『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』著者セミナー(3)パネルディスカッション2012年12月10日

『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』著者セミナーレポートの最後です。


パネルディスカッション
関わるすべての人がWinを感じ取れるビジネスモデル「Winの累乗」を実践するには?


パネルディスカッションではパネラーとして日本マイクロソフトの牧野さんと鎌倉投信の新井さんが最初にプレゼンをして、そのあとパネルという流れでした。

セミナー全体として、仕組みを小暮さん、NPOの立場から小沼さん、企業の立場から牧野さん、株主の立場から新井さんが話すという事で様々な立場の人の考えが聞けて良かったです。


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日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 牧野益巳 氏

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インドにおけるICT教育:

外資系ITベンダーがどういったWinを作ったかの実例を紹介

一つはインドの教育支援、もう一つは日本でどんなことをしているか


インドは人口12億人の国でITが盛んな一方で経済格差、教育格差が激しい国。

絶対貧困層が一番多いと言われていて、そこから抜け出すことができない。

教育も受けられず、国全体としては経済が伸びながらも二極化している。


そこで、ITを活用して教育と雇用のミスマッチを是正する取組を行った。


研修した教育者 20万人 

その教育者が教えた人数 1,000万人


PCを使った教育は面白いので子供の興味を惹く。

そこで学んだ子供がITの職を始める事でだんだんと社会からドロップアウトしなくなっていった。

子どもがITを習うと親も習い始めるようになった。


こうした取り組みはインド政府からも評価され、2008年には10年計画で世界規模で500億円かけて教育支援を行うことにした。


世界中で大人も参加できるITアカデミーを開いた。


研修した教育者 70万人 

その教育者が教えた人数 3,500万人


本業で社会的なベネフィットを起こした。


教育コミュニティへ支援を行い、教員のレベルアップを図った。

それにより全体的な経済発展シナリオへ。

就業機会が拡大し、第一次、第二次産業から第三次産業へ労働力のコンバートが促進された。


こうした取り組みが評価されてインドにおけるマイクロソフトは国に根ざした会社と思われるようになった。

特に政府と中小企業でそうした評価が高い。

一つのエコシステムを作り上げた。


日本での取り組み:

日本では5万人の教員へ支援している。

他にも元気なコンピューターおじいちゃん、おばあちゃんを作りたいと考えている。

ニートへの就労支援も。


一年に三カ所くらい集中的に取り組む地域活性化プロジェクトというものがある。

これまで40カ所くらいで行っており、今年は岩手県が対象。


若者が苦労している現実。

希望に乏しい世の中へ。

失業率やワーキングプアといった課題が若年層に表れている。


社会に求められていることをICTで支援する。

セーフティネットで自立支援

コミュニティーを作り、尖った人材を育成する

国際競争力の復活


2011年に小学校に入学した子どもが大学を卒業する時、世の中の仕事の約60%は今存在しない仕事になると言われている。


マイクロソフトの企業ミッション

「すべての人々の可能性を最大限に引き出すための支援」


マイクロソフトでは限界集落の復活や障害者の方就職、ニートの再就職を一緒になって取り組んできた。


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鎌倉投信株式会社 取締役 新井和宏 氏

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株主と企業のあり方について:

キーワードは「いい会社をふやしましょう」

営利企業だけではなくNPOも作った

小さな金融ベンチャー


会場内で投資信託で投資をしている人?あまりいない。

銀行や証券会社では売らず、口コミで直接販売している。


企業の持続可能性と投資


築85年の古民家を再生するところから始めた。

750坪のうち500坪を占める裏の畑や山林の手入れも行っている。

なぜ投信会社が古民家再生や畑や山林の手入れを?

 →自分たちがいい会社、日本が抱える課題解決の当事者であるため。


小さな会社の取組ではあるが、実際に鎌倉投信の考えに共感していい会社になると言ってくれた上場企業も存在する。

 →女性の雇用に真剣に取り組んだ総合臨床ホールディングス。


日本で将来に何を残したいか?という価値観。

投資は金儲けではない。


自己へのリターンの最大化→投機(儲かればよい)

社会性へのリターンの最大化→寄付(自分は損するが社会をよくする)

この中間が投資とすると、自己だけでなく社会へのリターンも受け取るのが投資


社会に"長く"何かをし続ける。

お金に関心をもってください。

お金を実際に企業に届ける必要がある。


こういう事を言うとSRI(社会的責任投資)だと言われるが違う。


SRIと鎌倉投信の違い

 アンケート ⇔ 直接

 客観的 ⇔ 主観的

 形式的、網羅的 ⇔ 実質的、持続的


SRIでは全体の社会貢献度のスコアが高い会社が投資対象となる。

鎌倉投信では本業で社会貢献してくださいと言っていて、そこを重視する。


投資先の事例
エフピコ:


障碍者雇用率16.3%

なぜこんなに障碍者雇用率が高いのか?

