんだん比率は下がっていく。まず社内では4%を目指している。人口統計的には5%以上が企業の責任と考えている。
原料の生薬は118種類。中国、ラオスでも生産しているが100%日本と同じ安全管理でやっている。
中国でも障碍者雇用を行なっているが、国内では夕張で。国内で生薬の栽培を増やしていくことで農業や一次産業再生にも寄与できるのではないか。
夕張ツムラの取り組みについて
畑の裏は熊がでるが安全にやっている。採取した生薬は茨城工場で漢方薬を生産。
夕張ツムラも震災の影響で2ヶ月影響が出た。(茨城工場の震災被害からの生産再開まで)
手探りで考えながら進めている状況
北海道エリアで「てみるファーム」という知的障害者の自立を目指す農場と提携して生薬の栽培している。健常者3名、障碍者9名で営利企業として。これはなかなか製薬業界にはないモデル。国内にもこういった輪をひろげていきたい。
てみるファームは2003年につくられた施設で主にしいたけ栽培を行なっている。
農業を実践することで障碍者の多数雇用を目指している。ツムラでは生薬栽培の一部を委託しているが、この畑での仕事は通常の農作業と同じく雑草の除去や収穫など。てみるファームで働くようになって障碍者の生活にも変化が。お母様に話を聞くと、大変な仕事だと思うが日焼けで顔が真っ黒になっても会社に行くのが嫌だというようなことを言わなくなったとのこと。
やりがいを感じる 責任ある仕事を障碍者にも。
そうすることで雇用機会だけなく充実した生活環境にも寄与する。
てみるファームの池田所長はとても辛抱強い人。一番嬉しいのはこのコメント
「最終的に薬になるのをわかってやっている」
達成感を感じて働いてくれているのが嬉しい。そういった事で返品はやめて欲しいと先生にも伝えている
患者さんには飲み残しのないように
漢方事業を通じて心とからだの健康に
認知症の周辺症状にも効果がある。
認知症フォーラムの司会は元NHKアナウンサーの町村さん
フォーラムでコラムも書いていただいている。
生薬事業では雇用の拡大や一次産業の再生にもつながると考えている。一定割合を生薬、残りを米にすると農家の収益も安定する(輪作として米を栽培しない時に生薬を栽培するなど)
休耕地問題の解決にもつながるのではないか。
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