彼らがいないと利益があがらないから。


日本における食品トレイの半分がエフピコ製。

そしてリサイクルトレイを作ることができるのはエフピコだけ。


スーパーなどで回収された食品トレイの分別を障碍者が担当している。

健常者がこの作業がやると単純作業の連続で集中力が落ち、生産効率下がってしまう。

しかし、障碍者は単純作業をずっと集中して出来るため生産効率が下がらない。


原油価格が上がれば上がるほどリサイクルトレーを作れるエフピコは原材料費で他者に対して優位に立てる。

こういう話をすると聞いた人が家に帰ってトレイの裏を見てエフピコ製か確認して子どもに自慢話をしたり。


いいことをしていて、それを利益に結びつけられる会社はある。

それを見せるのが鎌倉投信の仕事。


デジタルハーツ:

創立して半年でマイクロソフトに採用されたソフトウェアのバグ(不具合)を見つけ出す仕事をしている会社。


マイクロソフトに乗り込んで社員のデバッガと不具合を見つける競争をした。

日本人は細かいのでアメリカ人が感じない不具合に気が付く。デバッグすると差が明確に出る。

競争に圧倒的な差をつけて勝って採用された。


創業メンバーは全員フリーターで社員、登録社員6,000人の半数は元ニートやフリーター。

彼らは仕事をするのにも時間がかかるだけ。得意な分野ではやる気が違う。


フェリシモ:


社員全員がCSR担当者であり、専門の部署は不要と言っている。

何が大事が?

CSR担当を設置すると、あそこがやればいいと他人事になる。

自分事にして欲しい。



そのようなことをしていて企業として儲かるのか?


ヤマトHD:

荷物1個につき10円を東日本大震災関連に寄付すると発表した。

利益の1/3に相当する金額。それを聞いて人はどう選択するか?

宅配便のサービスはどこも似たようなサービスレベル。そんな中でどこを使おうとするか?


事業に共感できるかといった視点が選択肢の一つとなり、どんどん取扱いが増える。

特に東北地方でヤマト運輸が選ばれる結果となった。



トビムシ:

社債を鎌倉投信が全額購入した。

岡山県西粟倉村と岐阜県飛騨で活動している会社。


森林の間伐のコストにかかるコストを間伐材の商品化で稼ぎ出すというビジネス。

地域再生と林業再生に取り組んでいる。

この会社にできなければ日本の林業に未来はないという気持ちで投資した。



なかなか株主の理解が得られない活動ではあると思うが、こういう視点を持った所が増えて欲しい。



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パネルディスカッション

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小暮)

NPOと企業のかけあいについて小沼さんから


小沼)

コンペティターからコオペレーターへ変わりつつあると感じている。

これまでNPOは企業に対して公害問題や環境問題などで敵対する「北風」アプローチしていた。

今は「太陽」。NPOと企業が一緒になって取り組む方向へ。企業と組むことで大きな取組ができる。

小さいレベルではNPO同士の協業も生まれている。

社会の課題が解決できればいいという目的は同じ。

一緒に同じ方向に向かうようになった。


小暮)

企業とNPOではカルチャーや言語も違う。課題は?


小沼)

「留職」は一つのアプローチ。

企業もNPOも相互に理解しあう必要がある。

留職プログラムでは一定期間企業人が外に出る。

NPOと企業間での人材交流が大切ではないか?


小暮)

企業同士のコラボレーションで面白いと思うのは?


小沼)

留職プログラム採用企業同士をくっつける情報交換会を行った。

将来的に何か出来ないか?と考えている。

チームになって複数社で共同でなにかやって欲しい。


海外の事例ではIBMはFeDexと組んでいたりする。

つなぎ役になって敵同士と思われている会社同士をお見合いさせる。

NPOはつなぎ合わせるのが得意。


【地域とコミュニティーについて】


小暮)なぜ企業は社会のことまで考える必要があるのか?


牧野)

日々の仕事は大変で短期的な利益も大事だが、それだけではない中長期的に正しいことをする必要を感じている。

「ソーシャルバリュー」

企業市民としてどうなのか?


新井)

「三方よし」という考えは日本において古い時代からあったが、その後西洋化の流れの中で収益性を第一に問われるようになった。

今は持続可能的でない短期的な利益重視から中長期的な利益への過渡期だと考え、それを解決するのにベットしている。


小沼)

行政がやっていた部分を他が担当するようになりつつある。

企業だけではできない部分を相互補完する。行政、企業、NPOの三者が共に取り組む。


牧野)

日本が置き去りにした問題があちこちで起きている。

世の中を変える時に一つの力ではできない。個人でも行政でもNPOでも。

これまで以上にNPOの重要性が増してくる。



小暮)

Q.こういった取り組みは働いている会社の人にとってどういう反応、感触があるのか?


牧野)

先ほどの話でもあったがCSR部門ができるとそこがやるようになってしまう。

全社で社員を巻き込みながら取り組む。短期、長期混ぜたアプローチ。

それらを数値化して確認してみる。

コミュニティーにおいていいコーポレートか?という質問を社員にするとそのポイントが年々向上している。

役員は全員強く感じると回答し、一般社員含めると90%以上がいい会社だと考えている。


新井)

いい会社になりたいといって変わった会社がある。

また、アメニティというグリーンシート公開会社では鎌倉投信が投資したことによりWBSが取材に来たと言っていた。

地方で知名度のない会社が「テレビでいい会社と言っていた」と地元の人に言われたと喜ばれたケースも。


小沼)

個人が社会を変えるのは何か?そういった取り組みは目が輝き出す。

青年海外協力隊から帰って来て大学の同期と話したら「相変わらず熱いな。早く会社に入って現実を知れ。」と言われたのがNPOへ向かったきっかけ。

日本の元気をもう一度。採用面接でそういえば自分はこんな事を話したなとを思い出すように。



【会場からの質問】


Q  働くことについてどう考えているか?


小沼)

自分の志を体現すること。

今が人生で一番楽しい。こういうことをやったら自分の周りが変わったと考えている。


新井)

人の役にたつことをやる。

実感があればそれでいいと考えている。


牧野)

会社の力を使って世の中に何か起こしたい。

NPOと組んで喜んでもらえると嬉しい。


Q 実現したい未来。感じている壁、不安などについて聞かせて欲しい。


牧野)

不安なのは格差。先進国とそうでない国の格差が色々な問題を起こしている。

この解決には時間がかかる。

かかる時間をいかにして短くすることができるかわからないのが不安。


新井)

日本は課題先進国。裏返すとこれを最もチャレンジできる国でもある。

そんな社長がたくさん活躍することが望ましい。

不安はまだ知名度のない会社なのでたくさんの人に鎌倉投信を知って欲しいという事。


小沼)

課題解決先進国へ。

目を輝かせて取り組むことをソリューションとして提供する。

解決が楽しいメンタリティを生み出したい。


Q 5Cを生かした事業は学生からの起業で出来るか?


小沼)

できる。自分はマッキンゼーを三年で辞めたので社会人経験はほとんどない。

一生懸命やっているとできない部分は誰かサポートしてくれる。

面白い未来を描けていれば。


小暮)

何をしたいのかによる。

企業経験がないと大変。特に企業とつなげること。

企業の力を100%引き出したいと考えた時に企業経験がないと難しい。

できるが、難しい。



Q 優先順位を「株主」「社員」「社会」「消費者」でつけるとすると?


牧野)

優先順位はつけられない。全部大事。全体のバランスが崩れるのがいけないと本社からも言われている。

すべて大事だが、その中でできる・できないを考え抜く。


新井)

あえて言うなら「社員」「お客様」「社会」「株主」の順。

社員が元気で働くことでお客様が喜ぶ。そうして一緒に社会を形成している。株主はそういった活動の縁の下の力持ち。


Q なぜこのように話せるのか?


小暮)

好きだから自信を持ってできる。


新井)

使命感。誰かがやらないといけない。みんなが磨いてくれる。


牧野)

誰かの為になりたい。それを実行できるポジションにいるのがモチベーション。他人のためにしたことは返ってくる。


小沼)

応援するという立場。やりたい人と一緒になってする。説得ではない。


ファンド観測:ひふみ投信(2012年11月)2012年12月10日

ひふみ投信の月次レポートの内容を紹介します。

 ひふみアカデミー(→こちら
 月次レポート「ひふみのあゆみ」(→こちら

【11月の売買動向】
円高・内需関連・小型株・割安という流れから円安・外需関連・大型株・株高へと転換したこともあり、ひふみ投信ではポートフォリオに大型株の組入れをし始めました。
上位銘柄にも京セラ、ファナック、三菱地所、三菱商事の名前が登場しています。
また、キャッシュから株へ転換も進みました。
過去の衆議院選挙の後では株式市場は夢から覚めて現実を見据えた株価に収まる傾向もあるため、引き続き注意しながらの運用になりそうです。

【ひふみ投信の日次リスクの推移】
 :基準価額
 :日次リスク(250日)

ひふみ投信の日次リスク(250日)を見てみると震災で一時的に20%程度まで上昇したものの、その後ゆったりと下降傾向にあるのが見て取れます。
11月末日時点での日次リスクは10.99です。

【2012年11月末現在の組入上位銘柄】

【概要】
 過去1ヶ月  2.12%
 過去1年   18.33%(R&I騰落率ランキング 日本株アクティブ部門 12位)
 過去3年   20.09%(R&I騰落率ランキング 日本株アクティブ部門 10位)
 純資産総額  29.54億円
 組入銘柄数  74(前月比+8)
 株式比率   92.01%
 現金比率   7.99%


ファンド観測:結い2101(2012年11月)2012年12月11日

結い2101の2012年11月の模様を振り返ります。
参考資料は結いだより第33号です。(→こちら

【今月のいい会社紹介】サクセスホールディングス
民間の保育園を運営する会社です。待機児童問題に取り組んでいる他、保育士さんの人材育成にも力を入れています。
また、自然教育にも力を入れていて鎌倉投信の投資先でもあるトビムシの家具や遊具も採用していていい会社同士のコラボレーションも生まれています。
身近なところでは鎌倉投信の受益者総会のキッズスペースを担当されたのもサクセスホールディングスさんでした。

【11月の売買動向】
新規に1銘柄追加されたことが発表されていますが、まだ組入れ比率が低く公表されていません。
結い2101では基本的に均等に組入れを行なっていますが、比率が比較的低かった和井田製作所、SHOEIを重点的に買い付けを行ったそうです。
入金が多かったとレポートにもありましたが、資金流出だったのは11月を通じて3日だけでした。
それにしても日経平均があんなに上がったのに逆に下がってしまう結い2101って本当に面白い値動きしますね。

【その他】
・QuickMoneyLifeで鎌倉投信の鎌田社長のインタビュー記事が掲載されました。(→こちら
・12月15日に鎌倉投信が作ったNPO法人いい会社をつくりましょうの創立記念セミナーが開催されます。
 (→こちら
・鎌倉投信に新しく社員が入社しました。28歳の稲葉さんです。
・My鎌倉倶楽部というインターネットサービスが2013年2月に開始予定。個人の取引内容や残高確認などが行えるものです。システム変更で自分の損益が確認しずらくなっていたのでこの改善は嬉しいです。

【結い2101の日次リスクの推移】
 :基準価額
 :日次リスク(250日)

結い2101の1年間(250日)の日次リスクは11月末時点で6.4%になっています。
震災前と比較するとまだ高いとも言えますが、かなりリスクを抑えた運用をしているのが見て取れます。

【2012年11月現在の組入れ銘柄など】

【概要】
 過去1ヶ月  -0.60%
 過去1年   6.57%
 過去2年   9.29%
 純資産総額  22.17億円
 組入銘柄数  39(前月比+1)
 株式比率   64.0%
 債券比率   2.0%
 現金比率   34.0%


株主(出資者)として出来ることってなんだろう?2012年12月13日

10月に未上場の会社に投資を行いました。
未上場なので株券は電子化されているわけでもなく、このように株券が送られてきました。
物理的な株券を手にするのは自分にとって初めての経験です。


先日のセミナーで鎌倉投信の新井さんがこんな事を話していました。
「まずは社員が大事。社員が元気に働くことでお客様が喜ぶ。そうやって一緒に社会を形成していて、株主は縁の下の力持ちのような存在」

本来的に株主になるという事は自分が儲けることを第一の目的として、日々値段の変わるチケットを持つ事ではないと自分は考えています。(そういう考えを否定するものではありません)

いい会社にはいいお客さんがいて、いい株主がいる。そういうのが理想的ですよね。
ミュージックセキュリティーズのセキュリテ被災地応援ファンドやトビムシや池内タオルのファンドに投資して、更にお客さんとしても関わることでそういった事を心底感じるようになりました。

今回投資した会社がしっかり利益を出して、社会に対していいインパクトを与え続ける存在であり続けようとすることを、株主という立場からしっかりと見守りたいと思います。

被災地応援ファンド 復興 蔵めぐりツアー(1)八木澤商店2012年12月13日

12月8日(土)に一ノ関、陸前高田、大船渡地域のセキュリテ被災地応援ファンドで応援している会社を見学する復興 蔵めぐりツアーがあったので参加してきました。

岩手県に足を踏み入れるのは今回が生まれて初めて。
一ノ関からバスに揺られて向かったのは八木澤商店さんの新工場。


10月に竣工したものの、追加工事が入っていて年内稼働開始を目指しているということでした。

八木澤商店九代目社長の河野さん。
嬉しそうに醤油を作る工程などを話す姿が印象的でした。

震災の後、すぐに再開するべく準備を進めていたが、4月7日に発生した余震で借りるはずの建物が壊れてしまい、大東町に事務所を借りることになった。

八木澤商店はもともとは酒屋だったが、大正時代に味噌・醤油醸造に転換した。
今は事務所、OEM先、工場など4ヶ所で仕事をしている。
陸前高田には事務所兼店舗があるが、売っている商品はOEMで生産をお願いしているもの。
製造ラインは花泉にある。こんにゃく工場の一部を借りてつゆ・たれ工場に。

この場所は元々小学校の校庭だった場所。
廃校になったので解体して売りに出る予定だったが、それまでに市議会の承認を得たり時間がかかってしまうことから校舎含めてまるごと買うことにした。
もともと市が見込んでいた解体費用を売却費用から差し引いた金額で買うことで市議会の承認を待つこと無く工場建設に着手出来るようになった。


本当は陸前高田で醤油を醸造したいが、工場を作るとなると排水設備なども必要になるが、現状ではそういったものが厳しい。

一ノ関の新工場は5月に着工してまだ追加工事中。


工場にある小麦を炒る機械が震災前と比較して大きくなった。
小麦は炒ると水に浮くようになる。
以前はレンガでできた釜で砂と一緒に炒っていた。そうしないと均一に炒れないため。
もろみにも砂が残っていたので手作業で砂を取り除いていたが、新しい機械では砂を入れる必要がなくなった。

コンベアで炒った小麦を冷却する設備も作った。
昔はよく醤油工場が火事になったが、それは炒った小麦をそのままにして自然発火したもの。

大豆を蒸す機械では1tの大豆を蒸すことができる。

麹菌が小麦がとりついて出来上がる醤油の麹は黄色いのが特徴。
麹でしくじると全てダメになるくらい大切なもの。

もともとの蔵付酵母を培養して新工場で使うことになる。
北里大学がスーパーでランダムに味噌などの酵母を調べていたらうちの酵母が特殊だという事がわかって研究用に持って行っていた。

震災後、流された醤油桶をテレビ局のクルーが発見してくれ、もろみを取り出すことが出来たというのが報道された。それをたまたま北里大学の方が見ていて、これは大変だという事でやはり津波で流された研究室から酵母を探しだしてくれた。幸い酵母は無傷のまま発見された。

これを岩手県工業技術センターに持ち込んで培養している。
そこにはちょうど4月入社予定だった人がいたが、大変な時期だからという事で1年研修期間を延長してくれた上に研究テーマを「八木澤商店の酵母保全」としてくれた。

醤油は熟成させるため、出来上がるまでに長くて二年、短くても7ヶ月かかる。
みそ、しょうゆを岩手ブランドで育てる仲間がもろみを移植するだけの状態まで準備してくれた。
その経過もテレビで記録が残っている。

生産量は震災前の半分程度になる見込み。
最初はそれでいい。これまでの取引先は地元の水産加工業が中心だった。
そこが津波で壊滅状態になってしまった。醤油のような農産加工は山の方に移れば再開できるが、水産加工業は海の近くでなければいけないため再開まで時間がかかる。

しかし、水産加工場が再開する時に肝心の醤油がなければ話にならないので、時間のかかる醤油は先に再開しておかないといけない。

また、昨年はスーパーなど大手流通が三陸の港から水揚げがなくなったため魚の入荷に大変な苦労をして他の地域から買い付けていた。それを今年は三陸が復活したからと言って昨年買い付けた地域から魚を買わないというのは恩を仇でかえすような事であって、できない。

自分たちは地域で新しいことをしなければならない。


民間の力は早い。
うちもファンドで支援を受けたりしたおかげで仮設から本設工場へと移ることができた。
仮設から本設工場を再開するには設備の移設など大きなお金が必要になるが、まだ十分に利益が出ないためそこで諦めてしまう事業者もいる。
早い段階でファンドの話があってよかった。

役人も事業再開に向けて情熱的に動いてくれた。
今思えば失礼なこともしたが、結果的に7月の段階で国の補助を受ける申請の四割が陸前高田からのものになっていた。逆にお金はあるが再開する場所がないという状況になって怒られたくらい。
それでも担当の方は自分が怒られればいいからとかばってくれた。

現在の就労者数は15,200人。震災で2,200人が亡くなったが震災前と比較して800人しか就労者数が減っていない。むしろ働く人は増えている。とにかく人手が足りない。来春も新卒は1.3倍の求人倍率。震災前は0.35だった。

つゆ・たれ工場は設備が簡単なのでまずは従業員を食わせていくためにつゆ・たれ工場の再開を考えた。
最初のファンドはつゆ・たれ工場が対象。

つゆ・たれ工場ではいくらを漬けるたれを製造しているが今年は記録的な不漁で昨年の10分の1の水揚げ。これは北海道など他地域も同様。それでいくらの値段が上がっている。

小学校でみその仕込みを授業でやったりしている。
今後、陸前高田でイベントもやってみたい。


新工場の見学の後は陸前高田にある事務所兼店舗へ。
まずは近くにある古民家でランチ。

陸前高田には気仙大工と呼ばれる技術者がいた。
宮大工として寺社仏閣を直すのが仕事。その技術を普通の人が使える住宅などに取り入れていく。

これまで陸前高田で伐採された木材のうち建材に向かないB、C材は合板工場に行っていたが、津波で社長が亡くなり、工場が再開できていない。
結果としてB、C材や間伐材の行き先がなくなってしまった。

これをなんとか建築材にできないか?という事で八木澤商店の事務所の内装をそういった木の無垢材を使うことにした。事業者が亡くなってしまった街でなんとか雇用を守ろうと中小企業同士が支えあっている。

建築以外の10年後を見越して起業家を募っている。
今年陸前高田では40社起業する見込み。多くは飲食店だが中には広報のような仕事をする人も。


ランチはアーク牧場さんのソーセージに八木澤商店さんの味噌という組み合わせのサンドイッチ。
パンは地元の障碍者授産施設で作られたものだそうです。


そしてこちらは味噌を使ったデザート。パンデローとチーズケーキ。
ほんのり味噌味で美味しかったです。


この古民家、見た目は古いけれども造りと地盤がしっかりとしているので前日の地震でもほとんど揺れを感じなかったそうです。


こちらが事務所兼店舗。元は旅館だったそうですが、蔵づくりなデザインに改装されています。


特徴的だったなまこ壁も再現しています。

店舗では味噌とポン酢を買ってきました。
鍋をするのが楽しみ!

先ほどの話にも出ていた地元無垢材で行った内装。
いい香りが充満していました。

津波に流されたものの瓦礫から見つけ出した八木澤商店さんの経営理念。

工場の再開が本当に嬉しそうだったのと、昨年三陸以外から魚を調達したところに対しても恩を仇で返すようなことはしたくないという気持ちが印象に残りました。

そんな単純なことではないかもしれないけど、こういうリーダーが地元にいてくれると陸前高田の未来に希望が見えるように感じます。

八木澤商店さんでは醤油工場の資金をミュージックセキュリティーズ社のファンドで募集中です。
 ソーシャルビジネスカレッジでの講演録 → こちら
 ほぼ日刊イトイ新聞 東北の仕事論 八木澤商店編 → こちら

最低出資金額:10,500円〜
会計期間  :2012年4月1日〜2022年3月31日(10年間)
分配方針  :当初36ヶ月は無分配。37ヶ月目から売上金額の3.9%
仕組み   :半分寄付(5千円)、半分投資(5千円)
特典    :1〜4口 いわて丸むらさき醤油500mlを口数に応じて
       5口以上 八木澤商店特別セット
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